漢方療法と私

2023-10-23 17:13:00

金場ノエル


中国から日本に伝来したものには、衣食住に限らず漢字や詩などの学問がある。その中でも、私にとって最も身近なものが漢方薬だ。

私は、胎児7ヶ月の時点で左肺に病気があることが分かり、出生後すぐに外科手術を施された。手術による影響と生まれつきの虚弱体質が相まって、気圧の変動によって体調を崩したり、血流の悪さから頭痛や手足の痺れを感じたりするなどの症状があった。これらの症状は、漢方薬を飲み続けていたことで中学生になるまで安定していた。しかし、中学3年生に上がる頃、左肺の調子が再度悪くなってしまい、2回目の手術を受けることになった。手術後は、左肺に繋がる神経が過敏になり、少しの動作でも左半身に痛みや痺れを感じるようになった。手術の影響は幼い頃よりも強く現れるようになり、現在も継続して症状に合った漢方薬を服用している。

漢方薬には、病気や体調不良を直接抑える効果があるわけではなく、症状の根本的原因を持続的に服用することで緩和させる効能がある。そのため、術後の緩和ケアとして処方されている。外科療法を施す西洋医学と、漢方療法を施す東洋医学の両方を患者さんに勧めることで、相乗効果が生まれるのだ。現に私も、症状の緩和や術後の疲労を軽減させるために漢方薬を服用している。

私が術後に服用していた漢方薬は、「補中益気湯」と「桂枝加朮附湯」の2種類である。手術による疲労感によって、生きる活力をなくしてしまった私に処方された「補中益気湯」という漢方薬は、手術による倦怠感や疲労感を改善する効果があった。また、「桂枝加朮附湯」は、手術による左半身の緊張やこわばり、神経痛を緩和させるために服用していた。

そして、現在でも服用を続けている「五苓散」という漢方薬には、体内の水分を循環させ、めまいや頭痛を改善する効果がある。術後半年ほどは、漢方薬の他に痛み止めの薬や、血行改善の薬なども併用していたが、漢方薬を継続して服用しているおかげで、今では漢方薬以外の薬に頼らずに生活できるようになっている。

また、この作文を書くにあたって、私が幼かった頃の話を母に聞いたところ、母は私に「小建中湯」という漢方薬からできた飴を与えていたことが分かった。この漢方薬には、弱った胃腸の働きを回復させる効果がある。腸が虚弱であった私には、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、アレルギー性の気管支炎等の症状があった。これらの症状を少しでも緩和させるために、母は私の生活の中に漢方薬を取り入れていたようだ。その甲斐あってか、肺の病気にまつわること以外は、至って健康に成長することができた。そして驚くことに、母が丈夫な子どもを出産するために「冬虫夏草」の薬膳を食べていたことも分かった。「冬虫夏草」は、虫に寄生した植物を元に作られ、滋養強壮や免疫力の向上などの効果を持つ漢方薬のひとつだ。母は、強い子どもを産むために毛虫のスープを飲んだのだと、苦い顔をしながら話してくれた。私はどうやら、産まれる前から漢方薬にお世話になっていたようで、話を聞いた時は驚きが隠せなかった。

私は、西洋の外科療法と東洋の漢方療法、両方の医学によって、健康に成長することができた。漢方薬には、私自身の努力では整えることができない身体のバランスを改善する手助けをしてもらっている。漢方薬は、私が生まれる前から私自身に深く関わっているもので、私にとって切っても切り離せないそんな存在だ。


 

人民中国  2023年10月25日


 

 

 

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