2021年の中日関係 ほぼ安定を維持もリスクが大幅に増大

2022-09-14 17:00:35

中日関係は今年ほぼ安定を維持したが、ネガティブな要素とリスクの増加が顕著だった。中米の駆け引きが深まるなか、日本の対中政策は米国の対中競争戦略からのけん引を受けており、米国を頼りにし中国をけん制することで有利になろうとする傾向が強まっている。その一方で、日本国内の感染が収束に向かわず、政局の変動が国内外の政策の調整を促している。(筆者盧昊中国社会科学院日本研究所総合戦略研究室副主任、副研究員)

岸田文雄氏による新政権は「安倍菅外交路線」の継承を踏まえた上で、徐々に政治の手腕と自身の政策の特色を示している。対中政策については協調と協力、けん制と警戒を同時進行させる両面的な手段を維持しており、中国に対する「断固」たる、さらには強硬な姿勢を日増しに強調している。中日関係における構造的な食い違いは解消が困難で、関係の動向に関する不確実性が高まっている。

菅政権下では、コロナ禍において中日の経済的な相互依存関係が日増しに緊密になり、日本の貿易額に占める対中貿易額の割合が23.9%に、対中投資収益が対外投資収益に占める割合が16.7%にのぼり、いずれも過去最高となった。両国の共同の利益をめぐる結びつきが依然として堅固であり、「経済デカップリング」の可能性が存在しないことが証明された。その一方で、日本の中国への認識と態度が日増しにネガティブになった。

日本は感染対策が上手くいかず、経済振興が困難で、さらに高齢化などの構造的な問題が加わり、内部の問題と外部の圧力が拡大を続けている。中国への心理が終始、理性的に調節されておらず、日本の政界と世論においては対中強硬、さらには「中国ならば反対」がポリコレになっている。

中国と米国の駆け引き、特にバイデン政権が同盟国を抱き込み対中競争を全面的に強化する現実を受け、菅政権は米国との「戦略的な歩み寄り」を強め、その他の「民主主義同盟国」と協力することを、中国と駆け引きを展開する能力を強化し政権支持率を回復させるための鍵とした。ところが局面を挽回することはできず、自民党総裁選への出馬を断念せざるを得なくなった。最終的に岸田文雄氏が党内の保守派の支持を集め、河野太郎氏ら競争者を打ち負かし、菅氏の後継者になった。さらに自民党を率い衆院選で多数の議席を守り、ひとまず政権運営の地位を安定させた。中米の駆け引きにおいて穏当に対中対米関係に対応することも、岸田氏が直面している最重要の外交の課題とされている。

岸田氏は安倍政権において、外交の中心的な幕僚だった。首相に就任すると、岸田氏は日本の外交の新たな「3原則」を発表した。これは民主主義などの基本的な価値観の堅持、日本の平和と安定の堅持、世界的な課題の解決への貢献のことだ。岸田氏は選挙中、党内の保守勢力に積極的に迎合し中国に強硬な姿勢を示し、「中国対応を最重要任務とする」と述べた。しかし選挙に勝つと中国関連の態度が徐々に理性的になり、中国と「協調共存」する可能性について言及した。

首相当選後で初の記者会見(104日)において、岸田氏は中日関係について、中国は日本の重要な隣国で最大の貿易パートナーであり、「引き続き対話を維持しなければならない」と述べた。岸田氏は108日の初の所信表明演説で、「中国との安定的な関係の構築は、両国、地域、国際社会にとって極めて重要だ」と述べた。また岸田氏は国益をしっかり守り、「対中協調」により中国側に譲歩することはないと強調し続けた。「主張すべきことは主張し、中国に責任ある行動を強く求める」岸田氏はさらに何度も、日本は「普遍的な価値観を共有する同盟国と志を一つにする国と協力」することで、中国側を共にけん制すると強調した。岸田氏は首相就任後、対米外交を積極的に模索し、早期訪米を目指している。また中国周辺諸国、特にインド太平洋の「民主主義同盟国」の首脳とのリモート会談を開始し、外交の協調を強化し、中国に対する外からのけん制を維持しようと試みている。

岸田氏の首相就任後、中日のハイレベル政治対話がやや回復した。中日の指導者は107日に電話会談を行い、引き続き意思疎通を強化し、新時代の要求に合致する中日関係を構築し、来年の中日国交正常化50周年を契機とし両国関係が正常な軌道に沿い長くしっかり歩んでいくよう促すことで合意した。また、中日の外交部長は1118日に電話会談した、「互いに脅威とならない」といった共通認識を実行に移し、安定的で建設的な中日関係の構築を促すと表明した。しかし日本政府高官は対外的な場において引き続き、中国が「力によって現状を変えている」「自由、民主主義、人権、法の支配などの普遍的な価値観に背いている」と批判するか、暗にほのめかしている。

岸田政権は特に「人権外交」を重視しており、台湾地区香港地区新疆関連などの問題をめぐり米国と西側の立場に従い、中国に圧力をかけている。特に日本政府はさらに「台湾海峡の平和」といわゆる価値観を結びつけ、外部の勢力を利用し台湾問題に介入しようと試みている。同時に台湾地区との結託を強化し、台湾地区との「戦略的呼応」を促進している。日本側による台湾関連の消極的な動向が際立つなか、一部の政治家は間違った発言を繰り返し、さらには公然と「台湾有事は日本有事」と吹聴している。その挑発的な言行は中日関係のボトムラインに直接触れている。

他にも日本側は「経済安全保障」の強化を続けている。国内の保守勢力は「特定の国に対する依存からの脱却」を口実とし、中国に対する「デカップリング」「サプライチェーン外し」を吹聴している。企業に対してサプライチェーンを中国から移すよう促し、正常な中日経済貿易テクノロジー協力に圧力をかけている。これらはいずれも中日関係の緊張を激化させ、両国関係の改善に向け大きな壁を作っている。

日本が中国に持続的に圧力をかけ警戒するなか、中日関係の民意の雰囲気は改善が困難だ。相互の認識、特に日本側の中国への認識がネガティブになり、日本国内ではさまざまな形の「中国脅威論」に関する議論が紛々と起こっている。最近の世論調査を見ると、歴史領土安全などの構造問題の中日関係の深層心理への影響が依然として顕著で、中米の対立の深刻化が中日の相互認識にさらなる衝撃を及ぼしている。しかし両国の国内には悪影響をコントロールし、中日国交正常化50周年記念のチャンスをつかみ、より安定的で強靭な中日関係を構築することを願う理性的な声もある。

中日国交正常化の歴史を振り返り、日増しに複雑になる世界の変動を前にする中日両国は、歴史の経験と啓発を汲み取り、相互尊重し、大同につき小異を残すべきだ。中日がこれまで形成してきた、互いに脅威とならずパートナーになるという政治的な共通認識を守り、両国の政治の基礎に関わる問題について約束を守り、線を越えない。価値観の差と現実的な利益の食い違いを適切に処理し、建設的な危機管理と開放的かつ実務的な協力の同時進行を維持する。日本は客観的かつ理性的なやり方で中国の発展を見据え、協力と互恵の考えで中日関係の未来を把握し、中国側と向き合い歩み寄り、中日関係の改善と発展を共に促すべきだ。

「中国網日本語版(チャイナネット)」20211221

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