オンライントークショー 竹内亮が語る中国の「今」

2021-11-26 15:18:33

王朝陽=文

 中国で活躍中のドキュメンタリー監督の竹内亮さんを迎えたオンライントークショーが8月21日、東京都日中友好協会青年委員会の主催で行われた。中国に関心のある日本人と日本で働く中国人の注目を集めたこのイベントには、60人余りが視聴者として参加した。竹内監督は中国に戻ったばかりで、隔離中のホテルの一室から参加。終了したばかりの東京2020オリンピックの裏側に密着したドキュメンタリー『東京2020・B面日記』(中国語・双面奥运)の裏話から中国での隔離生活の実態まで、幅広いテーマで参加者との交流を行った。

 前半は竹内監督が撮影したばかりの『東京2020・B面日記』秘話や、自ら体験中の中国での隔離生活について語った。隔離について竹内監督は、日中間に大きな違いがあると指摘。「新型コロナウイルス感染症発生後の1年半はずっと中国にいて帰国していなかったため、中国の新型コロナ対策に慣れてしまい、日本に来てその差にがくぜんとした。成田空港でPCR検査を受けた後は自由行動で、個人の自覚に頼っていることに驚いた。中国は隔離中のホテルから一歩も外出できず、毎日体温検査がある。食事についてくる箸は金属で、これは唾液がついた使い捨ての箸から感染するのを防ぐ意図だと思われる。このように徹底した対策を取っているから、中国では新型コロナが広がらないのだろうと思う。日本のメディアは、中国の強権的隔離政策でウイルスを強引に封じ込めていると報道しているが、市民は嫌々従うのではなく、感染したくないから従っている。つまり自分の身を守るために協力しているのだと思う。日本の報道を見ていると、メディアによる誘導が始まっているような気がして悲しく思う」と持論を展開した。

 後半は参加者と竹内監督が質疑応答の形で交流を展開。竹内監督が南京で活動を始めた理由や、ドキュメンタリーを撮り続ける原動力、中国人向け旅行プロモーションビデオの効果的な使い方、日本企業が中国で成功するためには何をすべきかなど多岐にわたり、新型コロナの影響で訪中できない日本人の悩み相談から中国の現状まで、多くの質問が寄せられた。

 竹内監督はその一つ一つに丁寧に回答。家族との南京生活については、「過去、南京では南京大虐殺という悲しい事件があったため、日本人に対し冷たいのではと思われがちだが、私は南京在住9年間で一度も嫌な思いをしたことがない。息子も娘も、学校でのいじめも体験していない。さらに南京の人々は私の仕事を応援してくれている」と語った。コロナ後のインバウンドについては、「多くの日本人は新型コロナが終わればインバウンドが復活すると考えているようだが、中国国内のホテルの質やサービスの質がかなり上がっているため、中国人は国内旅行を楽しみ始めている。かつて日本のスキー場は中国人旅行客でにぎわったが、今の中国は北京冬季五輪を控えて国内スキー場の整備がかなり進んでいる。そうした事実に危機感を抱くべきで、放っておいても人が来る状況は今後難しいだろう」と厳しく指摘した。

 イベントの最後には竹内監督から「日本の若者でこれだけ中国に関心ある人がいるということが分かりとてもうれしい」という感想が聞かれた。イベントを企画した同協会の田婧さんは、「新型コロナの影響で対面式の交流が難しい中、リアルタイムの中国情報を人々に知ってもらいたいと、中国で活躍する監督に依頼した。作品を通して偏見をなくしたいと語る監督に感銘を受け、日本と中国の若者が交流する場を作ることができたことに感激している。監督の話が参加者にとって中国に対する理解深化のきっかけになってくれれば」と述べた。

 

中国で隔離中の竹内亮監督はオンラインで中日両国のネットユーザーとつながり、活発に意見を交わした (写真提供・東京都日中友好協会青年委員会)

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