私が中国語学習を継続する理由

2022-10-25 16:51:41

山内 清哉


私は現在大学院生であり、研究の傍ら、日々中国語の修得に励んでいる。私の周りの学生は論文執筆や就職活動に向けて英語を勉強している人が多く、「何でそんなことしてるの?」と特異な目を向けられたことも少なくない。勉強する理由を聞かれるたびに「大学には中国人も多いし、会う人みんないい人だから、中国語を話せるようになってもっと彼らとの距離感を縮めたいんだよね」と答えている。これはもちろん心の底から思っていることの一つなのだが、実は心の内に秘めたもう一つの学習目的がある。それをこの場を借りて紹介しようと思う。

私の所属する研究科では国際交流を重視しており、中国の某大学の学生が毎年来日し、数日間かけて大学構内で研究内容の紹介や積極的なディスカッションを行っている。我々と彼らは基本的に英語でコミュニケーションをとっていたが、大学で学ぶ第二外国語として中国語を少し勉強していた私は、「これ中国語で言えそう」と思ったものは中国語で話すようにしていた。彼らも私の中国語をある程度理解してくれたようで、私の中国語を聞くたびに彼らが”Your Chinese is good!” と褒めてくれたのがとにかくうれしかった。ある時私は、一緒に牛乳を飲もうという意思を伝えようとしたが、飲むという意味の「喝」しか単語が出てこず、とりあえず「喝吧!」と言った。それが伝わらなかったのか、その時の彼らが一斉に私に向けた怪訝な表情がいまだに忘れられない。ここまで円滑なコミュニケーションを築いていたと思っていたが、ここで会話が不自然に止まってしまった。この一件で私は大きく自信を失ってしまった。これは私が中国語の単語学習や発音練習を軽視していた結果であり、学習態度を大きく改める契機となったのである。

彼らの帰国時、私は「今度は私が中国に行くから待っててね」とつたない中国語で伝えた。彼らはとても喜んでくれたようで、軽くハグをして別れた。

あの時言えなかった「一起喝牛奶吧」を自信をもって伝えるため、あの時より向上した中国語の実力を彼らに見せつけるため。他人から見るとくだらないと言われそうであるが、中国語を用いたコミュニケーションにリベンジしたい、これが私が内に秘めた中国語学習継続の目的である。

今度はこちらが中国に赴き、彼らに再び出会い、上記の目的を達成するために私は中国への留学を強く希望していたが、コロナウィルスの蔓延により、残念ながらそれは叶いそうにないのが現状である。現在では両大学がオンラインでつながり、研究発表をする場が設けられたが、正直物足りないと感じている。その理由は一緒に観光するイベントや食事会がないためであると考えており、自由に交流する場の重要性だけでなく、新しく出会う中国人研究者と直接顔を合わせて話すことによって生まれた刺激が、いかに自分の好奇心にとって大きいものだったかを再認識している。

あの時酒を飲み交わした彼らのほとんどはどうやら就職したらしいが、いまでも元気にしているだろうか。彼らにとって私はわずか数日一緒にいただけの日本人かもしれない。しかし、私に再び本気で中国語を学習させる契機を与えてくれたこと、国際交流の楽しさと難しさを教えてくれたことには大変感謝している。

そしてもし、また自由に海外に渡航できるようになったら、中国の研究機関に所属してみたいとも考えている。中国の科学技術の発達は著しく、論文の質量ともに目を見張るものがある。そのような環境に身を置いて、互いに切磋琢磨しながら研究活動をしてみたい。例えば、私の研究領域と似た研究をしており、あの時深く討論しあった中国人研究者がまだ研究を続けているらしく、ぜひお互いの知識と技量を合わせて研究し論文を書きたい。そう強く願っている。この願いがいつ叶ってもいいように、常日頃からの研究内容のアップデートはもちろん、中国語の学習も継続していきたい。

 

 

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