美術と私と中国と

2021-10-28 10:33:00

酒井和花

私が初めて中国に興味を抱いたのは、二年の時に履修した“東洋美術史”の授業がきっかけである。

都内の美術系女子大学に通う私が単位の為に仕方なく選んだのがこの授業なのである。美術史と付く授業には難しく難解なイメージがあった為今までずっと敬遠して、全く受講してこなかった。しかし、そんな不安とは裏腹に始まった授業だったが、回を重ねるごとに面白さが増し、楽しみながら受講することができた。

東洋美術史という名前ではあるが、中国美術のみを学ぶものである。今まで美術史で学ぶことと言えば、西洋画や日本画などがほとんどだったため、中国の美術作品を学べたのは非常に新鮮であった。講師は中国への留学経験がある日本人の先生である。気さくで陽気な先生の行う授業は常に笑いで溢れる和やかな雰囲気であった。

中国の美術最大の特徴は動物を模した作品の精巧さである。特に兵馬俑の馬車に付属されている馬の美しさはかの有名なミロのビーナスやダビデ像と比べても遜色ない出来栄えである。今まで中国を初めアジアの美術品というのはデフォルメされた物が多くてどうしても西洋美術よりも見劣りしてしまうイメージを持っていたが、中国のブロンズで作られた馬を見たときは自分の東洋美術の知識の乏しさに恥ずかしくなってしまった。

更に興味をひかれたのは講師の先生が話す中国人の日常生活についてである。

日本では限られた場所でしか見ることが出来ないパンダが近所の施設に沢山いて無料で見放題だった話しや、屋台で売られていた食用犬を食べた話など興味をそそられる話題ばかりであった。

私の中の中国人はというとアニメや漫画に登場するカンフーで戦うチャイナ服を着ているような和製チャイナだったが、先生の話を聞く事でこの様な既存のステレオタイプではない、現代に生きる中国人の本当の姿を知ることができた事もこの授業を受けた事の大きな収穫である。

私の通う大学にはアジア圏を中心に様々な国の生徒が学んでいる。この東洋美術の授業はオンライン形式であり、チャット機能を使って先生に授業へのリアクションを送ることが出来るため毎回とても盛り上がっている。この授業は特に中国人の生徒がたくさん受講しているのだが、先生の話を聞く彼女たちはとても楽しそうである。

今までの私の場合は彼女たちを一括りに中国人として考えていたと思う。しかし、一人の人間として接してみると、おとなしい子や活発な子など色々な性格や考え方をしているのである。日本にはまだまだ“中国人は○○である。”という勝手な想像だけで中国に対してマイナスのイメージを抱いている人が大勢いる。この様な人に出会ったとき、中国という国の面白さや楽しさを学ぶことができた私は非常にがっかりしてしまう。

今現在、アメリカやヨーロッパに次ぐ新しいアート市場として世界中のアーティストたちに注目されている。古典的な美術作品から現代アート、更にはアニメや漫画まで幅広く輸出されてる芸術大国なのである。この芸術フィーバーは、フランスやイタリアを凌ぐ勢いである。

中国人に人気の高いアーティストの作品を見てみると、同じ東アジア人として感性が近いからなのか、日本人の心にも突き刺さるような素晴らしい物ばかりである。今を生きるアーティストたちが目指すべき国は中国なのかもしれない。

現在、新型コロナウイルスの影響で海外へのむやみな渡航は禁止されている。外国に行った経験が全くのゼロである私としては早急な収束を願っている。そして、人類がウイルスに打ち勝ち前のような平和が訪れたときは、真っ先に中国へ行き美術館巡りやアート市場の調査をすることが私の夢である。

 

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