孔鉉佑駐日大使、都内で記者会見

2020-03-30 10:00:41

 

COVID-19の世界的な感染拡大を受けて、孔鉉佑駐日大使は27日、日本記者クラブで記者会見を行った。中国のCOVID-19への対応と、世界的な感染予防抑制の展望について紹介した。

孔鉉佑駐日大使は27日、日本記者クラブで記者会見を行った

講演全文は以下の通り。

手を携えて感染と闘い、共に難局を乗り切ろう

――日本記者クラブにおける講演

こんにちは。再び日本記者クラブにお招きいただきうれしく思います。ここで皆さん方と交流するのは駐日大使就任以降の2回目です。前回講演したのは着任後まもない時、皆さん方と中日関係、特に両国のハイレベル往来を共に展望しました。その後中日関係は改善発展を続けましたが、突如襲ってきた新型コロナウイルス感染症で多くの計画と予定が狂いました。本日は事務局のお招きで、皆さん方に中国の感染症対応の情勢と世界的な感染予防抑制に対する展望について重点的にお話しし、中日関係についても触れたいと思います。

中国にとって、今回の新型コロナウイルス感染症は新中国成立以降発生した感染速度が最も速く、感染範囲が最も広く、予防と抑制が最も難しい重大な突発的公衆衛生事件であり、中国にとっての一大試練でもあります。習近平主席が直に手配と指揮を行い、中国政府は最も全面的かつ厳格で徹底した予防抑制措置をとるなど、国民が一丸となって感染拡大防止の集団作戦に身を投じました。2カ月余りに及ぶ、艱難辛苦な阻止戦を経て、中国の情勢には前向きな変化が生じ、段階的で重要な成果を収めました。3月26日時点で、合計74588人の患者が治癒し、治癒の比率が確定症例者総数の91.7%%に達し、26の省で14日以上地元で発生する新規確定症例がゼロで、湖北省もここ10日で新規の確定症例が1名だけなど、武漢を主戦場とする中国本土の感染拡大は基本的に遮断できたと言えます。

中国の感染予防抑制事業は自国民の健康と命の安全に責任を負うとともに、世界の公衆衛生上の安全保障への責任を果たすものであります。中国は終始、公開性、透明性に基づく、責任ある態度で感染の関連情報を発表し、速やかに世界保健機関(WHO)に感染状況を報告し、WHOおよび諸外国とウイルスの遺伝子配列の共有や、ウイルス核酸検査のプライマーとブローブの配列の公表、7万余りの確定症例、感染の疑いのある症例および臨床診断症例の疫学分析報告を発表しました。さらに、WHOの派遣する複数国の専門家が四つの省で調査を展開するように招請し、中国の感染予防抑制の経験とやり方を各国に紹介するなど、世界各国の感染症対策に信頼できる参考資料と根拠を提供いたしました。多国で大規模な感染拡大を見せる新たな情勢にかんがみ、中国は自らの困難を克服して、新型コロナウイルスとたたかう国際協力に支援するため、WHOには2000万ドルの義援金と、日本を含む感染症が発生した国に防疫物資を提供いたしました。また、四川省の専門家をイタリアに、広東省の専門家をイラクに、江蘇省の専門家をパキスタンに、上海市の専門家をイランに派遣するなど、一つの省市が一つの国を支援する方式で、感染状況の深刻な国に援助を行いました。

コロナウイルスで中国の経済社会が打撃を受けるのは避けられません。しかし総合的にみて、中国経済に対する影響は局部的、短期的なもので、中国経済の安定、健全な発展には自信を持っています。

第一に、中国政府は感染のまん延拡散の勢いを食い止めると同時に、整然と生産業務再開を進め、経済社会活動の正常化を図っています。先月末時点で、湖北省以外の地域で一定規模以上の工業企業の再開率は95%以上、民営企業の内、製造業ではすでに80%以上、サービス業も50%前後に達しています。今月中旬時点で、湖北省の工業企業の生産再開率も493%に達しました。

第二に、中国経済のメインエンジンにはなお潜在力があります。2019年、中国のGDPに占める消費の割合は578%で、今年は60%になる見込みです。中国の消費は感染症によって短期的に抑制されているが、終息すれば力強いリバンドがみられるでしょう。皆さん方にご留意いただきたいのは、感染症で14億中国人が「引きこもり」となり、それが無接触サービス、オンライン医療、オンライン教育、オンラインエンターテインメントなどの新しい消費方式を生み出しており、これらは中国サービス業をより大きく発展させる「ノーマル」になるとみられています。

