夜の不思議な仲間たち

2021-10-28 15:01:41

笹川智貴

そう、あれは世界が病気になる前の2019年の秋でした。

私は友人と34日の天津旅行を楽しんでいました。初めての中国旅行、天津から新幹線で30分の北京からの帰り道、夜の帳が降りたころ巨大な天津駅を外から見てみたいと思い、天津駅前広場に出てみました。ライトアップされた天津駅はまさに圧巻で、私達が写真撮影に精を出していると、ふと後ろから音楽が聞こえてきます。

見ると、30人ほどの集団が等間隔に並び、音楽に合わせて身体を動かしているではありませんか。友人も私も日本の駅前でこのような光景を見たことがないので戸惑いました。クラブのような激しい雰囲気でもないし、ただ音楽を楽しんでいるわけでもない、しかし拭いきれない既視感、そうだ!これは中国の盆踊りだ!

日本からはるか遠い中国の地で、慣れ親しんだ盆踊り(しかも中国式!)に出会えるとは思っていなかった私は嬉しくて一目散に駆け寄っていきました。盆踊り集団は私に構うことなく踊りを続けています。とはいえ、踊り初心者の私は近くで見ていることしか出来ません、するとなんと、盆踊り集団の中の一人のおばさんが手招きをしてくれたのです。それを見た私は「そうか、完璧に出来なくても一緒に踊っていいんだ」と思い、意を決して輪の中に入っていきました。

実際にやってみると、踊り自体は音楽に合わせていくつかの動きのパターンを繰り返すとても簡単なものでした。曲は何種類かあり、それに合わせた踊りがあって、みんなで踊るというものです。最初はうまく出来ませんでしたが、やっていくうちにコツを掴んで、15分もすれば見様見真似ではありますが、一緒に踊れるようになりました。

踊りを習得していく中で私が感じたことは、一体感と爽快感、そして高揚感です。みんなで同じ踊りをして息を合わせることがこれほど一体感を感じることが出来て気持ちの良いものだとは思いませんでした。普段の運動不足で鈍った身体を動かして気持ちの良い汗をかく爽快感は晴れ晴れしいものでした。そして、外国人の私を優しく受け入れてくれる中国の人たちの優しさに私の心は最高潮に高揚していきました。

音楽の合間に手招きしてくれたおばさんに話を聞いてみると、毎晩日課として踊りを踊っているそうで、誰が来ても大歓迎だと言いました。そして、私が日本人だと伝えると、いつか日本に旅行に行きたいと言ってくれました。

日本に帰って調べてみると、私が体験したのは盆踊りではなく、「广舞」という夜の運動だそうです。最初は知らない人同士が集まって毎日一緒に運動していくうちにコミュニケーションの輪が広がっていくそうです。今は色々と難しい面はあるのかもしれませんが、日本にもこの文化が根付けばいいのになあ、と思います。綺麗になった東京駅舎の前でみんなが楽しく音楽に合わせて踊れたらどれほど楽しいでしょうか。見ず知らずの人同士でも一緒に踊って、私があの夜中国で感じたような高揚感を日本の人たち、そして日本に旅行に来る人たちに味わって欲しいと願っています。

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