「中国語オリンピック」開催
近年、中国経済の成長に伴い世界中で中国語ニーズが向上し、中国語学習者が爆発的に増えている。日本でも、漢字という共通性とビジネスにおける重要性から、第二外国語として中国語を学ぶ学生は年々増加傾向にある。
そんな世界各地で「中国語学習ブーム」が広がる中、中国語のオリンピックともいえる大会、「漢語橋」世界大学生中国語コンテストが開催された。今年18回目となる本大会は、孔子学院が主催し、全世界122カ国各地の予選を勝ち上がった157人が中国に一堂に会し、数週間にわたって競われた。各国代表選手たちは激しい戦いを繰り広げると同時に友情を深め、勝ち上がった5大陸代表5人が8月24日、湖南省長沙市で開かれた決勝戦に出場した。

世界各国から集まった中国語を勉強する学生たち
決勝戦 中国語で「李白と阿倍仲麻呂の友情物語」演じる
「天下一家(One World,One Family)」をテーマとした本大会決勝は、3パートに分かれて競われた。第1パートは、第10回大会で準優勝し、現在中国の料理番組などで活躍するイギリス人のジェイミー・ビルボーが中国各地に関する問題を各選手にそれぞれ3問出題した。
また第2パートは、選手それぞれが唐代の人物に扮し、李白と阿倍仲麻呂の友情の物語を演じ、中国語の総合力が競われた。李白を演じたのは中国人俳優だったが、阿倍仲麻呂役を演じたのは米国代表のジョシュア・ロビンソン選手。ロビンソンさんは大会終了後、「日本人を演じることになるとは思っていませんでした。でも、こんな感動的な物語を演じることができ、特別な経験になりました。とても光栄に思います」と述べた。また言葉や文化、国を超えた友情について、「異文化交流に大切なことは、お互いの文化を知ろうとする姿勢だと思います。その点で、李白と阿倍仲麻呂の物語には学ぶべきところがあります」と語った。
また劇の終盤、鑑真を演じたミャンマー出身のカイン・ティン選手は、李白が阿倍仲麻呂の訃報を聞いて詠まれた有名な詩『哭晁卿衡』を流ちょうな中国語で朗読し、会場は感動に包まれた。
最後は、会場の投票で1位と2位を獲得したミャンマー人のカイン・ティン選手とエジプト人のパセント・アリ選手の頂上決戦となり、中国語や中国文化に関する1問1答で競われ、見事カイロ大学のパセント・アリ選手が世界グランプリを獲得した。

阿倍仲麻呂役の米国代表ジョシュア・ロビンソン選手(左)と鑑真役のミャンマー代表カイン・ティン選手(右)

優勝したエジプト代表のパセント・アリ選手(中央)
中国語が友情の懸け橋に
惜しくも決勝戦への切符は逃したが、世界大会でベスト30に入った日本人選手がいる。日本大会で流ちょうなスピーチを披露して優勝し、見事日本代表として世界大会に出場した武蔵野大学グローバル学部4年生の吉沼優多さんは、「もともと人前で話すのが苦手だったのでスピーチコンテストは避けてきました。でもひょんなことから参加することになり、最初は自信がありませんでした。でも、本大会の練習を通してすばらしい中国人の先生に出会え、その先生の熱心な指導のおかげでがんばることができ、自分自身成長できました」と語った。また、本大会で得た一番大きなものは「出会い」だったという。「数週間世界各国の選手たちと寝食を共にし、一気に世界中に友人ができました。その中でも、カザフスタンの選手とは1番仲良くなりました。母国語は違うにもかかわらず、中国語を通してお互いに分かり合うことができました。彼と出会えたことが、本大会に参加して一番良かったと思うことです」と述べた。来年から中国関係の企業に就職するという吉沼さんは今後について、「中国語が好きなのでこれからも中国と関わってきたいです。いろんなことにチャレンジしたい」と意気込みを語った。

日本代表の吉沼さん(右から2人目)と親友のカザフスタン代表選手、アーウェイさん(左から3人目)

吉沼さん(左端)とアジアの代表選手たち
今年で18回目となる本大会は、現在に至るまで各地予選含め、全世界150万人以上の学生たちが参加し、中国語を学ぶ外国人が中国を知るきっかけとなっているだけでなく、世界各国をつなぐ友情の懸け橋ともなっている。これからも世界各地で中国語学習人口は増え続け、中国と世界をつないでいくだろう。(中嶋優奈=文 『漢語橋』番組=写真提供)
人民中国インターネット版 2019年9月11日