空の上で出会う『素顔の中国』

2025-11-17 14:01:00

山本来未

 

ー「你好、迎登机。」

私は日々中国にフライトする客室乗務員として勤務しています。飛行機は単なる移動空間ではなく、ご搭乗してくださる人の数だけ好奇心や感動が詰まった特別な空間です。日中の架け橋として毎日乗務する私が空の上で出会う『素顔の中国』についてお教えします。

客室乗務員になるまで一度も訪れたことがない中国は、わたしにとって「爆買いをする人々」というイメージが強くあり、彼らの買い物に対する熱意に好奇心を抱いていました。

搭乗口から機内へと続く通路は、いつも大変賑わっています。次々と乗り込んでくるお客様は、両手いっぱいに荷物を抱えています。持ちきれないほどの免税品、そして見慣れた家電量販店のロゴが入った段ボール箱がありました。​ニュースでよく目にする「爆買い」という言葉を日々、自身の業務で目の当たりにするようになりました。お客様が嬉しそうに抱える荷物の中身は、炊飯器や温水洗浄便座です。日本製の電化製品を、まるで宝物のように大切そうに抱えている姿は、とても新鮮で興味深いものでした。なぜ、これほどまでに日本の製品が求められるのだろう。その理由は、単なる流行や物珍しさだけではないと感じました。彼らのまなざしや笑顔からは、日本の製品に対する深い信頼と、その裏にある「家族を思う気持ち」が伝わってきます。「より良い暮らしをしたい」「大切な人に喜んでほしい」という純粋な願いが、たくさんの荷物となって現れていると気づいたとき、ニュースで見た一面的な「爆買い」のイメージは、私の中で温かい思いやりに満ちたものへと変化しました。

活気が溢れる機内では中国人のお客様は、口寂しくならないようにと、様々な食べ物を持ち込んでいる姿も見受けられます。初めて見るスナック菓子や、中には珍しい果物や中国特産のソーセージなどもあり、多様な香りが漂っています。しかし、税関で問題とならないよう、日本への持ち込みが禁止されている食品についてお知らせすることも客室乗務員の仕事のひとつです。お声がけをすると、お客様は少し残念そうな顔をしながらも、すぐに素敵な笑顔を見せ、「そうか、じゃあみんなで食べよう!」そう言って、隣に座っていたご家族や、通路を挟んだ方にも食べ物を分け始めました。あっという間に、小さな機内パーティーが始まることも珍しい光景ではありません。その温かいやり取りを見るたびに、私の胸は熱くなります。

フライトを終え、お見送りを済ませた後も、心温まる出来事は続きました。空港内を歩いている私たちを見つけたお客様が、日本語で「ありがとう」と書かれたメッセージカードを差し出してくださったのです。それは、言葉や国籍を超えて通じ合った心の証であると確信しました。

ニュースやメディアが伝える「爆買い」や社会的な話題の裏側には、彼らが持つおおらかで温かい国民性が確かに存在します。喜びを分かち合い、家族や大切な人を思いやり、見知らぬ人にも惜しみない優しさを見せてくれる中国の人々の「素顔」は、私の心に深く刻まれ、客室乗務員という仕事の意義を再認識させてくれました。単にサービスを提供するだけでなく、文化の架け橋となり、人と人が心を通わせる瞬間に立ち会える素晴らしい仕事なのだということを日々体感することができています。これからも、空の旅を通じて、日本と中国を結ぶ懸け橋となれることを心から願っています。

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