中華エンターテインメントの可能性

2021-10-28 15:23:22

木暮颯大

私がS N Sを見ている時、たまたま流れてきたのが中国で行われているアイドルオーディション番組の映像でした。その番組は、今世界で大ブームを引き起こしているK-POPのメソッドに倣い、韓国で行われた視聴者投票型番組の中国版のオーディション番組で、K-POPにハマっていた私は続きが気になり中国製のアプリをダウンロードして見てみました。

しかしそれは私の常識を超越するものでした。なぜなら、歌のスキルやビジュアル・番組の規模において全てが既存のものから遥かに上回っていたのです。番組の規模はとても費用がかかっていると思われるステージ演出や設備の充実さ、そしてなんといっても番組の総再生回数が50億回を突破、1位でデビューした練習生には十数日で2500万票もの票が集まるという事実に私は驚かせられ、とても『中国』を感じました。また、中国人が苦手とされていたダンスに関しては、番組が進んでいくごとにレベルが高くなっていき世界レベルまでとなっていました。そして、中国人のメンターのみならず、韓国から現役アイドルをメンターとして番組を盛り上げるなど、日本国内ではなかなか見られないコラボレーションがあって本気で世界輸出していくんだという制作陣の熱意も感じました。

また、私は練習生のビジュアルの高さに魅了されました。ありきたりな美の基準に囚われない個性的な顔立ちをした練習生や、圧倒的なスタイル、表情管理などに私は人口13億人もの人が住む中国の人材的魅力に気がつかされました。こうした個性的な練習生は次世代の価値観へと移行する今この時代でトップ圏の人気を博し、見事デビューを掴んでいて、私は中国は一見色々な面で統一されているのではないかと思っていたのですが、多種多様な考えや生き方、そして「自分らしくいる・自分にしかない魅力で魅了する」という新たな考えに出会うことができました。

しかしながら、思えば、私はいくつもの中華エンターテイメントに刺激を受けてきました。そのうちの一つが中国舞踊です。私はクラシックバレエを習っていたのですが、イタリアで生まれ、様々な国の古典作品を言葉を発せずに表現する舞踊なのでしなやかに手や足で物語るようにと指導を受けてきました。しかし、中国舞踊の舞台を観た際、しなやかな動きや美しさは似ていると感じましたが、パワフルでアクロバティックな技巧に感銘を受け、どうしてこのように踊るのだろうかと興味が湧きました。その『違い』が東洋と西洋の価値観の『違い』であって、歴史の授業で学んだように「chinoiserie」のように魅力となって多文化圏の人々に受け入れるのではないかなと思いました。

また、カナダ発のサーカス団で、世界各地からの劇団員で構成されているシルクドゥソレイユの公演を観た際には、中国人劇団員が披露した大型一輪車の上での一糸乱れぬ中国雑技の連続に感動するとともに、観ているこちら側が冷や汗をかきました。この中国雑技の器用でダイナミックな部分は中国の芸術品にも多く見受けられ、こういったセンスを好んでいたんだのと感じました。

私のこういった経験から見ると、中国のエンターテイメントの表現は大文化と受け継がれた伝統から溢れ出るものがあり、その人口から常にレベルの高いものだけが世界へと輸出されているのではないかと感じました。私も現在ダンス部として表現する立場にあるのですが、「表現」には世界各地で人間の内側から溢れ出る神秘的なパワーが持ち合わされていると思います。そして、こういった表現における文化的価値の違いこそ新たな価値観を生み出し、「興味」を引くことから始まり、「理解」へとコマを進めてくれるのではないかと信じています。

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