第三に、中国の5G、超々高電圧(UHV)、高速鉄道と都市間鉄道、新エネルギー自動車充電スタンド、ビッグデータセンター、人工知能(AI)、産業のインターネットという七つの新しいインフラ分野がこれから持続的に大きく力を発揮し、約1兆元の投資をもたらすとみられます。時間の関係でここでは詳しい説明を控えます。

全般的にみて、われわれには感染の予防抑制と経済社会の発展を統括して推し進め、(ややゆとりのある)小康社会の全面完成と第13次5カ年計画(2016~20年)の既定の目標を実現できると確信しています。

中国政府と人民が新型コロナウイルスとたたかう中、日本を含む多くの国々が支援の手を差し伸べていただきました。日本政府と各都道府県がいち早く防疫物資を提供され、中国の焦眉の急をやわらげました。日本企業、友好団体と一般市民が次々とこぞって善意を寄せ、感染症とたたかう中国人民に貴重な支援と無私の援助をくださいましたことを、中国の人々は心に銘記しております。「山川異域、風月同天」〈山と川は違っても、同じ風が吹き同じ月を見る意〉などの漢文と募金現場でチャイナドレスを着た日本の女の子の姿が中国のSNSで長い間話題になりました。

新型コロナウイルスが日本国内にも広がると、中国政府と地方、民間企業がマスク、防護服、PCR検査キットなどの感染対策物資を支援し、両国の専門家が速やかに電話会議を開いて感染予防抑制の戦略、特にウイルスの感染経路、異なる地域と人々の予防抑制措置、抗ウイルス薬の選別などについて意見交換するほか、日本在住の中国人民が町に出てマスクを配るなど、さまざまな方法で日本国民の善意にお返しをしました。

近隣である中日両国は大きな災害災難の前でいつも支え合うことができます。今回感染症に立ち向かう中で、両国国民が苦難を共にしたことに、私も強く感動しております。在日本中国大使として、中日双方が感染症対策のインタラクションを繰り広げたこと、そして見守り、助け合う隣人の道を実践したことを非常に喜び、これからもそれを積極的に促したいと願っております。ここで申し上げたいのは、現在日本で防疫物資が不足し、従来大きな部分を中国から輸入していたマスクなどは品切れが生じたことに留意しております。中国各地で業務生産が続々と再開されるに伴い、中国側はメーカーが早期に生産能力を回復させ、日本に輸出して日本の感染症対策に支援できるよう積極的に調整しており、一部の企業はすでに対日輸出を始めています。

新型コロナウイルスで中国と日本の2国間往来の予定が狂い、人の往来と経済貿易分野の協力も大きな影響を受けていますが、いまの困難は一時的なもので、中日関係の上向き基調には変わりがないと考えています。政治レベルでみると、両国指導者が新しい時代にふさわしい中日関係を構築することで重要なコンセンサスを得ており、両国の外交当局は習近平主席の日本国賓訪問の時期について緊密な意思疎通を続けています。経済レベルでみると、感染症は両国間で緊密に結ばれる産業チェーンとサプライチェーンに打撃を与えたが、市場主導で形成された両国の互恵協力の構造は変化しておらず、両国の指導者がともに計画した第三国市場協力、イノベーション協力など新しい成長分野には大きな将来性があります。社会レベルで見ると、感染症とのたたかいで互いに示した善意と熱意により両国の国民感情は著しく好転し、両国民は感染症で疎遠になってはおらず、逆にお互いのきずなはより強まったと感じております。今回の試練を経て、中日関係の基礎は一層強固になり、さらなる改善発展が図られることを期待し、そう信じています。

昨夜、新型コロナウイルスに関するG20首脳テレビ会議が開催され、習近平主席がスピーチで中国の感染拡大防止のプラクティスと経験を踏まえ、感染症対策の国際協力の強化、世界経済の安定化などについて重要な主張を打ち出しております。習近平主席が指摘のとおり、ウイルスに国境はなく、感染拡大は我々共通の敵です。今回の新型コロナウイルス感染症が証明したように、グローバル化の時代において、重大な感染症など非伝統的安全保障の脅威がますます際立っており、このような公衆衛生上の緊急事態は最初ではなく、まして最後でもありえません。各国が一致団結し、感染症に立ち向かう国際協力の枠組みを構築し、さらに効果ある、世界的な公衆衛生ガバナンスの枠組みを模索する必要があります。公衆衛生分野における両国さらには地域や世界各国の協力を如何に一段と広げるかについて、私は以下のように考えています。

