アカシア咲く大連で出会う

2019-07-08 11:02:31

王朝陽 李家祺=文 大連市文化観光局=写真提供

 

大連市は中日の交流が最も活発な都市の一つである。地理的に言えば、日本からとても近く、関西国際空港まで直行便ならたったの2時間半だ。経済交流の面から言えば、大連にとって日本は最大の貿易市場かつ第一の外資投資国であり、現在大連に進出している日系企業は約4800社ある。人的交流の面から言えば、大連で長期滞在している日本人は約6000人。さらに毎年5月、アカシアが咲く時期には、多くの日本人観光客が大連を訪れる。大連で「アカシア祭り」が始まった1989年以来、姉妹都市の北九州市や舞鶴市は市民友好団体を組織して、30年間絶えることなく毎回このイベントに参加している。

 中日地方交流の重要な窓口として、大連市はより高いレベル、より広い範囲での観光、文化、地方交流を促し、より多くの地方都市と観光関連企業に協力の場を提供するため、2016年に中日観光ハイレベルフォーラムを企画開催した。この交流イベントは今年すでに4年目に入った。

 

中日文化観光(大連)交流大会が5月下旬に開かれ、両国のゲストが一堂に会した

 

観光で発展と交流を促す

 初夏の頃、大連では薄い黄色のアカシアが町の至る所で咲き、すがすがしい香りが漂う。アカシアが満開になる美しい季節、大連市文化観光局と中国外文局傘下の人民中国雑誌社、中国観光研究院が共催して2019中日文化観光(大連)交流大会が5月26日、27日に開かれた。旅行に関連する業界の重要な交流と協力の場として、今年の交流大会には、中日の地方政府と文化観光関連部門、関連業界団体、旅行会社、航空会社、クルーズ船会社の代表など約670人のゲストが参加した。

 開幕式には、遼寧省の陳緑平副省長、大連市の譚成旭市長、中国外文局の高岸明副局長および日本の外務省の鈴木憲和外務大臣政務官、自由民主党の小泉龍司国際局長、観光庁の平岡成哲観光地域振興部長、東北観光推進機構の小県方樹会長などの中日のゲストが出席した。

 あいさつで、陳緑平副省長は遼寧省政府を代表して、2019中日文化観光(大連)交流大会の開催に祝意を表した。そして、「日本の各界が私たちと共に、遼寧の対外開放の利益を分かち合うことを望みます」と経済協力への期待を述べた。

 また譚成旭市長は、「この交流大会の開催は、大連と日本の地方都市との経済ウインウインを促しました」と指摘した上で、「今年、大連市は今回の大会を契機に、日本商品巡回展や大連日本商品博覧会など一連の日本関連イベントを開催する予定です」と紹介し、これによって、中日互恵協力が着実に進むことに期待を示した。

 彼らの話は、戦後初めて大連に進出した当時の日本のビジネスマンを思い起こさせる。その中の多くの人々が1989年、第1回アカシア祭りに招待された。祭りの中で彼らが実感した大連の恵まれた自然環境と盛んな経済発展は、大連への投資を決定する一因になったのではないだろうか。

 観光は発展を促す一方、友情を結ぶ絆でもある。鈴木憲和外務大臣政務官は取材に対し、家族と大連のエピソードをこう語った。「私の義祖母は大連で生まれて幼少期を過ごし、その後何回も大連を訪れました。もうそろそろ90歳になりますが、また大連に連れてきたいと思っています」

 

大連で「アカシア祭り」期間中に行われるウオーキング大会に参加した日本人観光客(写真京盛)

 

文化体験を重視

 中日関係が正常な軌道に戻るのに伴い、昨年、大連を訪れた日本人観光客は前年同期比で12%増え、訪日観光に出掛ける大連市民は同15%増えた。観光は両国の民間交流において、重要な役割を果たしている。まさに高岸明副局長が開幕式のあいさつで、「このような新たな情勢の下、いかに中日民間交流をさらに推進し、観光の構造を最適化し、観光の質を向上させ、体験の効果を高めるかは、依然としてわれわれの共同の知恵と実際の取り組みが必要です」と指摘した通りだ。

