習近平主席からの返信をもらった日本の若者が小説を出版

2021-11-04 11:51:06

Panda杯全日本青年作文コンクール」の受賞者で、習近平主席に宛てた書簡に返信をもらった中島大地さんの処女作である小説『境界のポラリス』が1020日に出版される。この小説は中国生まれで日本育ちの高校生恵子の学校生活と日常の1年を描いたもので、恵子自身のアイデンティティーの苦悩や、日本社会に馴染もうと懸命に日本語を学ぶ中国とベトナムの留学生の間に結ばれた友情が、精緻なタッチで描写されている。

新型コロナウイルス流行のさなかに、異文化コミュニケーションをテーマとする小説を執筆しようと思ったのはなぜなのか。小説を介して読者に何を伝えたいと思っているのか。出版に先立ち、中島さんに聞いた。

 

新型コロナウイルスで直接会うことが叶わなくなってから、中島さんとかわした最後の会話は「コロナが少しでも早く収束してくれますように。次は一緒に食事にいけますように」というものだったが、今回の取材でも残念ながらそれは叶わず、モニター越しの会話となってしまった。「実はもともと小説を書こうという気持ちはなかったのですが、コロナで中国の友人と気軽に会うこともかなわず残念に思う気持ちから、過去の経験を参考にして、小説にしてみようと思い始めました」と、画面の向こうの中島さんは執筆のきっかけを語る。

子供たちには本を通して多種多彩な世界を見てほしい

創作の原点は、中島さんの現在の仕事とも大いに関係があるようだ。「今、出版業界で働いていて、様々な児童書の先輩作家のお話をうかがうことも多いのですが、『児童書に登場する人物はもっと多様でも良いのではないか』という意見を聞いて、とても腑に落ちました。今の児童書の登場人物はみな健康で日本人で、といういわゆる『普通の人』が多いのですが、例えば外国人や障がい者など、様々な立場の人がごく普通に出てくる作品が増えれば、子供たちに広い視野を与えるのではないか、という考え方に共感しています。子供たちに異文化コミュニケーションの魅力を感じてもらいたい、というのもこの作品を書くにあたって最初に思ったことでした」と明かす。

異文化とのふれあいは新鮮な面白さを与えてくれるが、苦痛も伴う。中島さんは主人公の恵子が中国生まれで小学校の時に日本にやってきて、言葉の壁など様々な問題でいじめに遭った経緯があることをストレートに描いている。「こうした話は現実にもよくあることで、私の友人にも小中学校でいじめに遭ったため、高校は中国を選んだなどというケースがありました。また、海外にルーツがある人々が中高生の時期にいじめられるという話は国籍を問わず聞くことです。こうした事態の背景には、言葉のみならず文化の壁もあると思います。学生時代に語学学校で日本語を教えていた時にも、日本語が流暢なのに日本の社会に溶け込めず、日本人の友達ができないと嘆く学生がいました」

そうした友人や学生たちが日本で経験した異文化コミュニケーションの難しさと悩みを、意識的に作品に取り入れていったと中島さんは語る。「主人公をあえて海外ルーツの設定にしたのは、生まれがどこであっても相手を尊重し、異文化同士の相互理解を実現する必要だという考えを、子供たちに伝えたいからです」

直接交流の早期再開を願って

作中では、主人公が住み、通学する埼玉や東京の他に、主人公の故郷である上海も回想シーンにしばしば登場する。バンドのきらめく夜景や祖母の住む小さなアパートなど、上海独特の風景が中島さんの筆によって次々と展開される。こうした上海の風景は、留学や「Panda杯」訪中旅行の経験から紡ぎ出されたものだという。

「数々の経験が、私に深い印象を残しました。どこに行っても中国の人々は熱心に案内してくれたり美味しい店を教えてくれたりし、日本のメディアで見るそれとは異なる中国を見せてくれました」と実体験を語る中島さん。「日本のメディアの中国関連報道は、政治や経済に偏っていて、日常生活で感じる中国とはかけ離れています。最近になって日本国内では中国に対する否定的な意見が強くなっていますが、これはコロナの影響で直接交流が減ったことで、中国に関する情報をメディアに頼らなければいけなくなっていることも大きく関係していると思います」と現状を嘆く。

中日両国の国民感情悪化の改善策として、コロナの収束と直接交流の再開に期待すると語る中島さん。作中に描かれた中国人の日本人の間のありふれたやり取りから、中国人の日常生活の一面を読者に感じ取ってもらい、親近感を抱いてもらえたらと望む。「来年は日中国交正常化50周年です。両国間にとって大切なのは相互理解であり、せめてまずはコロナ前の状況に関係が戻ってほしいと願っています」とポストコロナの課題に触れ、「日本と中国は隣国で離れることができません。文化、経済、政治など多方面で長年関係を続けてきた両国が『仲良くする』ということは、とても大切なことだと思います」と締めくくった。(文=王朝陽 写真提供=中島大地)

 

人民中国インターネット版 20211020

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