私の見たもの
2025-11-17 13:45:00
高井彩良
「如果不知道要怎么活下去,那就为了我而活下去吧。(生きる意味が分からなければ私のために生きなさい。)」これは私の好きな中国の小説、「天官賜福」の主人公のセリフである。天官賜福は、架空の古代中国を舞台とした壮大なファンタジー物語である。仙楽国の元太子である主人公・謝憐は若くして飛昇し神官となるも、国を救うためにしたことが禁忌に触れ、二度も天界から追放されてしまう。八百年後三度目の飛昇を果たした謝憐は人間界で功徳を積む過程で謎の少年・三郎と出会うが、実は彼の正体は鬼界を統べる絶境鬼王・花城だった。この作品は、謝憐と、謝憐を八百年間一途に想い続けてきた花城が様々な冒険や困難を通じて絆を深めていく姿を描いている。中国ではアニメ化、実写ドラマ化されており、日本でも日本語翻訳版小説が出版され日本語吹き替え版アニメが放送された。私は偶然YouTubeでこのアニメの前述のセリフのシーンを見て心を奪われた。そして天官賜福のアニメと日本語版小説を読み、謝憐と花城と絆に感動し、他の中国の作品にも興味を持ったのである。
この作品を読む中で私は、国が違っても素敵だと思うものは同じであるのだと気づいた。私の中で外国人というと、私たちとは異なる文化や慣習の中で生きてきて、物事に対する感じ方も全く異なる人々というイメージがあった。そのため分かりあうことは難しく、多文化共生が推進されている現代でも日本人と外国人の間でのトラブルはなくならないのだと思っていた。しかし天官賜福を読む中で、私と同様にこの作品に感動し夢中になっている人が、海を渡った先の中国にもいることを感じた。生きてきた国や文化や違っても、素敵なものを素敵だと思い、美しいものを美しいと思う心は同じなのである。私が自分とは全く異なると思っていた人々は、私と大きく違わない一人一人の人間なのである。
私は天官賜福読んでこのような考えを持つことができたが、以前は中国人に対して良いイメージを持っていなかった。私の家の近所には、お母さんが中国人である一家が住んでいた。直接話したことはなかったが、その家の前にごみが散らかっていたり、その家の子どもの鳴き声とお母さんの怒鳴り声がしばしば聞こえたりしていたので、私の家族はその一家に対してあまり良いイメージを持っていなかった。私の親はその一家の話になると、「まあ、あの家のお母さんは中国人だからね。」とよく言っていた。他に中国人と関わった経験がなかった私は、自然と中国人はそのお母さんのような人ばかりなのだと思っていた。また、テレビなどでもマナーの悪い中国人観光客が話題になることもしばしばあるため、私は中国人に対して良いイメージを持っていなかった。
しかし学校などで多文化共生について学ぶ中で、一人の悪いイメージのせいで全体が悪く思われることは悲しいと思うようになった。私自身の中国人に対する悪いイメージはたった一人の人からくるもので、私は中国人については何も知らないということに気づくことができたのである。
私の所属する大学の同じ学科には中国から来た留学生が一人いる。私は第二外国語として中国語を学習しているため、彼に中国語の分からないことを聞くことがあるが、彼はいつも丁寧に教えてくれる。私が彼を「中国人」として意識することはほとんどない。彼は私の大切な友人のうちの一人なのである。
これからも私はいろいろな背景を持つ人々と出会うだろう。時には人との関わりの中で不快な感情を持つこともあるかもしれない。しかし私は出会う人をあるグループの一員としてではなく、一人の個人として見たい。人は一人一人育ってきた環境も文化も慣習も違うけれど、みんな同じ人間であるということには変わりない。私は自分の見たものを信じたい。それが多文化共生への第一歩であると考える。
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