塗り固められた日本人の意識

2020-09-10 14:07:14

有田 穂乃香

 

「僕は中国が大好きでね、休みの日は中国語を学び、最近は中国楽器の練習を始めたんです♪ 年に二回中国旅行へ行くのも恒例行事です!」

高校時代、担任の先生は頻繁に中国の魅力を語っていたが、その頃の私には先生の気持ちが理解できなかった。いや、きっと私だけじゃない。クラスのほとんどが同じ気持ちだっただろう。「中国ってなんか嫌な国」私たち子どもの頭の中には、そのような意識が植え付けられていた。

その要因の一つに、メディアの報道の偏りが挙げられる。日本で取り上げられる中国の情報は、大気汚染・食の安全性・訪日中国人のマナー・領土問題を含む政治対立など…現代人は入ってくる情報を疑いもせず、その一部分を切り取って拡散し非難する。何を隠そう、私もメディアに踊らされていた一員だった。

私に転機が訪れたのは、大学1年生の頃だ。第二言語として中国語を学び始め、講師や留学生など中国人と交流する機会が増えた。「中国人は自己中でマナーが悪い」という固定概念とは裏腹に、彼らは日本の文化・習慣をよく理解し、日本をこよなく愛しているという印象を受けた。

私には小さい頃からの夢があった。それは、ジャーナリストとして日本全国に正確な情報を届けることだ。しかし、私が日常生活で感じる中国と報道される中国のイメージのギャップが強くなり、何かを批判する前にまず自分の目で見てみたいと考え、私は北京への半年間の留学を決意した。

初めて足を踏み入れた大国・中国…そこには私の想像をはるかに超える景色が広がっていた。シェアバイク・外食デリバリー・ネットショッピングの普及、QRコード決済、手荷物検査、広大なキャンパス、胡同を含む数多くの歴史的建造物や観光名所…一辺倒な情報で塗り固められた私にとってはすべてが新しい世界だった。

学内で出会った現地の学生は、日本のアニメやアーティストについて私よりも詳しく、ドラマの感想もよく語り合ったものだ。また、街の至る所で日本製品を見つけ、日本製であることの安心感も購買力の強みになっているのだと誇りに感じた。店員さんや街で出会った中国人は、私が日本人だと分かれば「こんにちは。日本が大好きで行ったことあるよ」と話しかけてくれたことも複数回ある。わずか半年間の留学で、フレンドリーで心優しい中国人と数えきれないほど出会い、感動と刺激の毎日だった。次第に私は中国という国にのめり込んでいった。

留学開始から3か月後、私は高校時代の先生に勧められて七三一部隊の遺跡資料館を訪れた。そこには残虐的な記録が残されており、一生忘れることのできない恐怖や衝撃を感じたと共に、今まで知らなかったこと自分に対して恥ずかしくなった。日本人は中国に対して根拠もないマイナスイメージを持つのに、戦時中日本がしてきたことは知らないということにも深いもどかしさを感じた。この両国間における好感度のギャップはどのようにして埋めることができるのだろうか…

中国――それは、歴史的にも地理的にも近い国。しかし、どこか遠い国。「中国人が日本を嫌うから、日本も中国が嫌い」という潜在意識が間違っており、今は両国における意識改革が必要だ。私が言いたいことは「中国を好きになってほしい」ということではない。迅速な情報伝達が可能なこの現代において、情報を何でも鵜呑みにしない方がいいということだ。自分の目で確かめてもいないのに、上辺の情報を信じ込み、それを拡散していく。世界は広くなったようで、実は何も繋がっていない。新型コロナウイルスが流行している今、むしろその差は大きくなり溝は深まっていく。私自身、たった半年間では中国のリアルなど分からなかった。しかし、将来ジャーナリストの立場として、ありのままの姿・歪みのない情報を伝えることで、日中の懸け橋になることができると信じている。

最後に問います。根拠のない偏見を持つ前に、あなたは中国の何を知っているのですか?

 

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