明日はもっと良くなるだろう

2024-11-20 20:26:00

久保 百花


小さい頃から、人付き合いが得意な方ではなかった。特に小学生の頃はクラスメイトから疎外され、いじめを受けていたこともあり、まだ広がってもいない自分の世界でもがき苦しんでいたことを覚えている。人数が少ない一学年一クラスの小さな世界だった。

そんな私に、世界はもっと広くて素晴らしいことを教えて下さった恩師がいる。(恩師のことは、これより先生とよばせてもらう)

先生は、私が小学5年生のとき、新しく担任に赴任された。

先生は自己紹介のときに、以前は中国の小学校に勤務していたことを話された。

そんな先生をクラスメイトは、馬鹿にした。「中国から来たんやって!」 「中国に帰れ!」と。(一方私は小さい頃から映画「ベスト・キッド」が大好きだったので、先生に中国の話を聞きたくてウズウズしていた)今思えば、きっと当時のクラスメイトに「中国」という国を軽蔑する明確な理由はなかっただろう。小さな頃から、「中国」という国に対するイメージを大人から刷り込まれていった結果がこれであったのだと思う。

そんなクラスメイトを前に、先生は話をして下さった。

「君たちはこれからたくさんの経験をして、大人になっていきます。今の自分が見たことないものや、感じたことがないものを、自分の世界だけに留めないで。実は、私も中国の小学校に勤務する前は日本で働いていたので、中国に対して偏見を持っていたときがあります。ですが、実際に中国へ行くと、以前の私が持っていた偏見なんて忘れてしまうほど良い経験をさせて貰いました。私は、皆にも将来沢山の経験をして、世界に対する見識を広めていって欲しいと思います。」

この話を聞いてから、先生に対して声を大にして中国を馬鹿にするクラスメイトはいなくなった。また、私がクラスメイトからいじめられていたこともあって、先生はとても私を気にかけて下さった。先生はとても情に厚くて、辛いことがあったとき、私と一緒に泣いて下さったり、嬉しいことがあったときは自分のことのように喜んで下さったりもした。先生は、

「中国はとても情に厚い人が多くて、一度打ち解けたら、その人はもう大切な仲間だから!先生も中国にいる時、何度も周りの人に助けられていました。その人達が先生を助けてくれたように、先生もあなたを助けたい。あなたは先生にとって、大切な仲間だから。」 と言って、私に一つの言葉を教えて下さった。

「明天会更好」。先生曰く、この言葉には「明日はもっと良くなるだろう」というニュアンスがあるそうだ。この言葉は、今現在に至るまで、私の中でのおまじないの言葉なのである。

先生は私のクラス一同を褒める時も叱る時も、中国のことわざや言葉を教えて下さった。そのたびに私は、自分の世界がどんどん広がっていくような気がした。「明天会更好」含め、たくさんの自身の経験と言葉を教えて下さった先生にはとても感謝している。

小学5年生から7年が過ぎ、私は高校3年生になった。今は受験勉強に追われ、休む暇もないが、大人になったら、今よりももっと広い世界をこの身で体感し、見識を広めたいと思っている。

先生はあの後人事異動によって学校を離任され、会うことが難しくなってしまったが、今度会う機会が訪れた際には今一度感謝を伝えたい。

私の将来の夢は、あの当時私のクラスメイトだった人のような、中国に対する考えや偏見を持った人々を一人でも多く減らすことだ。そして私は未来の子供たちにも、先生のように沢山の素晴らしい経験を話せるような大人になっていたいと思う。先生が私にそうして下さったように。

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