「心」の架け橋

2024-11-20 20:30:00

水口 綾人


コロナが訪れる少し前のこと、私は北海道の登別にあるテーマパーク「登別マリンパークニクス」を訪れた。入園するとすぐに、驚きの光景が目に飛び込んできた。なんと、200人を超える中国人観光客で園内が賑わっていたのだ。彼らは、楽しそうに写真を撮り、笑顔で家族や友人たちと過ごしていた。その活気に満ち溢れた様子は、どこか心を弾ませるものであった。お昼のイルカショーが開場すると、彼らは、ぞろぞろと会場に入り、一人ひとりがしっかりと席を詰めて座り始めた。その整然とした振る舞いに、私は感銘を受けた。彼らは、まるで事前に打ち合わせをしていたかのように、無駄なスペースを作ることなく、座っていたのだ。これは、日本人である私たちが見習うべき思いやりの精神であろう。きっと日本人なら、ついつい隙間を空けて座ってしまい、会場に人が入りきらなくなってしまうところである。ショーの最中、私は観客代表としてイルカの指揮をとる役を任された。緊張しながらも、手を掲げてイルカに合図を送り、その通りにイルカが鳴くと、盛大な拍手が響き渡った。それは、中国人観光客たちからの称賛の拍手であった。この一連の出来事は、中国人たちの思いやりと温かさを感じるだけでなく、文化や言葉の壁を越えて心が通じ合う瞬間でもあった。

その一方、日本では公共の場での他者への思いやりが十分でないと感じることが多々ある。例えば、電車での席の座り方にしても、隣に人が座れないように小さなスペースを空けて座ってしまう光景がよく見られる。また、周囲の目を気にして直接的なコミュニケーションを避けることも多いことから席を譲らない人も少なくない。実際、ご高齢の方やヘルプマークを付けた方で、座りたいのに座れないという経験をした方はたくさんいるという。

このように日本と中国で思いやりの差が生じてしまったのは、文化的背景の違いに起因するところも大きいと私は考える登別での中国人観光客たちの集団行動から察するに、中国では集団主義が強く、人と人との結びつきを大切にする文化が根付いているため、自然と他者を思いやる行動が生まれるのであろう。一方で、日本では個人主義が強く、個人の自由やプライバシーを重視するあまり、他者との関わりを避けがちである。その結果として思いやりの欠如が目立つことがあるのであろう

実際、私が登別で目にした中国人観光客たちの行動は、まさにその思いやりの精神を象徴していた。彼らのように、他者を気遣う行動が日本でも見られるようになれば、私たちの社会もより温かいものになるのではないだろうか。また、日本人は中国人に対してあまり良くない偏見を抱いている傾向があるが、日本人が中国人から学ぶことはたくさんある。まさに、この思いやりの精神は学ぶべきであり、それを日常に取り入れることで、日本の社会はもっと豊かで住みやすいものになるのではないかと私は考える

最後に、日中の文化交流は、登別での出来事のように両国の人々の「心」を繋ぐ架け橋として機能すべきであると私は考える。そして、その「心」の架け橋を渡ることで、私たちは偏見の壁を取り払い、お互いに学び合い、成長することができるのである。今後も、私は異なる文化の人々との交流を通じて、共に歩む未来を築いていきたいと願ってやまない。

関連文章