 どうやって観光で交流を促すかというテーマを巡り、多くのゲストがスピーチやディスカッションにおいて、文化体験の強化という答えを出した。中国観光研究院の戴斌院長は、詩情に富んだ話で観光客が旅行中に求める文化的なものについて説明した。「いまの観光客の一部は団体旅行を好みません。彼らは『ジャスミンの花』という民謡で南京に興味を持ったり、『千と千尋の神隠し』の中に出てくる場所を巡礼したり、夕日に照らされた平和な景色を落ち着いた気持ちで地元の人々と楽しんだりします」。さらに戴斌院長は新潟県で行われている「大地の芸術祭」を例に、同地が越後妻有地域を世界に紹介し、衰退した村に活気をもたらしたという成功例に学び、文化と観光を融合させた深みのある旅行プランや、古典と流行を両立させた短距離旅行プランの開発に力を入れるべきと提案した。

 地方の文化的特色をアピールし、体験に訪れる観光客を引き付けるために、中日の地方都市や自治体の市長や県知事は、今回の大会において、それぞれのやり方で地元の特色を強く発信した。

 岩手県の達増拓也知事は会場で、中国人にも親しまれている地元の名曲『北国の春』を歌い、満場の拍手を受けた。新潟県の花角英世知事は、楽しいスキー場の動画や冬の夜空に輝く花火大会の写真などを見せ、来場者に深い印象を与えた。葫蘆島市の王力威市長は流ちょうな日本語で日本の人々に対し、葫蘆島で世界文化遺産の「水上長城」の絶景を観賞してほしいと述べた。

 

多彩なイベントで協力を促す

 大会は地方が自身をアピールする窓口のみならず、交流協力の場でもある。北前船交流拡大機構の浜田健一郎理事長は取材に対し、次のように述べた。「地方の活性化に取り組む機構として、昨年大連と2018中日観光大連交流大会および北前船寄港地フォーラムin大連を共催しました。これは同フォーラムにとって初の日本以外の国での開催でした。大連を選んだ背景としては、日中交流において大連が果たしている懸け橋の役割と、観光交流大会の影響が挙げられます。今年、再び大連に来て大会に参加したことにより、日本の地方都市と大連市およびその周辺都市との交流を進めたいと考えています。また個人的には、今後大連を窓口にして、日本の都市と東北3省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)との交流が活発になることを期待しています」

 

中日文化観光(大連)交流大会では、さまざまなテーマ別のフォーラムが開かれ、中日の観光分野における協力の橋渡しとなった(写真孫立成/人民中国)

 

 今年の2日間の会期中、中日のゲストは、市長円卓会議や業界データおよび動向の発表会、中日ヘルスツーリズム交流会、パネルディスカッション、都市観光説明会など九つの会議やフォーラムに参加し、両国の観光業界を巡って交流し、友情を結んだ。

 

市長円卓会議において、中日の地方代表はそれぞれ自分の都市の観光資源をアピールした(写真京盛)

 

業界データおよび動向の発表会では、中国観光研究院や日本の観光庁、中航信移動サイエンステクノロジー社や聯通ビッグデータ社など業界の先端を走る企業の研究員などが、フリーツアーの動向や旅行の交通手段、旅行先における消費などのテーマについて報告を行った。中国観光研究院統計調査所の陳楠博士は次のように指摘した。「中国と日本は互いにとって、重要な観光客の供給源と旅行先であり、観光資源の相互補完性が高く、利便化、マーケティング、産業マッチングなどにおける協力を拡大すべきです。また、中日の文化には共通部分が多く、世界に知られる文化観光地を共につくり上げる条件がすでにそろっているため、前向きに共同開発に取り組み、さまざまな消費需要を満たす必要があります」

 

中日文化観光(大連)交流大会期間中に行われたジャズ音楽会で演奏に聴き入るゲストたち

 

