巡り逢いて

2020-09-10 14:07:30

上村 悠菜


私は中学二年生から、模擬国連活動に力を入れている。毎年冬に行われる、ハーバード大学主催の中国模擬国連大会の出場を目指していた。参加者の中で最年少だった私は、出場権を獲得するために日々の活動を懸命に励んだ。その結果、ついにそのチャンスは訪れた。会議中に尊敬できる女子高生と巡り逢った。たった四日間だったが、彼女との出会いが私の人生におけるターニングポイントの一つになったと言っても過言ではない。

模擬国連大会では、お題に関する政策を考える。それぞれ意見を出し合って最善の案を導き出す事が役割である。会議中、スピーチの発言権を得るにはプラカードを掲げることになっている。私は、より多くの人に自分の意見を知ってもらおうと、必死にプラカードを高く挙げたが、議長さんはなかなか指名してくれなかった。また、意見交換中どんなに話しかけても誰も耳を傾けてくれなかった。次第に私が焦り始めたその時、中国の女子高生が話しかけてきた。一生懸命話そうとしている私の姿をみて、意見を聞きたいと言ってくれたのである。早速自分の案を話すと、彼女はグループの政策にその案を混ぜてくれた。彼女は、グループの人が出したどんな意見をも否定することなく、理解しようとする思慮深さを持っていた。私は、様々な意見に耳を傾ける彼女の姿に感動した。初めての会議で緊張していたせいか、始めは意見を聞いてもらう事ばかり考えていて、自分一人の力で頑張らなくてはと思い込んでしまっていた。しかしグループ全員と協力して意見を出し合えば、より最善の案を取り纏める事ができるのだと実感したのだった。

会議以外ではこんな事もあった。彼女と休憩中に雑談していた時、「どこからきたの?」と聞かれたので「日本からだよ。」と伝えると、彼女は日本語で「私一度日本に行った事があるの。とても良いところだったよ!」と話してくれた。私が辿々しい中国語で返事をすると彼女は熱心に聞いてくれた。時々言葉遣いや発音の間違いを教えて高め合う事ができた。会議中は、英語で伝えなければならず終始緊張していたが、日本語を聞けたことによって少し気持ちが和らいだ。また、相手の言語を話すことによって互いをより深く理解したい気持ちが芽生えた。中国語は中学二年生から授業で習っている。世界で十六億人が中国語を話すと言われており、英語の次にビジネスの世界でも役立つと言われているが、実際に会話をするのは初めてだった。今後はこれまで以上にコミュニケーションの幅を広げ、より多くの人と親しみ、分かち合えるように中国語を学ぼうと改めて感じた。

会議終盤、政策案の発表で譲り合いの精神を学んだ。私のグループは彼女がリーダーだったので、本来なら彼女が発表するはずだった。しかし、「あなたの案を入れたおかげで、とても良い政策案になったし、この案はあなたが一番よく分かっているから頑張って発表してきてね。」と譲ってくれた。私は突然の事に驚いた。グループに入れてもらっただけでなく、発表の機会まで与えてくれた。彼女の期待に応えようと私は開き手が分かりやすいように文章を構成して、大きな声ではっきりと発表した。終わった後、グループ全員がスピーチを褒めてくれた。この発表は大会期間中で最も貴重な体験になった。彼女との出会いが大会を有意義なものにしてくれたと今でも感謝している。

模擬国連大会中は、全てが初めての経験だった。緊張と不安の中、無事に終了する事ができた。協力することの大切さ、より多くの言語を知ってコミュニケーションを取ること、そして譲り合いの精神の三つのことを彼女は私に教えてくれた。彼女から学んだ事を実践できるように、これからも様々なことにチャレンジしていきたいと思う。

関連文章