「らしい」から「実感」へ

2023-10-23 17:28:00

倉持 和輝


小学校の社会の授業で、日本の近くには中国という国があることを知った。「人口はかなり多いらしい」、「日本文化と密接なかかわりがあるらしい」。時折、ニュースで聞く上野動物園のパンダと中国のかかわり、「中国は思っているよりも私たちの生活に深くかかわっているらしい」。私は勉強が大好きで、孔子や孟子などの人物や、漢文を読むことはした。しかし海外旅行をしたことのない私にとって、それは実際にあるかもわからない国との終わらない綱引きをしているような感覚だったと記憶している。中国を理解できたと思っても、またわからない部分が出てくる。考えてみると、私の周りには多くの「中国」があったにもかかわらず、それに気が付くことは無く、すべてが「らしい」という曖昧な形で記憶されていたのである。

今年、大学生になり横浜で一人暮らしを始めた。そして、そこには日本最大規模の中華街があったのだ。美しい装飾品、きらびやかな門、鮮やかな赤で彩られた中華街を見て心が躍った。本格的な中華料理を初めて食べ、今まで自分が中華料理だと思い食べていたものとは異なる味に中国という、身近でありながらはるか遠くの国を思ったのである。私が初めて「実感」した中国である。

そんな私は、大学で留学生支援団体に所属することになった。そこで仲良くなったのが中国からきた留学生だった。彼女は中国における正月や七夕の話、中国での食事のマナーについてなどを私に熱心に教えてくれた。「こんなにも近くにある国なのに、私は中国について何も知らない」と心から感じた。「実感」である。文化は知ろうとしなければ、それを知ることが出来ない。そして、文化を知ることがなければ、国を「実感」として感じることが出来ないのである。

私は中国をもっと知りたい。世界史の授業で学んだことを実際に現地で見たい。現地の人々がどのような価値観で生活しているのかを知りたい。文明が栄えた理由を、この目で見たい。「実感」を持つには体験が必要である。そして、体験した人はその知識を周りの人に伝えていく必要があるのである。私はこれから先、自分の得た「実感」を周りに伝え、広げていくことで両国の関係をより強化する助けになりたい。

これまで、日本から出たことのない私でも、日々の生活に中国を感じる。日本に住む私たちは中国を「実感」として認識していく必要があるはずだ。これから先も、日本と中国は両国間の関係の強化をより活性化していくよう努力し続ける必要がある。そのために必要なのは国民一人一人が相互に両国間の文化の違いを理解し、尊重できる関係を構築することである。つまり、「らしい」で終わらせないことが必要だ。教育を通して知る。時には、実際に見て、文化を肌に感じる。そうして初めて知ることが出来るのである。

私が言えるのは、中国は日本にもあるということである。中華街、留学生、パンダ、三国志、など私たちの周りには中国へつながるドアがたくさんある。そしてそれを見逃してはいけないのである。これまでも、私たちは互いに良い影響を与えあいながら成長をしてきた。そしてそれはこれからも続いていく。「らしい」ではなく、もっと主体的に中国を知るべきである。私は「実感」している。日本の近くには中国という、長い歴史と素晴らしい文化を持つ国があるのだと。

 

 

人民中国  2023年10月25日


 

 

 

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