浅野　りつる

出会いは、自分の価値観や世界感、時に性格までも大きく変えることがある。私の場合、高校時代に人生を変える思いがけない出会いがあった。

私は私立の特進コースに進学したが、内向的という性格もあり、クラス全員がライバルという感じの特進クラスに馴染むことがなかなかできず、いつも一人で過ごしていた。そんな時、いつも隣のクラスから壁越しに明るい笑い声が聞こえてきた。楽しそうなクラスの雰囲気が羨ましく、彼らと仲良くなりたい、話をしてみたいと思っていた。私の学校は戦前からアジアの留学生を受け入れており、私の在学中には一学年に約１５人の中国人留学生がいた。彼らの目標は日本の有名大学に入ることなので、日本人の特進クラスと合同の科目がいくつかあった。入学からしばらくして彼らと一緒の授業が始まった。これは絶好のチャンスだと思い、勇気を出して思い切って話しかけてみた。すると、彼らは「私たちは中国から来た留学生です。よろしく。」と言って、握手をしてくれた。とてもフレンドリーな雰囲気で私を受け入れてくれ、私はもっと早く声をかけに行けばよかったと後悔した。それ以来、私は彼らとより一層仲良くなりたいと思い、中国人留学生のクラスによく遊びに行くようになった。休み時間に留学生クラスに行くと彼らはいつでも歓迎ムードで私を迎え入れてくれ、日本語で日本の好きなところをたくさん話してくれた。特に盛り上がる共通の話題は日本のアニメやゲーム、漫画だった。会話をしていくうちに、彼らが努力して日本語を使って日本のことを喋ってくれているのに、私は中国語の挨拶ひとつすら言えない、中国について何も知らないということが恥ずかしく申し訳ないと思うようになった。

ある日、体育の授業でリレーをすることになった。私は中国人留学生らと同じチームだった。私は色々なことを気にする癖があるため、中国人留学生らに「私のせいで負けたらごめんね。」と言った。すると、彼らは「大丈夫！できる！」と言ってくれた。一緒に過ごしていて感じ始めたことだが、留学生たちは困難なこと、いやな事があっても「没事儿」精神で、いつも前向きで明るくたくましかった。そんな彼らと一緒に過ごしていると引っ込み思案で事なかれ主義だった私も徐々に感化されてきた。私も彼らのように強く、小さな事は気にしない、自分の目標のために積極的に行動する、そんな人間になりたい、中国と中国人の事をもっと知りたい、中国語で彼らと話したいという思いが日増しに強くなった。高校入学時、母が英語塾をしている事もあり、漠然と英語教師を目指していたが、この中国人留学生らとの出会いにより専攻を中国語に変えた。大学では何事もチャレンジだと思い、内向的な性格を変えようとスピーチコンテストにも積極的に参加した。高校卒業後、彼らは大学進学で上京したり、コロナの影響で中国に帰国したり、みんなバラバラになってしまった。しかし、今でもSNSを通じて、連絡を取り合っている。私が中国語の勉強でわからないところがあれば、彼らはいつも優しく教えてくれ、私の中国語の学習を温かく見守り、助けてくれている。

彼らとの出会いのおかげで中国という国が大好きになり、また自分が生まれた日本の良いところも見直すことができた。私の視野を広げ、人生を大きく変えてくれた中国朋友。今度出会ったら中国語で会話し、「みんなが助けてくれたお陰だよ。」と中国語でお礼を言いたい。日本で困った事があれば今度は私が手助けしたい。私だけでなく、日本中でこんな出会いが沢山あるはずである。国家間では日々、様々な問題も起こっているが、個人間では温かい交流がますます増えるように両国にきれいな橋がたくさんかかることを願っている。

人民中国　　2023年10月25日