漫画と日中間の歴史問題

2020-09-10 14:07:11

高木 麻衣


日本と中国では歴史問題の捉え方が違うと思う。例えば、私達が普段何気なく見ている漫画でも中国人にとっては歴史問題を軽視しているように捉えられることもあると最近実感した。

私は、「僕のヒーローアカデミア」という漫画が好きだ。この物語の始まりは中国で発光する子どもが生まれたという設定で繰り広げられていく。それ以来各地で超常現象が報告され、世界総人口の約8割がなんらかの個性と呼ばれるものを持ち始めた。ある人は超パワーを持ち、またある人は空を飛べる。逆をいえば、約2割は無個性と呼ばれ、なんの個性も発現しない。この世界では、個性を悪用するヴィランが生まれ、またそれを取り締まるヒーローという職が脚光を浴びた。この漫画は、ヒーローに憧れた1人の無個性の少年がトップヒーローを目指す物語だ。しかし、この漫画が突然一部の中国人から批判され、炎上した。もともと、中国でも高い人気を誇っていたため、私は驚いた。

なぜ、批判されたのか、それはこの漫画に出てくるヴィランの中でも1番上の組織に位置するドクターと呼ばれるマッドサイエンティストの名前が関係している。彼は謎が多く、氏子達磨という偽名を使い、個性も本名も伏せられていたが、最終決戦に近づくにつれ、このキャラクターの名前が「志賀丸太」で無個性だと判明した。このことに中国人は不快感を抱いた。なぜなら「マルタ」とは日本軍の731部隊で実験に使われた人々を指す隠語であり、また「志賀」という言葉も赤痢病の発見者の名前を想起させると中国人は捉えたからだ。人体実験をするこのキャラクターに「志賀丸太」という名前をつけたことにより「配慮が欠けている」「謝罪しろ」などの非難の声や罵詈雑言が相次いだ。それに対し国内のファンは「海外の文化の常識を押し付けるな」「不快なら読まなければいい」と返し、SNS上で言い合いになった。さらにこの論争はヒートアップし、中国人が僕のヒーローアカデミアの漫画やグッズを燃やしている動画を投稿すると、日本人はコロナウイルスが広まったのは全て中国のせいだと不毛なやりとりを繰り返す。もはや、歴史問題から、日頃のストレスを言い合う場となってしまった。これを受けて作者と週間少年ジャンプは謝罪し、名前の変更を行うと述べた。しかし、この対応に国内では更に批判の声があがり、中国では当然の対応だと意見が分かれる結果となった。

私がもう一つ驚いたことは、日本人のコメントが「そもそもマルタがそのような意味を持つと知らなかった」などの歴史問題を認識していない発言が多かったことだった。実際私も高校2年生の時に初めて学んだが、多くの日本人は学んだことを忘れているか、そもそも学んでいないのだとコメントから分かった。私達は、歴史を学ぶことで過去の教訓を得ることができる。そして、被害者のためにも日本人が何をしたのかを知ることは、過去の過ちを忘れないことや罪を償う意味でも必要だ。しかし、私達は今、課題や受験のためだけに知識を詰め込み、終わればすぐに忘れるような勉強法をとっていると思う。だから「マルタの意味なんて知らない」などと投稿し、中国人の心を深く傷つけるのだ。中国人にとっては、731部隊は最悪の過去であり、当然知っているべきものだと思っているが、日本人で知っている人は多くないだろう。ここで日中間の歴史認識に差が出てくる。私は、日本が被害を受けた歴史ばかりを学ぶのではなく、どこの国にどれほどの悲惨なことをしたのかを教えることが必要だと思う。

最後に、中国人と日本人が互いに歩み寄り、共通の歴史認識を持つ努力をし、時に反省することで、漫画という素晴らしい文化を読む楽しみや感動を共有できるようになると思う。私達は、対立するのではなく、両国の過去や文化の違いを受け入れて、前に進む方法を探すことが必要だと思う。

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