大学で出会った新しい中国

2022-10-28 13:55:27

佐藤 優菜


私はカリフォルニアにある大学で学んでいる。今年の3月、大学の休み期間を使い、友人とサンフランシスコへ出かけた。旅をする目的は、アメリカ最大級のチャイナタウンを訪れること。中華料理が大好きな私。大学で中国語を専攻している私。また、米国での生活で、食のギャップに苦しみ、少しでも日本食に近い料理を楽しみたい私。これらのことが相まって、チャイナタウンへの旅に心を躍らせていた。

食べ歩きをして早数時間。通りすがりの建物の「抗日」の2文字が目に飛び込んできた。その建物は「海外抗日戦争記念館」であった。扉の中には、中国人の案内人が1人。日中戦争の対日抗戦を顕彰する目的のために建てられた建物である。完全に平和ボケをしていた私にはこの「抗日」の2文字が強烈だったことを今でも覚えている。チャイナタウンの食事には大満足したものの、この強烈な2文字に動揺しながら旅を終えた。

「抗日」の2文字。この2文字が目に飛び込んでから、私の父や高校の社会科の先生から教わったことを思い出した。それは「戦争中に日本が中国に対して加害者になった数々の瞬間」だ。この事実を自分自身で改めて咀嚼するようになった。もちろん、日本も戦争中、あまりにも無惨な形でたくさんの尊い命を失った。胸が裂けるような事実である。しかし、戦争中のことに関して、日本の教育で教わるのは、「日本が被害者としての立場」であることが多いだろう。日本が他国に犯した罪、中国の方々に犯した戦争犯罪を意識して学ぶことができる時間は圧倒的に少ない。抗日、反中国という感情は、お互いの感情を受け止め、尊重することができていないが故に生まれるものだと改めて気づいた。

終戦から77年。日中国交正常化から50年。中国と日本の関係は良好だと言えるのだろうか。中国人は敵と思う日本人も一定数いるのではないだろうか。地理的、経済的にも密接な関わりを持っている中国と日本。また、日本は中国からさまざまな文化的、歴史的恩恵をこうむっている。これらを踏まえると、現在の中国と日本の関係は正直悲しい事実であり、同時に変えていくべき事実でもある。

私も大学に進学するまでは、上記で述べた「一定数いる日本人」のうちの1人であった。おそらく幼い頃から目にしていたメディアを鵜呑みにしていたからである。

しかし、大学生活によって、私が抱く中国人に対するイメージが変わった。大学では中国から来た友達も作ることができた。彼らとの楽しい食事の時間。親身になって中国語を教えてくれる彼らの姿。私がそれまで抱いていた中国人に対するイメージが変わった。また、それと同時に、特定の側面からだけで中国人を判断していた自分自身の視野の狭さを認識した。

大学生活で感じた、私たち学生の無限大の力、そして、11の関係の大切さ。きっと中国人に対して負のイメージを持っている日本人の学生もいるであろう。もしかすると、特定の面から中国人を捉えているのかもしれない。だからこそ、大学生活で出会う中国人、または中国に対する大学での学びを大切にしてほしい。この、自分対1人の中国人、自分対1つの中国の学びが身近な人に伝わり、それが波及効果となってよりスケールの大きい物事への良い影響力になる。学生こそ、この波及効果の起点としての役割を担うことができるのだ。

最後に、私が今、日中関係向上のために果たせる使命とは何なのか。それは、大学で学んでいることを活かすことである。米国の大学生として日々多様なバックグラウンドを持つ友人と授業を受け、また、日常生活を送ることで、かけがえのない学びを得ることができた。相手の価値観を受け入れる力。傾聴力。コミュニケーション力。これらの力を日中交流の場や日中関係向上のためにも反映いていくという使命を全うしたい。


関連文章