彼女たちの涙から決意した中国留学

2020-09-10 14:07:49

嶋田 智沙恵


3回生の夏が来た。新型コロナウイルスの影響がなければ、2カ月後から1年間、私は中国の上海に留学予定であった。1年前から準備を続けてきた留学計画が白紙になった今、大学卒業まで残り1年半であり、留学出来る日は来るのだろうかと不安に思いながら過ごしている。未来に進めない今、私が中国留学を決意したきっかけである、2人の中国人留学生との出会いを思い返した。

彼女たちとの出会いは、1回生の夏であった。偶然大学構内で、「留学生サポーター募集」と書かれた張り紙を見つけた。私は異文化交流に興味があったので、すぐにサポーターになることを決めた。そして私は、彼女たちのサポーターになり、留学生活の手助けをするようになった。彼女たちは、中国の上海から1年間交換留学生として日本に来ていた。出会って1か月の段階では、サポーターと留学生という関係であったが、彼女たちと過ごす時間が増えるうちに、大学で一番の友達になった。

彼女たちと出会って約半年が経った2月末に、1週間の北海道旅行に行った。サポーターになった当初は、日本人と中国人で1週間も旅行するとは思ってもいなかったが、この時彼女たちと旅行に行くことは仲が良かったので、自然なことであった。しかし、私はこの旅行で彼女たちの涙を見ることになる。

新千歳空港到着後、電車に乗って小樽へ向かった。その電車で事件が起きた。車内である男性が「どこから来たの?」と彼女たちに話しかけてきた。彼女たちが中国人であることに気づいたらしい。最初は気さくな方であると思ったが、徐々に会話の内容が中国の社会情勢の話になった。そして急に、「中国は独裁政治で、常に監視されるような自由のない国だ。」と彼女たちに罵倒を浴びせた。彼女たちは、「中国は良い国で、自由もあって、私たちは中国で暮らして幸せです。」と言い返していたが、ついに泣き出してしまった。しかし、その時私は何もできず、彼女たちを庇うどころか目を背けてしまった。なぜなら、私自身もメディアを通して中国に対して悪いイメージを持っていて、その男性が言ったことへの反論が思いつかなかったからである。私は彼女たちと友達になったつもりでいたが、中国のことを全く知らず、知ろうとしたこともなかった。既に悪いイメージが先入観としてあり、実際に私の住む奈良を訪れる中国人観光客のマナーが悪いことから、これ以上知ることを避けていた。私は彼女たちの涙を見て、日本のことを知るために、たくさん私に質問をしてくれて、異国の地で慣れない中、一所懸命に生活をしていた彼女たちのことを知ろうともせずに、仲良くなったつもりでいたことに気づき、後ろめたい気持ちでいっぱいになった。男性が電車降りて行った後、彼女たちは何も言わなかった私に対して、文句一つ言わず受け入れてくれて、何もなかったように北海道旅行を一緒に過ごしてくれた。しかし、私は彼女たちの涙が、旅行後も離れなかった。

その日を境に、私は中国に強い関心を抱くようになった。先入観に縛られていて良いのだろうかと考えるようになった。そこで、実際に中国に行って、現地の人と接し、異文化を肌で感じようと思い、奈良市の中国派遣プログラムに参加するなど中国人と関わる場に積極的に参加するようになった。そして、中国を知れば知るほど、先入観はなくなり、中国人の優しさや中国の魅力を感じるうちに、中国の虜になっていった。そして、より中国を多方面から知るために、中国留学を決めた。

私は彼女たちの涙に心動かされ、中国と向き合うようになった。そして、先入観に囚われずに、自分から積極的に学ぶ大切さを学んだ。留学計画は白紙になったが、私はまだ見たことのない中国に触れたいので、中国留学の夢は諦めない。彼女たちの涙をもう二度と見ないためにも、中国について学び続け、彼女たちといつまでも友達でいたい。

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