中日和合文明フォーラム 人類運命共同体の構築に貢献

2021-02-18 16:01:00

王敏=文 国際儒学聯合会=写真提供

中日の民間文化交流チャンネルの一つである「中日和合文明フォーラム」が昨年12月4日、テレビ会議形式で北京と東京で開かれた。儒教を中心に伝統文化の交流と研究を促進する国際的な学会の国際儒学聯合会(本部・北京)と一般財団法人の日本アジア共同体文化協力機構が共催した同フォーラム(日本側の名称は「新日中文明フォーラム」)は、国際儒学聯合会にとっては、創設以来の大きな意義を持つ新たな取り組みだったという。同フォーラムが発足したいきさつやその意義について、筆者は同会の成立・発展と共に歩んできた王殿卿名誉顧問に話を聞いた。王氏は首都師範大学の元教授で、北京東方道徳研究所の名誉所長、尼山聖源書院(山東省にある儒教文化を研究・発揚する民間組織)の名誉院長でもある。

 

北京で開かれた国際儒学聯合会第6回会員大会で、握手を交わす新任会長の劉延東元国務院副総理と新任理事長の福田康夫元首相(2019年11月)

 

儒学と伝統文化の交流・研究

1980年代、中国は改革開放の新たな時代に入った。鄧小平氏は92年、中国が自らの道を歩み、中国の特色ある社会主義を建設することを打ち出した。さらに「アジア四小龍」の経験を参考に、東方(アジア)の文化や価値観により社会の発展を導くべきだと指摘した。アジア四小龍は、日本に次いで60年代末~90年代に急速に成長した韓国、シンガポール、中国の香港および台湾地区を指す。

四小龍の急成長を支えた一つの大きな要因が、代々受け継がれてきた伝統文化である、と専門家たちは指摘した。これによって、四つの地域の文化の源とされる中国伝統文化、特に儒学が注目の的となった。そこで84年、第6期中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)の主席を務めた周恩来夫人の鄧穎超氏は中国孔子基金会の設立を提案し、元国務院副総理の谷牧氏を初代の会長に推薦した。その後、谷氏は鄧氏の意志を受け継ぎ発展させ、94年に国際儒学聯合会を設立、初代会長に就任した。また、シンガポールのリー・クアンユー(李光耀)元首相が初代名誉理事長に就任した。

聯合会は発足以来、外国人から理事長を選出し続けている。これは第一に、同会は世界が共有する国際的な機関と位置付けられているからだ。次に、四小龍をはじめとする中国大陸以外の地域の知恵が、中国を啓発するだけでなく、世界の参考にもなるからだ。従って、同会の初期の事業の重点は、儒学と東方モデルの研究にあった。

21世紀に入って、全国政協の葉選平元副主席が会長に就任し、儒学を中心とする伝統文化の国内外での研究と普及に努めた。葉氏の尽力の下、2014年に孔子生誕2565周年国際学術シンポジウムおよび国際儒学聯合会第5回会員大会が北京で開かれ、習近平国家主席が重要演説を行い、同会の発展を大きく後押しした。その後、党中央政策研究室の滕文生元主任が聯合会の会長に就任し、文明の交流と学び合いをさらに高いレベルに押し上げた。

おととしに開かれた孔子生誕2570周年国際学術シンポジウムおよび国際儒学聯合会第6回会員大会では、習主席に代わり王岐山国家副主席が演説を行った。約80カ国から500人余りの代表が集まり、会議では元国務院副総理の劉延東氏が会長に、日本の元首相の福田康夫氏が理事長に選ばれた。

新型コロナウイルスのまん延により、劉氏と福田氏は何度もビデオ会議で交流を行い、未来を見据え、限られた環境での事業展開について意見を交わした。前述の文明フォーラムは、まさに「温故創新」(古きをたずね新しきを創る)のスタートであった。

 

人類共通倫理の構築目指し

日本は福田赳夫首相の下に1978年、中国と「中日平和友好条約」を締結した。その福田氏は退任後、83年に当時の西ドイツのシュミット元首相に呼び掛けて、「インターアクション・カウンシル(OBサミット)」を創設した。同会議は、世界平和への寄与を目的に、世界の元指導者らが共に創設したもので、年に1回開催される。各国の大統領や首相経験者、各界の指導者が出席し、目前の課題に対処する現職の指導者のために、歴史をかがみとし未来を見据えた提言を検討する。こうして同会議は、国家間の平和と社会の発展に関わる世界的なシンクタンクとなった。これは冷戦期において、非常に貴重な存在であった。

福田赳夫氏の他界後、息子の康夫氏がバトンを受け継ぎ、シュミット氏と共に同会議を主導した。「人類共通の倫理」の構築を目標とし、儒学の精髄でもあり、世界と共有する「己所不欲、勿施于人」(己の欲せざる所、人に施すことなかれ」という理念を人類共通の倫理の「黄金律」としている。

共通の倫理を掲げるのは、異なる文明や宗教・信仰に取って代わるのではなく、「和して同ぜず」を求め、各文明や各宗教の粋を集め、共通の倫理を形作ることである。さまざまな衝突や紛争、環境汚染問題を解決するために、人類をより輝かしい文明へと導くのである。

習主席は2014年春、欧州の4カ国を歴訪し、パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)本部での演説で、人類運命共同体という概念を打ち出した。それと同時に、OBサミットの年次総会がウィーンで開かれ、各国の元指導者は人類共通の倫理の構築を打ち出した。その内容は期せずして習主席が提案した人類運命共同体と一致し、呼応した。また、福田康夫氏が中心となって編集し、その時の会議出席者の英知を結集した論文集『世界はなぜ争うのか?』(中国語版は『十国前政要論全球〈公共倫理﹀』)は、国際儒学聯合会の協力の下、17年に中国の人民出版社から出版された。

福田赳夫・康夫父子二代の数十年にわたる取り組みは、いずれも第2次世界大戦の歴史的な教訓を総括した上に、人類の平和的発展の有効な道のりを探究している。この精神は、父の後を継いだ福田康夫氏の精神的な核となっている。07年12月、当時の福田首相はわざわざ孔子の古里である山東省曲阜市を訪れ、「温故創新」と揮毫し、自らの志を表した。

18年5月、福田康夫氏は侵華日軍南京大虐殺遭難同胞記念館を訪れた。その後、中日の学者が参加した「平和実践ワークショップ」を日本で3回連続して開いた。また、おととし10月には「日本アジア共同体文化協力機構」を創設した。さらに昨年12月に同機構と国際儒学聯合会が共催した「中日和合文明フォーラム」は、同氏が「OBサミット」で提唱する人類共通の倫理の構築を継承し、発展させたものだと考えられる。

共通倫理の模索から平和の実践、そして中日和合文明フォーラムの開催に至るまで、それは「文化の良薬」を活用して世界の無秩序な混乱状態に施した「カルチャーセラピー」である。このフォーラムが絶えず新時代の平和の福音を広めるよう期待している。

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小文では国際儒学聯合会設立26周年を記念し、同会の進化的発展の印の一つと思われる「中日和合文明フォーラム」の設立および日本との共催の背景を簡略に紹介した。 

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