第一に、中日両国が引き続き手を携え、協力して感染症とたたかう。新型コロナウイルス感染症はSARS、鳥インフルエンザ、MERSに続いて、中日双方が公衆衛生分野で共に直面している新たな試練です。双方は感染予防抑制情報と政策面の意思疎通を強化しているところであり、感染対策の科学研究応用技術についての協力も進めています。次の段階では、引き続き臨床診療プラン、有効な薬剤などの情報共有を強化するほか、ウイルスによる発症の機序、病原検査、特効薬やワクチンの開発などで協力を進めることができます。両国は共に情報通信技術面で充実した基礎があり、遠隔診療設備および人工知能(AI)などの技術を通じた、遠隔医療協力を積極的に模索することもできます。

第二に、中日韓および地域の公衆衛生分野の協力を強化する。近隣国である中日韓は経済貿易や人の往来が盛んであり、重大な感染症に直面した際、互いに感染状況の関連情報を共有し、診療プランを交換し、予防抑制の経験を参考し合うことや、ワクチン薬品を共同で開発するのは本来あるべき姿であります。3カ国の疾病対策機関はすでに最初段階の交流を行っています。今回の感染症では、3カ国の出入国者の感染症検疫の流れがそれぞれ違う、コントロール措置で相互通報や協調性が欠ける、防疫製品の規格寸法が異なるといった問題が露呈され、支援物資と現場のニーズがマッチしない状況が生じました。1週間前、中国側の提唱で、中日韓が新型コロナウイルス感染症問題外相特別テレビ会議を開いて、感染対策の経験共有、政策の意思疎通を強化しました。次の段階では、3カ国の関連省庁が参加する、お互いの政策協調により役立つ共同対策メカニズムの設立を検討することや、既存の感染症対策「共同行動計画」を強化する、それぞれの出入国検疫方法と防疫物資規格のマッチング問題を検討するなど、引き続き、協力を推進することができます。また、地域の公衆衛生緊急事態対応レベルを高めるため、ASEAN+3の枠組みの下、ASEAN諸国の防疫能力強化で3カ国が協力することもできます。

第三に、グローバルな公衆衛生ガバナンスを拡充する。ウイルスの感染は人種、国境を問わず、今回の感染症で世界の公衆衛生ガバナンスの短所が露呈となり、ガバナンスシステム構築強化の緊急性が明らかになりました。各国とも、公衆衛生上の緊急事態対応、世界的な公衆衛生ガバナンス体系の整備におけるWHOの中核となる調整機能を支持し、「国際保健規則」など公衆衛生上の安全保障への挑戦に対応する規則基準を整備し、多国間および地域協力アジェンダにおける公衆衛生問題の地位を高めるべきです。特に発展途上国の感染予防抑制のためにより大きな情報、資金、技術および人力の支援を提供し、感染拡大に対する国や地域の緊急対応メカニズムをつくらなければなりません。

第四に、タイムリーに世界経済の振興を図る。今回の感染症は世界の経済金融の安定と産業チェーンに深刻な打撃を与え、現在多くの国が緊急の市場救済措置を打ち出しています。G20の枠組みはまさに2008年の世界金融危機を背景に生まれており、当面の情勢も各国が関連枠組みのもとで連携して対応することをより必要としています。パニックのせいで協力の扉を閉ざせば、世界経済に感染症以外の2次被害を与えるだけです。各国は引き続き揺るぎなく貿易投資の自由化円滑化を推進し、地域経済統合のプロセスを速め、保護貿易主義への逆戻りを警戒すべきです。世界第2、第3位の経済大国と貿易大国である中日両国は、こんな大事な時こそRCEPの早期署名を図り、中日韓自由貿易協定交渉を加速させ、世界経済の回復と健全な発展のための強心剤を打つべきです。

私からはまず以上申し上げます。今回の感染症発生後、多くの日本メディアの方々は中国の状況を客観的、理性的に伝え、両国が防疫物資を支援し合う様子を積極的に報道し、両国国民の理解と相互信頼の増進に重要な役割を果たされました。この機会に感謝を申し上げ、今後とも中日関係の安定と健全な発展のために引き続き前向きな導きとなっていただければと、このように希望する次第です。それでは、皆さん方からのご質問にお答えしようと思います。

人民中国インターネット版 2020330

関連文章