偏見から尊敬へ

2024-11-20 20:32:00

青山 萌


中国と聞いて皆さんはどのようなイメージを抱くだろうか。中華料理のイメージを抱く人、長い歴史のイメージを抱く人、あまり良いイメージを抱いていない人、と人により抱くイメージは様々だと思う。そんな多くのイメージを持たれている中国に対して、私はストイックな国というイメージを抱いている。それは、私の認識を変えてくれた様々な中国文化や人の中に、並々ならぬ努力の跡を感じ取ったからだ。 

私がそう思うようになった最大の理由は、とある動画に出会ったことにある。ちょうど高校を卒業し、大学入学を控えた春休みに出会ったその動画は、中国の獅子舞についてのものだった。それまで私は中国に対していいイメージを持ち合わせておらず、中国の名を聞いただけでその話題に懐疑的になってしまっていた。新型コロナウイルス感染症の拡大という状況も相まって、中国を一種の訳の分からない「怪物」のようなもの思い込んでいたのだと思う。

しかしこの動画は、その固定観念をいい意味で打ち壊してくれた。動画の中には、目標のためにひたむきに練習する人々と、驚くような芸術技巧の数々があったからだ。自分の背よりも高い棒から棒へと飛び移る、一人だけでも大変な行為を二人同時に、しかも重量のある被り物を持ちながら行う姿に深く感動したのを覚えている。しかし中国獅子舞の凄さはそれだけではなく、その演技力にも目を見張るものがあった。獅子が瞬きをしたり、しっぽを動かしたりと実際に生物として行うであろう行動を自然に行っていたのである。芸能に詳しくない私でも、この域に達するまでは相当の修練を積んだのだと思い描くことができた。

動画を投稿した人にはそんな意図など無かったと思うが、この動画を見た日から、私の中で中国は怪物のような国ではなく、超人的な努力を行う芸術の国という認識に変わった。

しかし中国文化に対する偏見は壊れたものの、当時の私の中には中国人に対する恐怖がいまだ残っていた。それを無くしてくれたのが、とあるゲーム内で出会った采さんである。そのゲームは世界中の人と交流できるのが魅力であり、私もゲーム内の交流所で采さんと出会った。中国人ということでおっかなびっくり交流する私に対し、采さんは常に優しく手助けをしてくれていた。

そのおかげで、最初は采さんが抱いていた恐怖心も、交流を続けるうち次第に消え去っていった。次いで強く感じたのは、この人も自分と同じなのだなという思いであった。中国で暮らしているからと言って、根本的な考え方が変わるわけではない。ご飯が美味しければ嬉しいし、友人の住む場所に災害があれば、国が違おうが心配する。そんな人間として大切なことを、采さんは私に強く思い起こさせてくれた。

ゲーム内でも、人生においても私の先輩だった彼女は、自分に対して非常にストイックだった。仕事をしながら大学へ通い、さらには資格の勉強をするといった、自分ができるところまでとことんやる姿勢は私の中で大きな憧れとなっている。

文化的な面での発見と、対人的な面での気づき。

そんな二つの出会いが私の中国に対する偏見を砕いてくれたからこそ、中国についてもっと知りたいと考え大学で中国語を学ぼうと思えたし、今まで表面しか見てこなかった中国という文化の根底にある努力家の側面を垣間見ることが出来たのである。

確かに現在の中国が、国際情勢における大きなポイントになっていることは否めないし、両者間で分かり合えない問題もあると思う。しかし、私たちが思ってしまっている怪物のような「中国」は存在せず、そこには必ず尊重しあえる文化があるはずだ。そんな興味深い中国の事を過去の「私」のような人々に紹介することで、中国に対する偏見を無くし、少しでも中国へのイメージが変わればいいなと思う。

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