上海の忘れ物 大人になった私の夢

2020-09-10 14:07:12

 

滝本さやか

 

「ねぇママ、中国語でこんにちはは、ニーハオ、さようならはツァイチェン、じゃあ、おやすみって中国語で何ていうの?」

 4歳になった私の娘がキッチンにいる私に向かって得意気にこう言います。私が中国語を再勉強しはじめてから娘は中国語だけではなく中国関連のテレビニュースに敏感に反応し、「テレビで中国って言ってるから早く観て!」と情報を伝えてくれるというのが我が家の日常風景となってきています。私に少し影響されて4歳の娘が中国や中国語に興味を持っていることを私はとても嬉しく感じていると同時に大きな成長を実感しています。幼い娘と学ぶ中国語はとても楽しく新鮮で新しい気づきがあるものです。

私が中国・中国語と出会ったのは今から約15年前になります。

「とにかく中国語!」と皆に薦められて第二外国語として履修したのがきっかけでした。授業でお世話になった中国人の先生の発音がとても美しくてすっかり魅了されてしまい、それから私の学生時代は中国語なしでは語れないほど思い出の大部分を占めることとなりました。

 語学学校や中国語サークル、国際交流など色々と中国を身近に感じることでしたが、中でも一番の思い出であり、大人になった今の私の「忘れ物」でもあるのが、中国上海への短期語学研修での経験です。

あの頃の私は自分でも驚くほど積極的で中国のことをもっと知りたい、将来は好きな中国語を使って仕事をしたい、と強く思っていました。しかし、帰国し暫くして就職活動がスタートしました。いつまでも学生でいることが悪い気がして就職先を決めて早く社会人になりたいと思う気持ちがあり、「一時的」に中国語のテキストは閉じようと思いました。後で考えるとまるで上海に「忘れ物」を置いてきたかのような感じがしてなりません。

その後の私は会社員として働き中国語のことはどこか頭の中にありつつ、現実として結びつかず時間が経過していきました。

結婚後は子育てと向き合うようになりました。日々成長していく我が子を見ていると、ふと、あることを思うようになりました。「こどもは成長しできることが増えてやがて目標をみつけていく、じゃあ私はどうなるの?」私は色々なケースを想像してみました。子育てが一段落したら趣味をする? 孫を育てる? いや、まだまだやり残したことがあるはず!!

その日の夜のうちにしまいこんでいた中国語のテキストとCD を出しCD を流してみると、そこに存在していたのは懐かしくも全く変わることなく美しいままの中国語の音。あたかも私にまた聞いてもらうのを待っていたかのような音だったのです。

「これだ! 私は中国語で今から夢にチャレンジする!」

その日から私の中国語の再勉強がはじまりました。今度は語学だけではなく元々興味があった京劇ついて調べたり、中華料理を作ったり、幼稚園で中国出身のママと知り合いになり子育てについて話したり、なんだか学生時代より幅が広がって中国や中国語が私の日々を充実させてくれているみたいです。

そんな毎日の中であの数週間の上海研修で熱心な先生が教えてくださった言葉をたびたび思い出しています。

「世上无事,只怕有心人」

自分に志さえあればこの世に難しいことはない。

私は今すぐに学生になることはできないけれど志さえあれば自分の目標を明確に持ち夢を叶えることができるはず。

現在私は中国語通訳ガイドを目指して勉強しています。いまできる限りの時間を使って子供の成長をみつつ、私も中国・中国語で成長していきたい。何歳になっても語学を学ぶこと、中国という国を知り、中国語を勉強することの素晴らしさや楽しさ、また大人だって夢を叶えたっていいんだよ!ということもゆくゆく、我が子に伝えていけたら良いなと思います。

そして近い将来「上海に忘れてきたもの」を今度は通訳ガイドの仕事を通じて必ず取りに行きたいです。

 

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