中日ヘルスツーリズム交流会では、両国の医療分野の責任者が「越境ヘルスツーリズムの発展促進」を巡って意見を交わし、「中日(大連)ヘルスツーリズム発展促進センター」の設立に立ち会った。

中日のヘルスツーリズム交流の促進について、中国医療保健国際交流促進会の国際医療観光分会の楊一舟常務副会長は、ヘルスツーリズムの育成と国内外で関連フォーラムを行うこと、ヘルスツーリズムのマクロ政策、市場参入、運営評価システムなどの関連研究成果の実用化に取り組むこと、大学でヘルスツーリズム関連の専門コースを開設し、日本の大学と協力して共にヘルスツーリズム専攻の学生を育成することを提案した。

 

会場で交流する中日のゲスト

 

氷雪観光(冬の観光)消費をテーマとするパネルディスカッションでは、両国のスポーツ観光業界の代表が氷雪観光の発展を巡って経験を共有した。元中国フィギュアスケートチームコーチの姚浜氏は、「氷雪観光の発展とスポーツ競技の間には緊密なつながりがあり、『スポーツ+観光』などの『スポーツ+(プラス)』のモデルは、より多くの人を冬季スポーツに引き付けられます」と述べた。中国のアイススケートショートトラック選手の于継洋氏は、氷雪観光産業が発達している長野県の責任者と、中日青少年ショートトラック親善試合を今後開催することについて話し合った。そして、中日青少年交流推進年に当たる今年、スポーツを通じて両国の若者が相互理解を深め、友情を結ぶことを期待した。

 

中日のゲストは大連の観光名所である棒棰島を参観した

 

伊万里市の深浦弘信市長は、取材に対し次のように語った。「今回の大会参加は、新しい友人と出会い、旧交を温める良い機会です。中国の地方都市の代表と知り合えるだけでなく、普段仕事の都合で国内でもなかなか会えない日本の地方都市の市長とも会えます。会議で語り合い、学び合うことは、非常に有意義だと思います」

 

印象に残った美しい大連

一年のうち大連が最も美しく輝く季節に、新たな友人と昔からの友人が一堂に会した。初めて大連を訪れたゲストたちは「美しい」という言葉で、大連に対する印象をまとめた。大阪府議会議員で同前議長の岩木均氏は大連のグルメを特に気に入り、「関西人の味覚に合う」と評価した。欧州留学の経験がある龍角散の藤井隆太社長は、大連の欧州的雰囲気が漂う古い町並みを目にして、すぐに好感を持った。新潟県の花角知事は、大連が過ごしやすい町だと実感したという。また、山形県鶴岡市の山口朗副市長と齋藤久市議会議長は、花と緑にあふれた景色が強く印象に残ったという。齋藤氏は「高層ビルが林立している一方、緑の色が鮮やかで、花もきれいですね」と感心した様子だった。

大連と古くからつながりのある人々にも、この町は新しい発見を常に与えてくれる。達増拓也知事は、アカシア祭りの間に行われた一連の文化観光交流イベントが深く印象に残ったという。「日本から、そして世界からも多くの人々が来ています。大連という『窓』を通じて、中国全体や世界との交流が広がっていきます」。大連を訪れるのは3回目という愛媛県の中村時広知事は、「15年前に瀋陽から大連に来た時には、バスで4時間半かかりました。7年前は列車で3時間半かかり、今回は高鉄(中国の新幹線)で1時間50分で到着しました」と振り返った。そして、「これだけの短期間に、交通システム一つとっても、大変な成長を遂げています」と大連の発展の速さに感心した様子だった。観光庁国際観光課の伊地知英己課長は、「最初、大連は観光の町だから美しいのだと思っていましたが、今は、外見も中身も共に美しく、ホスピタリティーも非常に行き届いていると思っています」と述べた。

来年アカシアが咲く頃、中日の友人たちはまた大連に集まり、新しい友人と出会い、旧交を温め、友情を語り合うことだろう。

 

アカシアが咲く5月は、一年で大連が最も美しく輝く季節だ(東方IC

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