人気集まるオンライン留学

2021-09-14 14:56:24

王朝陽=文

「みなさんこんにちは。ここは成田空港です。まずはチェックインをお願いします。武漢までのフライト時間は2分。到着後は華中科技大学で3週間の短期留学をしていただきます」

5月27日夜、HSK(漢語水平考試)日本実施委員会が企画・実施する華中科技大学オンライン留学のオンライン開校式がZOOMで行われた。空港ロビーから始まった映像は飛行機の離発着を経て華中科技大学へと移り、オンライン留学が開始する。HSK日本実施委員会と中国の各大学の協力によるオンライン留学プロジェクトは、時間的拘束が少なく実践的な学習ができると注目を集め、多くの社会人・学生からの申し込みがあり、昨年9月のトライアル以降、すでに5回開催されている。

初級コースを受講した小堀紗也佳さん(20代日本語学校教員)は、「仕事と勉強を両立できるカリキュラムだと知り、すぐに申し込みました。最初はちょっと難しく感じましたが、3週間頑張ったらリスニング能力がとても上がり、留学終了の頃にはテレビドラマの単語がいくつか聞き取れるようになり、短い言葉なら時々字幕を見なくても意味が分かるようになりました」と、オンライン留学でも十分効果があると語る。中級コースの生井澤葵さん(30代弁護士)も、「初日に先生が私の名前を中国語で呼んだ時には全く反応できませんでしたが、15日間の留学でみんなが何について話しているのか分かるようになり、中国語を学ぶ自信がつきました」と手応えを感じていた。

HSK日本実施委員会の根立京佑さん(31)は、毎回のオンライン留学終了時にアンケートを取る。「一番評判がいいのは、交流用に設けたクラスのウイーチャットグループです。ここで先生や助手に質問をするとすぐに返事が返ってくるため、『先生方は休む時間もないのでは。中国の先生や助手の皆さんは、責任感が強い方々ばかりですね』と驚く受講者もいます。中国語の授業は1日3時間だけですが、授業以外の時間にもグループチャットを使って中国語で交流することができます。こうしたコミュニケーションが一番の思い出になるようです」と語る。

又村深さん(40代会社員)は、オンライン留学に2度参加している。「先生との雑談が、口語のブラッシュアップにとても役立ちました。仕事があるから実際に留学するのは難しいですが、今後機会があればぜひ現地を訪ねて先生方にお会いしたい」と「コロナ後」を語る。

オンライン留学は、中国語を学ぶ者同士の交流の場としても貴重だ。「独学で語学を学ぶ人同士の交流のチャンスはめったにありませんが、オンライン留学では、学習者同士で勉強方法を教え合ったりモチベーションを上げたりすることが可能になります。オンライン飲み会をしたなどという話がありますし、留学終了後も多くの人がグループチャットから抜けずに中国のテレビドラマやバラエティー番組の話題で盛り上がったり、HSKの試験会場で落ち合ったりなどしているようです。年齢や職業もさまざまですから、社会人が就活のポイントを学生に伝授したり、中国語をいかに仕事に生かすかを話し合ったりするなど、出会いを存分に活用している様子が伺えます」と根立さんは思わぬメリットに言及した。

HSK日本実施委員会が所属する一般社団法人日本青少年育成協会は、新型コロナウイルス感染症流行下の交流プラットフォームとして、早くからオンライン留学に着目してきた。「協会の趣旨は、『人と人との間に心の橋を架ける』です。心に橋を架けるためにはコミュニケーションが必須ですが、コロナは人と直接会う交流に深刻な影響を及ぼしました。日中両国の先生と生徒、日本の中国語学習者のつながりを、オンライン留学で再構築できれば、と考えています」。根立さんは新たな交流の可能性に希望をつなぐ。

 

有名ユーチューバー李姉妹とHSK日本実施委員会の共作によるオンライン留学の宣伝画像。ユーチューブの中国語レッスンチャンネルで有名な李姉妹が、オンライン留学生を対象とする中国語講座や座談会を開催。李姉妹の参加は、多くの中国語初心者が参加するきっかけとなった(写真提供・HSK日本実施委員会)

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