夫婦別姓・夫婦同姓

2021-10-28 15:20:52

 呉茉留

 結婚後、どちらの名字にするか。それとも夫婦別姓にするか。

 「名字は変えない方がいいよ!」と主人は言った。

 それでも反対を押し切って、私は昨年「呉茉留」になった。

 日本では夫婦同姓が当たり前で女性が名字を変えることが多い。なんとなくその方が結婚した感があると感じた私は国際結婚で夫婦別姓を選択できたが、敢えて別紙で夫婦同姓を申請した。外国の名字を名乗ることについては家族だけでなく、職場でも反対意見はあった。仕事上だけでも旧姓を名乗る意見もあったが、私は結婚と同時に全て名字を変えた。その方が日本で生活している外国人の視点に立てると考えたからである。

 実際はと言うと、転職活動をする時に不利であった。まず名前で判断されたり、国籍やビザを聞かれることが多かった。それでも何とか転職先を見つけ、中国人の対応が多い仕事に就いた。私は中国語が活かせる!!とウキウキしていたが、現実は違った。電話対応で名乗った瞬間に日本人に「話の通じる人にしてください。」「あなたどこの国の人!!」などと言われることが多かった。接客でも私の名札を見るなり「他の人にしてください。」と言われた。家に帰って泣きながら主人に言うと「ほら、やっぱり名字変えない方が良かったじゃん!」と言われた。

 それでも私は後悔していない。

 ある日、日本国籍で日本の名前であるのに中国で育ったために中国語対応を希望しているお客様が来店した。私が中国語で対応し、話が進んだ。途中、聞き取れない部分があり、「私は日本人なのでもう一度ゆっくりおっしゃっていただけますか?」と頼むと、「あら!中国人だと思ってた!!」と言われた。聞き返してしまい申し訳なさもあったが、中国人に間違えられたのは自分の中国語を褒められているようで嬉しくもあった。その後も話は広がり、帰る時には「あなたがいてくれて本当に良かった!何かあったら呉さんを頼りにするからね!」と言い、ペコリと頭を下げながら店を出た。エスカレーターで見えなくなるまで見送っている間、何度も振り返って頭を下げては手を振ってくれた。見えなくなる最後の最後まで笑顔で手を振ってくれた。この時、「呉茉留」で良かったと感じた。

 この他にも、中国人には何度も中国人と同様の猛スピードの中国語で話され、聞き返すと「あれ?中国人じゃないの?中国語上手だね!」などと言われた。名字が日本名だったら、もしかすると最初からゆっくり話してくれたかもしれない。しかし、名字が「呉」のおかげで、ネイティブと同じレベルの中国語が聴けて、本音も聞けて、相談に乗ったり一緒に解決することができた。だから私は後悔していない。

 いつか日本でも夫婦別姓が可能になったら名字を変えない夫婦も増えるかもしれない。国際結婚は変える必要がないと知れば変えない人も多いかも知れない。けれど私はこれらの経験から、これからも堂々と「呉茉留」を名乗りたいと思う。

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