Panda杯全日本青年作文コンクール2019受賞者 清水若葉
世界中に感染が進む新型コロナウイルスによる肺炎。収束の兆しが見えず、感染力が非常に強いことから、日本でも多くの人が恐怖を抱いている。しかし私は、病気そのものと同様に恐ろしさを感じている事がある。それは、虚偽事実が流布されてしまうことだ。新型コロナウイルスに感染した人が日本でも相次いで確認される中、中国人に対する誹謗中傷や根拠の無いデマが広がっているというニュースを耳にした。厚生労働省にも、「中国人がテロ目的で、ウイルスをわざとまき散らしている」といった根拠の無いデマが複数寄せられているということだ。また、中国人の子どもが周りから差別されているという事例も報告されている。
私はこの様な現状を俯瞰し、ある恐ろしい事件が脳裏に浮かんだ。それは、関東大震災の際に起こった、中国人や朝鮮人の虐殺である。これは、爆弾所持や井戸への毒物投入等の不逞行為を行っているという噂によるものである。しかし、客観的事実ではない流言飛語であったことが明らかとなっている。
不安や恐怖の感情が蔓延した社会状況では、あらゆる情報を真に受け、普通では考えられないようなデマが流されやすくなる。しかし、このことは人権侵害や差別に繋がりかねない。確かに、中国を中心として感染が広がっているのは事実である。しかし、誰もが病気になりたくてなっているのではない。自身がコロナウイルスに対して恐怖心を抱いているのであれば、正しい情報を見極め、その症状に苦しんでいる人々に思いを馳せることができるだろう。自分やその周りの人々が感染しなければよいという自己中心的な考えに陥るのではなく、他者の気持ちを想像することが大切なのではないだろうか。
SNSが登場し、気軽に誰もがいつでも情報を発信することのできる社会になった。これは、虚偽のニュースが一瞬にして世の中に広まってしまうという事も意味している。1度拡散された情報は簡単には取り消すことができない。新型コロナウイルスに関して様々な情報が飛び交う中で、その情報を発信する側も受け取る側も何が正しい事柄であるのか、その情報で悲しむ人はいないのかという事を吟味する必要があるだろう。
デマを信じて行動することと、感染拡大に備えた行動をすることは似通っているようにも見えるが、本質的にはまったく異なっている。慌てて行動するのではなく、状況を慎重に見極めながら生活を送ることが現在の私たちにできる最善の方法なのではないだろうか。新型コロナウイルスで苦しむ人や感染拡大に対する恐怖が、少しでも早くこの世の中から根絶されることを私は切に願っている。(文・写真=Panda杯全日本青年作文コンクール2019受賞者 清水若葉 )
人民中国インターネット版 2020年3月24日
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