中日協力の新たなチャンス——長崎幸太郎・山梨県知事特別インタビュー

2022-11-01 17:01:58

中日両国は一衣帯水の関係にあり、様々な分野やレベルで友好協力関係が全面的に深く発展している。そして日本の47都道府県に目を向けてみると、特色豊かで、その産業や観光、文化などに関してもそれぞれ異なる優位性を備えている。では、中日の地方間交流推進を通じて、両国の協力のために、どのようにして新たなチャンスを生み出しているのだろうか?。また、日本の各地方では、それぞれどのような資源を通じて中国各地と双方の強みによる相互補完を行おうとしているのか?こうした視点に立ち、人民網日本株式会社では「中日協力の新たなチャンス——日本都道府県知事シリーズインタビュー」を企画。47都道府県の知事の独占インタビューを展開していく。人民網が伝えた。 

日本を象徴する世界文化遺産の富士山は、中国でも広く知られている。富士山とその麓に位置する富士五湖がある山梨県は、中国人観光客にとっても人気の高い観光地となっている。中日国交正常化50周年に合わせて、山梨県の長崎幸太郎知事が東京の都道府県会館で人民網のインタビューに応じた。

人民網のインタビューを受ける山梨県の長崎幸太郎知事(撮影・呉穎)。

富士山の美しい景色と豊潤なワインが自慢 

日本の中部地方に位置する山梨県は、東京から車でわずか1時間の距離にあり、南に富士山、北に八ヶ岳、東に奥秩父山塊、西に赤石山脈(南アルプス)など、標高2000‐3000メートル以上の山々に囲まれている。それらの山々が県内面積の約8割を占めているため、原生林や湖がたくさんあり、美しい自然の景色が広がっている。

山々が肥沃な土壌と豊かで良質な水を育んでいるため、山梨県はブドウやモモ、サクランボといったフルーツの生産が盛んで、日本屈指のフルーツの産地となっている。同県で生産されるフルーツについて、長崎知事は「匠の技のフルーツ」であり、「手間隙かけて作られた芸術品」と胸を張る。

山々に降った雨や雪解け水が大地にしみ込み、長い時間をかけて地中でろ過されて、清らかな水となるため、山梨県は美酒の名産地でもある。同県産のウイスキーは日本国内外で大人気となっているほか、ドイツ・ベルリンで今年開催された「ベルリナー・ワイン・トロフィー」では、日本固有のブドウ品種「甲州」を使って作られた「シャンモリ 山梨 甲州2021」が日本ワインとして初めて金賞を受賞した。長崎知事によると、「90を超えるワイナリーが同県に集積しており、『ワイン県』と称されている」のだという。

また富士山をはじめとして、山梨県にはたくさんの火山があるため、県内には温泉郷も少なくない。長崎知事によると、350種類もの源泉が沸き出しているという。西山温泉にある西暦705年に開湯した「慶雲館」は、1300年以上の歴史を誇り、世界最古の温泉旅館としてギネスにも認定されている。

山々に囲まれ、湖もたくさんある雄大な自然環境を誇る山梨県では、さまざまなアウトドアスポーツを楽しむこともできる。2021年の東京五輪では、自転車のほとんどのコースが同県に設置された。長崎知事によると、山梨県は「サイクルスポーツの聖地」なのだという。

中国との多分野での積極的な交流を重視 

長崎知事は、山梨県は長年にわたり、中国の地方の友好省・市との交流や協力を推進し続けてきたとし、「当県と四川省は、1985年に友好姉妹県省の協定を締結した。そして、林業を中心として専門家の派遣や研修生の受け入れといった交流事業を展開してきた。2020年に新型コロナウイルス感染症が拡大した際には、山梨県と四川省はマスクなどの防疫物資をそれぞれ提供し合うといった支援も行い、困難の中で、再び友情の証を示した。当県と四川省、当県の各市町村と四川省の各都市はすでに幅広い友好関係を築いており、当県はその関係を非常に重視している。今後は協力の分野をさらに拡大していきたい」と語った。

2020年当時、四川省から支援されたマスクをつけて、支援物資の前に立つ山梨県の長崎幸太郎知事(写真提供・山梨県)。

また、県内の企業が技術の優位性を発揮して、中国市場を開拓できるようにと、山梨県は2014年に中国国内にビジネスサポートデスクを設置。中国進出や販路開拓を望んでいる県内の企業に個別にサポートを提供している。現時点で、半導体の部品検査装置の中国への輸出や中国から山梨県への輸入といった成果をあげている。 

