国際情勢を分析し世界に声を届ける 新時代の中国を読み解くシンポ
「新時代の中国を読み解く――中日シンクタンクシンポジウム2025in大阪」が4月25日に大阪で行われた。シンポジウムでは、ゲストや中日の学者が中国式現代化の内容と国際社会における意義をどのように理解するかについて深く話し合い、中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年という節目の年や、米トランプ政権の関税政策が世界の自由貿易体制と多国間主義に与える影響を踏まえて、中日が協力を強化して世界に安定性を与えるための新たな見解と考え方を提案した。
中国式現代化をどう理解するか
駐大阪中国総領事の薛剣氏は基調講演で次のように指摘した。現在の中国は人民に幸福をもたらし、世界のウインウインを目指す発展の道――中国式現代化の道を進んでいる。新時代の中国を読み解くには、中国式現代化を読み解く必要がある。発展と革新の観点から中国を見つめ、開放ウインウインの視点から中国を観察し、天下を思う深い懐から中国を理解しよう。
薛総領事はまた次のように述べた。新時代の中国とは短い言葉にまとめた縮図ではなく、自分で模索し、感じ取らなければならない千姿万態の全景だ。自分の目で見て体験して初めて、発展と革新を続け、開放と包摂を堅持し、天下を思う懐の深い中国を理解することができる。
衆議院議員、日中友好議員連盟副会長の海江田万里氏は、日中の友好交流は中国の前漢時代、日本の弥生時代にまでさかのぼれるが、両国が歩んできた道は必ずしも同じではないため、日中交流で最も大切なのは「和して同ぜず」「小異を残して大同につく」の理念を守ることだと述べた。
また海江田氏は、新型コロナで往来が途絶えた特殊な事情があるものの、中国を訪れたことのない国会議員の数が驚くほど多いと指摘。実際に中国に行き、中国の要人や一般人と交流してから、対中貿易など中国関連の議題を深く討論しようと呼び掛けた。また、できるだけ多くの分野でより活発な日中交流を展開してこそ、両国の平和と繁栄への王道が実現できると結んだ。
中国外文局(中国国際広報集団)の于濤副局長は、中日は隣国であり、同じくアジアと世界の重要な国であるため、真の多国間主義を実践し、開かれた地域主義を発揚し、交流と協力を強め、世界にさらなる安定性と確実性をもたらすべきだと述べた。
于副局長は次のことが大事だと指摘した。時代の大勢を把握し、中国式現代化への認識と理解を深めること。実務協力を展開して中日の共同発展を推し進めること。人的・文化交流を増やしてより深く具体的な民衆の心の通じ合いを促進すること。そして、日本の学者、メディア関係者、青年が中国を訪れ、中国式現代化の発展の成果を肌身に感じて、民衆の心の通じ合いで中日関係の安定した長期的発展を推し進め、アジアの繁栄と世界の平和的発展のために手を取り合って東方の知恵と力をささげてほしいと期待を述べた。
「トランプショック」に備える
中国式現代化を推し進める中で、中国は新たな質の生産力の発展を加速させ、制度型開放を着実に押し広げ、グリーントランスフォーメーションを推し進め、質の高い「一帯一路」共同建設を推進し続け、世界に中国の発展の成果を共有してきた。だがその一方、近頃、米国が私利私欲のために関税政策を乱発し、現行の国際貿易体系をはなはだしく破壊している。これに対し、シンポジウムに出席した中日の学者は、両国は協力を強化することによって世界の安定と繁栄に貢献すべきであるという考えで一致した。
当代中国・世界研究院の孫敬鑫副院長は、人類は歴史の重要な節目を迎えており、より責任ある考え方と行動が求められると指摘した。そして、共に話し合い、共に建設し、共に分かち合うことを守り、最大公約数を見つけて協力の空間を広げ、グローバルガバナンス体系の変革を手を取り合って推し進め、グローバルガバナンスを強化し改善すべきだと述べた。
一帯一路日本研究センター副代表の東郷和彦氏は、トランプ政権は「関税棒を振るって」国家間の対立を激化させており、その背景の下でその枠組みから脱却し、長期的視野を備えた政策がますます重要になるという考えを述べた。そして、近年中国が提起した「一帯一路」イニシアチブは質、範囲、意義の面で絶えず発展していると指摘。最初は警戒していた日本側も安倍晋三首相在任期で新たな一歩を踏み出し、さまざまな協力を進め始めており、大変革が進む時代、この種の協力を長期的視野で推し進めるべきだと述べた。
