今、中日両国の真の友情が示される

2020-03-26 17:03:02

東京支局=文

  新型コロナウイルスによる肺炎(以下、新型肺炎)発生後、日本全国のドラッグストアからマスクが消えたという。記者も東京で何軒か回ってみたが、マスクの棚はいずれも空っぽだった。中国で猛威を振るう新型肺炎は中国全土の国民を大きく動揺させ、世界中からも大きな注目を集めている。

 特筆すべきは日本からもたらされた大きな声援と支援だ。東京支局にも旧友や読者、「Panda杯全日本青年作文コンクール」に参加した若者などから見舞いの言葉や声援が多数届いているが、中でも物資の不足、特にマスクの不足を心配する声が最も大きい。

 

くまモン、パンダにマスクを送る

 熊本県日中協会の小野友道会長、アジアクラブの鬼海洋一理事長の両氏が1月31日、中国駐福岡総領事館を訪れ、マスク2万枚を寄付した。

 

中国駐福岡総領事館の康暁雷代理総領事(右から3人目)にマスクを寄贈する熊本県日中協会の小野友道会長(左から3人目)とアジアクラブの鬼海洋一理事長(左から2人目)(写真提供・中国駐福岡総領事館)

 

 発起人の一人、鬼海理事長は元熊本県議会議員だ。『人民中国』の古い読者であり、友人として本誌との付き合いも長い。2016年に熊本地震が発生した際、東京支局は現地取材と慰問のために、両国のネットで広まった『くまモンをお見舞いするパンダ』のイラストを手に熊本を訪れた。その際も鬼海理事長の助力で、イラストを熊本県庁に無事送り届けている。今回のマスク寄贈に関して電話取材を試みたところ、鬼海理事長は開口一番、「熊本地震の際、即座に中国政府と中国の人々から義援金や援助をいただき、復興にも助力いただいたという厚情は、決して忘れることができません」と寄贈の理由を語った。

 

アジアクラブと熊本県日中協会が各所に募り集まったマスクは2万枚にものぼった(写真提供・鬼海洋一)

武漢市が1月23日に封鎖された。その翌日、鬼海理事長は中国の友人から連絡を受けた。現地でマスクその他の医療物資不足が深刻なので、日本で購入して送ってくれないかということだった。鬼海理事長は直ちに熊本県日中協会の小野会長に連絡を取り、中国のために今何ができるかを話し合い、両氏が所属する熊本県日中協会とアジアクラブを通じて27日から病院や企業、個人に向けて、マスクの寄付を募り始めた。すると宇城総合病院からの2000枚、熊本機能病院からの4000枚を筆頭に、県内の各病院や福祉施設、企業、個人からの寄付が続々と集まり、わずか数日で寄付されたマスクの数は2万枚に達した。

この話を聞き、パンダが傷付いたくまモンにタケノコを送り届ける、人々を感動させたあのイラストを思い浮かべた。今度は、くまモンがパンダにマスクを送る番だ。鬼海理事長の「中国の人々が困っている今、熊本の人々が支えることで一日も早く病魔に打ち勝つことを信じ、願っています」という言葉に、その思いが現れている。今こそ、「同舟共済 患難真情」(共に協力して困難を乗り切る)の精神を生かす時だ。

 

2016年の熊本地震の際には、人民中国雑誌社原作のイラスト『くまモンをお見舞いするパンダ』が中日両国のネットを中心に広く伝わった

 

山川異域 風月同天

 新型肺炎発生以降、日本政府や各界は中国に多くの同情と理解、支持を寄せた。日本政府は早くも1月23日に「全力での支持」を表明、武漢在住の日本人帰国用チャーター便には、中国に寄贈するマスクや防護服などの支援物資を満載した。東京都や大分市、科学技術振興機構、ツムラなどの企業や団体、さらには在日華僑華人団体なども、寄付金や支援物資を続々と送っている。ネットユーザーはSNSで「武漢加油」(武漢がんばれ)のメッセージを送り続け、中国に力を与えた。1月31日には、新型肺炎の早期収束を願う特別イベントとして、東京のランドマークである東京スカイツリーが中国応援の思いを込めた鮮やかなチャイナレッドのライティングに彩られた。

 

鮮やかなチャイナレッドに彩られた東京スカイツリーで中国を応援(写真・張建墅)

 本稿の出稿直前、東京支局は差出人欄にPanda杯受賞者の山本勝巳さん一家3人の名前が書かれたマスクの小包を受け取った。マスクはサイズもメーカーもバラバラで、山本さん一家の奔走がうかがえた。

 この心尽くしの贈り物は、鑑真に日本に渡ることを決意させた「山川異域 風月同天」という言葉を想起させる。鑑真を招来する際、日本が贈った袈裟には、「山川異域 風月同天 寄諸仏子 共結来縁」(国土は違えど風月は同じ。仏門の方々に袈裟を贈り、共に永遠の縁を結びたい)という一文が刺しゅうされていた。鑑真はそれを見て感動し、苦難を覚悟で日本に渡る決意をしたという。この「山川異域 風月同天」は、日本のHSK(漢語水平考試)事務局が救援物資を入れた箱に書いたことが中国で大きな感動を呼び、人々の心を和ませた。

 四川・汶川大地震や東日本大震災での津波被害など、振り返ってみると中日両国は大きな災難のたびに手を差し伸べ助け合い、艱難を共にしてきた。災害は無情だが、人には情がある。一衣帯水の隣国である中国と日本。逆境の今だからこそ見える「本当の思い」が人々の心を打つ。

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