イメージで語るな!!

2019-07-01 09:42:07

冨田 あや乃


私は大学で法律、経済、政治など社会科学を中心に学んでいる。1年時にそれぞれ基礎ゼミに参加することが必修になっており、いくつかのゼミナールのなかから1つ選ばなくてはならない。そんな中から私が選択したのは「日本の戦後理解」というものだった。

私は趣味が映画鑑賞で、大作ハリウッド映画からアニメ映画までジャンルを問わず幅広い映画を観る。なかでも第二次世界大戦やベトナム戦争などを描いた作品は傑作揃いだ。面白いのが、どの国を舞台・主眼としているかによって描き方が全く異なるという点だ。例えば、「イミテーションゲーム」や「風立ちぬ」では、イギリス・日本の技術者が知的好奇心のままに戦争協力をしていく様を描き、一方「プライベートライアン」では前線で戦う兵士たちのリアルで残酷な描写が胸を打つ。どの立場から描くかによって見え方が全く変わってくる。中国の映画もそうだ。中国最後の王朝の崩壊と日本国の侵略を描く「ラストエンペラー」と京劇役者が文化大革命期に翻弄される様を描いたの「さらば我が愛、覇王別姫」では日本人の描き方が全く異なる。ゼミの紹介には「映画や書籍から見る戦争の内情・・・」と書かれており、映画を観て各視点に立ち包括的に戦後を理解するという点に惹かれてこのゼミに決めた。

ゼミで行われた授業の中で最も印象深かったのは「中国侵略の証言者たち-『認罪』の歴史を読む」(岩波新書)を読んで日本の中国侵略の実情を知るというものだった。世界史や日本史の授業で習ってはいたものの、私のイメージと実際の出来事は大きく違っていた。日本は戦時中非人道的な作戦で、大勢の中国人を兵士のみならず一般人も殺していた。しかし侵略が失敗し日本兵が中国に裁かれる際、当然やられた分をやり返すように中国側も非人道的な扱いをしたのかといえば、そうではなかった。むしろ日本兵にしっかりと食事を与え彼らの行動や罪の反省を促そうとしていた。このように戦争の実態は日本軍の暴走と虐殺のイメージだけでは語れないものであった。テレビやネットで話題になるのは、南京大虐殺の死者数は間違っている、といった罪を別の点にすり替えるような議論ばかりだ。南京の人口より中国が主張している人数が多いという意見があるが、周辺の難民が大量に流れ込んできていたため本来の南京の住民以外が多くいたという事実があるようだ。また、実際より多い、少ないというのは戦後理解において最重要ではない。ここで注目すべきは「認罪」と「反省」という点だ。でも実際は中国側が求めていることは反省の気持ちだけであり、実際に戦った元日本兵の方々も、実情を語り継いだり、中国と日本との架け橋となる活動をしている。

私にとって中国は憧れの国であり、日本と文化を共有する大切な国である。相互に理解を深め、両国が友好な関係を結び、文化交流などの面からますます協力的になっていくことを望む。

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