法政大学の白鳥浩教授は、「トランプ2・0」で日中韓が協力を展開する方向性を分析し、次のように指摘した。トランプ政権の不確実性は世界、とりわけ発展途上国や「グローバルサウス」の国々に大きな影響をもたらす。日本は中国と道を同じくし、発展途上国の発展を支援するなどして、トランプ政権が世界経済に与える負の影響を食い止めるべきだ。それとともに、日中韓が守る「自由貿易主義」を世界規模で提唱し続け、世界の発展に貢献する必要がある。
東洋学園大学客員教授の朱建栄氏は、「一帯一路」共同建設の枠組みの下で東南アジア諸国にインフラを整備した中国―ラオス鉄道などのプロジェクトを例に挙げ、「一帯一路」イニシアチブが世界各国の共同発展にもたらすプラスの効果を分析した。そして次のように指摘した。「トランプ2・0」の一連の言動は米国の一国主義と覇権維持の本質をあぶり出し、国際秩序と世界経済を大混乱に陥れた。アジア各国は手を取り合って地域の平和と安定を守るべきだ。今はまさに各国が共に「地域運命共同体」の理念を理解し、堅持するときだ。
科学ジャーナリストの倉澤治雄氏は詳細なデータからAI時代の中国科学技術イノベーションの最新事情を紹介した。中国は科学技術の発展で効率的な意思決定、潤沢な資金、豊富な人材などの長所が備わっていて、目を見張るような多くの成果を挙げていると指摘。日中がさらに手を取り合ってそれぞれの長所を取り入れ短所を補い合うことができれば、世界にさらなる貢献を果たせるだろうと語った。
中央大学名誉教授、元総長・学長の酒井正三郎氏は次のように指摘した。世界経済の発展の歴史を振り返ると、米国がグローバル市場の開放と国際分業という大きな枠組みの中で最大の受益者だった。だが一方で、長年にわたる金融業などへの過度な経済発展戦略や、企業と消費者自身の選択によって米国の製造業は衰退した。そしてトランプ政権はその理由を「他国に略奪された」結果だとし、関税で貿易赤字を解消し、中国など他国・地域の製造業の能力を削ろうと考えている。これはトランプ政権が現代の世界経済に対する最も基本的な理解を欠いていることを示している。
歴史を忘れず未来をつくる
今年は中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年に当たる。前事を忘れざるは後事の師なり。出席した多くの学者が、日本は戦争の教訓を真に踏まえ、平和と繁栄のアジアを構築するために着実な歩みを踏み出さなければならないと強調した。
村山首相談話を継承し発展させる会の藤田高景理事長は講演で村山談話の歴史的意義を振り返り、次のように指摘した。日本の一部の保守・右翼勢力はこの歴史の反省を「自虐史観」と非難しており、この種の認知の誤りは厳しくたださなければならない。日本がアジアと中国に何をし、過去の誤った道と決別できたのかと謙虚に反省することで、日本の名誉を真に守れる。
藤田氏は、アジアの平和と繁栄の未来を構築するため、日中の平和友好関係を深めることが唯一の正しい選択だと強調し、日本が再び戦争という誤った道を進まないよう平和の構築に尽力すべきだと述べた。
駐大阪中国総領事館の方煒副総領事は総括で次のように指摘した。中国を読み解くことは大きなテーマであり、歴史と発展の視座を備えるべきだ。歴史的視点を持つことで、今日の中国の発展の成果、中国が終始平和的発展の道を歩み、人類運命共同体の構築を提唱しているという戦略的選択をより詳しく読み解ける。発展的視点を持つことで固定観念を打ち破り、色眼鏡を外し、中国が遂げた新しい変化と発展、国際社会における新しい役割と貢献を見ることができ、真実かつ立体的で全面的な中国像を知ることができる。
シンポジウムでは、中国外文局アジア太平洋広報センター、当代中国・世界研究院、一帯一路日本研究センターが国・地域別研究協力に関する基本合意書を締結した。継続的な協力メカニズムを構築することで、日本国民と国際社会が中国式現代化を知るためにさらに多角的な視点とアプローチを提供するのが狙いだ。
当シンポジウムは駐大阪中国総領事館、中国外文局アジア太平洋広報センター、当代中国・世界研究院が主催し、中国国際図書貿易集団有限公司、一帯一路日本研究センターが協力した。司会は中国外文局アジア太平洋広報センターの林崇珍副総編集長が行った。中日の学者、友好人士、学生、メディア関係者ら約130人が出席した。
人民中国インターネット版