大切なのは心と心の対話

2024-11-20 20:40:00
下川 眞希

私には忘れられない言葉がある。題名にもなっている「大切なのは心と心の対話」という言葉だ。語学学習アプリで知り合った中国人女性が話してくれたもので、私の座右の銘になった。

この言葉が出てきたのは、彼女が中国語を教えてくれたときだった。私は語学勉強に何度も挫折していて、上達できずにいた。本場の発音を聞けば上達すると思い、レッスンを頼んでみると、彼女は快く依頼を受け入れてくれた。語学だけでなく中国の文化やニュースを教えてくれて、相談にも乗ってくれた。上達できずに悩んでいると彼女は、

「言語が話せなくても、現地に行けば心で伝わる。大切なのは心と心の対話だよ。」

と言葉をかけてくれた。日本で体験した人の温かさから出た言葉だと、彼女は教えてくれた。

日本のアニメが好きで大学進学の際、日本への留学を決意した彼女は、文化やマナーについて勉強したそうだ。しかし、実際に日本に来てみると独特のマナーが多いと感じたという。日本人は空気を読んだり、はっきりと意見を伝えなかったりするため、母国とのギャップに悩んだといい、日本人との交流では、懸命に文化を理解し、不快な思いをさせないよう努力したそうだ。私も初めて彼女と出会ったときは、直球で投げかけられる言葉に戸惑っていた。しかし、彼女と関わっていくうちに、本音を包み隠さず話してくれていることが分かった。私にとって彼女とのレッスンが、初めての異文化交流の時間だったと思う。

そして今、私は大学で中国語を履修している。本格的に中国について触れたいと思ったからだ。彼女と出会う前の私では考えられない行動だ。内気な性格の私が、多文化について学びたいと考えたり、コンクールに応募したり自分から行動することは一切なかった。彼女との出会いが、他国文化を意識するように私の考えを変えたのだ。彼女がアニメを好きじゃなかったら、彼女が母国に帰っていたら、私たちは出会っていなかった。出会えてよかったと心の底から思っている。彼女とのレッスンの時間で、私は心と心で繋がっていたと感じている。「国籍や文化、人種が違っても皆、心は同じものを持っている。」と彼女から学んだ。彼女が教えてくれた心と心の対話は、私の視野を広げ、見えるものすべてが新鮮で楽しい日々を過ごしている。

もう三年近く彼女とは連絡を取っていない。お互いにアプリを退会したからだ。今も日本で暮らしているのか、中国で元気に過ごしているのか、何も知らない。ただ、私の胸の中で日本について語る彼女の声が響いている。彼女も私と、心と心で繋がっていたと思ってくれていたら嬉しい。

関連文章