日本の多文化教育から見た中国
鈴木 大
私の中で、中国という国はとても身近な国です。小さい頃からニュースで中国のことについてはたびたび取り上げられていたし、小学生の頃の担任の先生は三国志がすごく好きな人だったので、授業ではよく三国志の話を聞いていました。私が最も三国志の中で好きな人物は、魏の基礎を築いた曹操です。曹操は、劉備やその部下である関羽、孔明、張飛らの前に立ちふさがる冷酷で残忍な悪玉としても描かれることも多いですが、洛陽ではるかに身分の高い皇族を断罪したり、黄巾の乱で黄巾の者たちを自らの民にしてしまったりと並外れた器の大きさにはとても感心します。
また、日本で生活していると中国人に度々会うことがあります。観光地に行けば中国人の観光客に会うし、電車に乗っていると中国語で話している人を見かけます。私がまだ幼かった頃、近所に中国人の家族が引っ越してきた際には、一緒にバーベキューをして楽しんだこともありました。
私が教育学部の大学生になって、国際情勢についても小さい頃より深く考えられるようになり、学校教育や多文化教育などについて勉強するようになってからは、中国という国はただの身近な国という認識ではなくなりました。日本の学校現場には、外国にルーツを持つ学生が一定数います。このような生徒の半数近くは、中国にルーツを持っているということが統計から分かっています。彼らの抱えている問題は一人一人異なりかなり複雑です。外国にルーツを持つ生徒たちは、学校では日本語でコミュニケーションをとりますが、家に帰ると中国語を使って両親と会話をしている学生も多くいます。このような生徒の中には、日本語で言いたいことを伝えたいのに、両親が中国語しか話せないために自分の言いたいことを100%伝えられなかったり、自分が何人であるのか自分のアイデンティティがどこにあるのかなどで深く葛藤し、苦しんだりする生徒も多くいます。苦しんでいるのは生徒だけでなく、生徒の親も自分の子供が中国語を話せなくなっていることに戸惑い、我が子との意思疎通ができなくなることに不安を感じていたりします。そして、我が子の高校への進学や進級などの書類、生活を行う上で必要な手続きは日本語で書かれ、日本語で作業しなければならないものも多くあり、とても大変です。日本の教育現場では外国にルーツを持つ生徒やその保護者を支援するサポートは十分であるとは言えず、彼らを支援する人材が必要不可欠です。これらのことから私は、大学の第二言語の授業で中国語を履修することを決め、将来中国にルーツを持った生徒やその保護者と、少しでも中国語を使ったコミュニケーションができるようになるよう日々中国語の学習を続けています。中国語を上達させるためにも、一度は中国に旅行に行ってみたいなと思っています。また、中国はアジアを語るうえで欠かせない国であり、日本の重要なパートナーです。日本と立場が異なる場面も多くありますが、互いに尊重し合い相手の意見に耳を傾け続けることは非常に重要です。そのような状況で、国と国だけでなく、人同士の個人的なつながりが強くなっていくことは大事だと私は考えています。私は今後、自分が身につけた中国語を使って、中国人の方とも積極的に交流していきたいです。中国人の方と交流することで、きっと自分にはなかった考え方や新しいものの見方を育くむことができると思います。少しでも曹操のような器の大きい人間になれるよう、一つの考えに固執せずいろんな人の考えを尊重し、受け入れられるような姿勢をこれからも持ち続けたいと思います。