私と中国を結んだ一枚のレジャーシート
2025-11-17 14:43:00
村井芙由香
ある夏の日、静岡の安倍川河川敷に人々が集まり始めた頃、私は思いがけない出会いを経験した。高校生だった私は家族と花火大会に行き、その開始を待っていた。その時、一人の青年に声を掛けられた。流暢な日本語ではなかったため戸惑っていると、彼は英語で「レジャーシートはどこで買えるか」と尋ねてきた。彼は武漢から来た中国人大学生で、来日中に花火大会があることを知り、一人で静岡まで来たという。私は英語が得意ではなかったため会話に苦労しながらも、彼を近くのスーパーまで案内した。
道中、私達はお互いについて少しずつ話をした。中国での暮らし、日本での旅、そして写真が趣味であること。それを聞いて私は驚いた。私も写真が趣味で、撮影のために花火大会に来ていたからだ。言語も国籍も異なる私達に趣味という共通点があることが新鮮で、嬉しく感じた。会話をしているうちにあっという間にスーパーに到着したが、レジャーシートは既に売り切れてしまっていた。そこで私は、予備で持っていたレジャーシートを彼に貸すことを申し出た。彼はその申し出をとても喜んでくれ、しばらくして私に飲み物を買ってきて「Thank you」と言って手渡してくれた。その笑顔には、言葉以上の感謝の気持ちがこもっているように見えた。
その後も私達は並んで花火を鑑賞し、写真を撮りながら交流を深めた。SNSのアカウントも交換し、今でも交流が続いている。会話の中で、彼は中国の風景や観光地についても教えてくれた。特に印象に残っているのは、武漢が桜の名所であるという話だ。桜が満開に咲き誇り、春になると多くの人々が花見に訪れるのだという。私は中国でも桜が見られるという驚きとともに、その美しさを想像しながら聞き入った。
しかし、彼はふと顔を曇らせ「コロナの前までは、だけど」と悲しそうに呟いた。その一言には、あの都市が世界中の注目を集めることになった出来事の影が滲んでいた。私は返す言葉を見つけられず、ただ静かにうなずくことしかできなかった。実は、この出会いがあった当時は新型コロナウイルスの流行が収束して間もない時期であった。ニュースやSNSなどで繰り返し発信される情報を受け、私は中国に対して無意識のうちに偏見を持ってしまっていた。しかし、彼が語る武漢の街並みや日常、人々の暮らしは、私が想像していたものとは全く異なっており、彼の話を聞きながら、自分がいかに偏った情報に基づいて他国を見ていたかを痛感した。
この出会いは私にとって大きな転機となった。言葉が不自由でも、思いやりや親切な行動、そして様々な共通点があれば、人は国境や文化を越えて繋がることができる。そのことを実感したからだ。同時に「もし中国語を話せたら」「もし英語が流暢だったら」と悔しさも感じた。そして、その想いは私の勉学への意欲に繋がった。私は英語の勉強により一層力を入れるようになり、大学では第二外国語として中国語を選んだ。外国語を学ぶ難しさを感じながらも、この経験を思い出す度に「また中国の誰かと心を通わせたい」という想いがモチベーションとなっている。
私の日常で偶然訪れたこの出会いによって異文化への関心が深まり、この出来事が私の視野を広げ、学びへの原動力になっているのだ。今、世界は様々な課題に直面している。言葉や文化の違いが壁となり、誤解や偏見が生まれることもある。しかし、私が出会った中国人の青年のように、一人ひとりが互いを理解しようとする姿勢を持つことで、心と心は必ず繋がると私は信じている。短い出来事ではあったが、あの日の出会いは大切な夏の思い出として私の中で今も輝き続けている。そして、いつか中国を訪れ、あの青年のおすすめの場所を自分のカメラで撮影し、人々と言葉の壁を越えて心で交流できるような自分でありたいと思っている。
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