憧れの地、中国

2023-10-23 17:32:00

柏村 淑美


私の中国とのつながりは書道である。小学校2年生の誕生日に書道を始めた。最初は習っている友達について行った興味本位で、上手に書けるようになることが嬉しかった。毎回持ち帰った作品を母や祖母が褒めてくれ、冷蔵庫に貼ってくれていたことを覚えている。中学・高校と進むに連れて自然と書道を学びたいと思うようになり、大学では書道を専攻した。そこで書法だけでなく中国の歴史や書道史について学んだ。金石学が専門の教授について、中国古代の歴史について漢文を通して学ぶ機会を得た。

中国についてはそれまでマンガの『封神演義』(藤崎竜著、集英社コミックス)やゲームの『三國無双』(コーエーテクモゲームス)、映画の『レッド・クリフ』(東宝東和/エイベックス)などで知っている程度で、漠然と「書道の本場」であるという認識ぐらいしかなかった。後々になってマンガや映画を見返してみると、木簡に文字を書いているシーンがあったり、時代に即して隷書体が使われていたりと、「なるほど」と思う部分があって再度楽しむことができた。大学では書道史や中国史の授業は書法の授業に比べると少なかったが、歴史を知るうちに次第に、それまでただ書いていただけの文字に当時の時代背景が重なって見えるようになり興味を持った。「紙が発明される以前だから木に書いていた。木に書くから必然的に縦角が協調される」など、当時の生活様式に基づいた文字や書法の発展の様子に親近感が湧いた。特別なもの、特殊技術のように感じていた「書」というものが、人間が実用的なものとして書いていた身近なものに思えた。

そうして自然と「中国」という地に興味を抱くようになった。日本にまだ文字すら無い時代にすでに国という制度があり、文字をはじめ度量衡や青銅器、兵法や宗教などを作り出して一大文明を築いていた中国。広大な土地と雄大な自然、いくつもの民族と文字や衣装、食文化。書道を学びながら、字そのものよりもその時代や書いた人物に思いを馳せた。教員を志していたため大学4年生では書写書道教育関係のゼミに入るという選択肢もあったが、中国書道史のゼミを選び、卒論を書いた。まだまだ解明されていない古代の文字文化に特に興味があり、今後も勉強し続けていきたいと思っている。

大学卒業後、高等学校の書道の教員になって10年が経つ。昨年から本格的に中国語の勉強を始めた。これまで中国に行ったことが無くいずれは行ってみたいと思っているため、その時に中国語を話せるようになっていたいという気持ちと、言葉を理解すれば書道の勉強にも役に立つのではないかという気持ちからである。中国語は発音やリズムが綺麗なものが多く好きだ。私たち日本人が日常使っている漢字もそのまま発音が変わる。時には同じ漢字でも意味が変わる。難しくもあり面白い。自分の名前が同じ漢字のままで読む音だけ変わることも楽しい。言葉を理解できれば、生活文化や書法がもっと体感として理解できるのではないかと思う。とはいっても現在は子育てと仕事に追われ、通勤中に車でCDを聞くぐらいしか時間が取れないでいる。もう少し子育てが落ち着いたら、きちんと時間をとって勉強したい。

授業で書道を教えるときには、書法だけでなく歴史や文化も伝えられるようになりたいと常常思っている。文字を書くことがメインではあるが、その背景も知るとより理解が深まると思う。筆で文字を書くことは「難しい」と敬遠されがちだが、特別なものではなくあくまでも実用的なものとして書をとらえてもらえると嬉しい。いずれは実際に中国に行き、文化遺産等を実際に見て歩きたい。そしてその際にはぜひ通訳を介さず、中国語で自分でコミュニケーションをとりたい。

 

 

人民中国  2023年10月25日


 

 

 

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