中国と最先端産業分野での協力を今後さらに強化したいという姿勢を示している長崎知事は、「これまですでにインドや中東諸国などが、P2Gシステムの採用に大きな関心を示している。中国にもこのシステムに関心を持ってもらい、一緒にCO2フリー、カーボンニュートラルの社会の達成に向けて取り組んでいきたい」としたほか、「当県は医療機器に関する部品と材料製造の産業を現在大いに発展させており、中国の医療機器メーカーとの交流や協力を拡大させていきたいと考えている。現在当県では、県を発展させる政策の1つとして、県内企業の中国への進出を推し進めていく方針だ」と語った。

また山梨県だけでなく、長崎知事本人も長期にわたり、中国との友好関係を非常に重視してきたとし、「衆議院議員の職に就いていた際、二階俊博先生と共に日本と中国とのより良い関係づくりに対して、大きな関心を寄せて、取り組みを進めてきたという思いがあった。ただ残念ながら、現状、日本と中国との関係は少し前までのように、改善を続けているという状況ではない。その一つ大きな理由は、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、両国のいろいろなレベルでの交流が途絶えてしまったことにある。今後、以前のような関係をもう1度築き上げていきたい」との見方を示し、「両国は引っ越すことができない位置関係。良い関係を作るべく努力をするしか道はないと思っており、しっかりと貢献をしていきたいと思っている」と強調した。そして、「隣国の経済大国である中国とビジネス交流ができれば、お互い得るところは、大変大きくなると確信している。新型コロナが収まり、相互の行き来がもっと自由になった時には、中国のビジネス関係者に、是非当県に視察に来てもらいたい」とした。

行政レベルの交流や経済交流のほか、長崎知事は、中日の青少年間の交流も重視しており、「我々の世代に比べ、日本の高校生のほうが、中国の同世代の若者ともっと身近に容易に交流できると思う」とし、「今年の10月14日には、当県の青洲高校の生徒と四川省の楽山市第一中学校の生徒がオンラインによる交流活動を行った。こうしたオンラインの交流をベースに、これらの若者たちが今後、対面での交流へと発展させ、互いへの友情を深めていってほしい。そして当県と四川省の友好関係を、次の世代にもしっかり受け継いでもらいたい」とした。

各界の注目集める最先端製造業の躍進 

山梨県には美しい自然やグルメ、美酒などを目当てに、世界各地から観光客が訪れているが、その最先端製造業も日本でトップレベルを誇り、世界の産業界から注目を集めている。

山梨県はかつて水晶の産地として知られ、昔からその加工業が盛んだった。この伝統産業は現在、ジュエリー製造業へと発展しているほか、長年にわたり蓄積されてきた超精密加工技術を活用することで、機械電子産業も急速に発展している。長崎知事によると、県内のGDPの約6割を機械電子産業が占めており、世界の大手機械電子メーカーが山梨県で発展を遂げている。例えば、世界的な産業用ロボット機器メーカー「ファナック」や、半導体製造装置メーカー「東京エレクトロン」の主力工場が同県に居を構えている。

山梨県は現在、新たな分野での成長にも挑んでいる。長崎知事はその例として、医療機器産業や水素・燃料電池関連産業の大々的な発展に力を注いでいる点を挙げている。医療機器産業をめぐっては、山梨県は2020年3月に「メディカル・デバイス・コリドー推進計画」を制定し、6月には「メディカル・デバイス・コリドー推進センター」を設置して、県の関連当局や民間企業、団体、科学研究機関、医療機関が協力して関連産業の集積に取り組んでいる。また水素・燃料電池産業をめぐっては、長崎知事は「当県甲府市にある山梨大学は世界最高水準の研究機関となっている。また、燃料電池システム開発を支える共通基盤の研究の推進を目的とした技術研究組合『FC-Cubic』の本部が今年度中に甲府市に移って来る予定」とし、「当県は燃料電池開発の日本国内における大きな中心地になるだろう」と強調する。

また山梨県は現在、余剰電力を水素に変換して貯蔵・利用する「パワー・ツー・ガス(P2G)」システムという水素エネルギー関連技術の発展にも力を注いでいる。長崎知事によると、山梨県は現在このシステムの「世界的な製造基地と主要な開発基地」になることを目指しているのだという。また、「当県内にあるサントリーの白州工場の蒸留についても、当県が持っている『パワー・ツー・ガス』システムを使って、作り出した水素を燃やして、その熱で蒸留する取り組みが採用されている」と紹介している。

取材の最後に、長崎知事は「今年は日中国交正常化50周年。二階先生が両国の国交正常化50周年を記念した植樹を山梨ですることを提案している。富士山の見える適切な場所を今、県で総力を挙げて探している。木を植える場所が、両国の友好の象徴的な場所になることを願っている。日中両国の関係が一朝一夕に良くなることはないが、そこに向けて小さなことでも一つ一つ積み上げていきたい」と語った。

「人民網日本語版」2022年10月31日

 

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