国際言語としての中国語
2025-11-17 15:08:00
織田佳那
2012年、当時高校1年生だった私は、人生を大きく変える経験をした。中国・雲南省で開催された「漢語橋世界中高生中国語コンテスト」の世界大会に、日本代表として出場したのである。この大会には、アメリカ、南米、オセアニア、ヨーロッパ、アジア、アフリカなど、世界各地から代表が集い、その様子は中国全国にテレビ中継されるほどの大規模なもので、「中国語のオリンピック」とも称されている。
会場に到着してまず驚いたのは、さまざまな国籍の参加者たちが流暢な中国語で交流をしていたことだった。誰もが国籍に関係なく、出会う人全員に対して中国語で話しかけるのが当たり前のようになっていたのだ。国際的な場面では英語を共通語として使うのが一般的だと思っていた私にとって、その光景は衝撃的だった。これほどにも多くの国々で、たくさんの若者が中国語を学び、日常的に使っているとは夢にも思っていなかった。中国語という言語が、国際社会の中でどれほど存在感を持っているのかを、肌で感じた。
大会期間中、万里の長城や紫禁城、民族村などを巡る観光、そして民族舞踊や衣装体験などの活動を通して、多くの参加者たちと親密になっていった。気付けば、大会で競い合うライバルの意識は薄れ、互いに励まし、応援し合う仲間となっていた。閉会式の夜、参加者同士で肩を寄せ合いながら別れを惜しみ、涙を流し合ったあの時間は、今でも鮮明に覚えている。あの瞬間、私は本当に世界と繋がったのだと実感した。そして、それを可能にしたのは紛れもなく中国語の力だった。これほど大規模な国際交流を経験したのは人生で初めてで、中国語を学ぶことによって、これほど多くの国々の人との距離を縮め、心を通わせることになるとは思ってもいなかった。この大会は、まさにその名である「漢語橋」にふさわしく「言葉の架け橋」として、私の世界を大きく広げてくれたのだ。
近年の国際化の進展にともない、中国語を母語または外国語として話す人は、中国本土にとどまらず、シンガポールやマレーシアといったアジア諸国、さらには欧米諸国にも広がっている。中国語は今や、英語に並ぶ「国際言語」としての地位を築きつつある。だからこそ、中国語や中国文化を理解することで、中国人に限らず、さまざまな国籍・背景を持つ人々と深い関係を築くことが可能となり、より豊かで多層的な国際交流が実現できると私は考えている。国際社会において英語が重要であることは言うまでもないが、世界最多の話者人口を誇る中国語を理解することは、アジアのみならず、世界全体の平和と繁栄に大きく貢献するはずだ。
私は、中国語コンテストの世界大会に出場したことをきっかけに、中国語を活かした国際交流に積極的に参加するようになった。高校2年と3年時に参加した日中韓青少年歴史体験キャンプでは、三国の中高生が集い、平和記念資料館の見学や講演を通して過去と向き合い、東アジアの平和について議論を交わした。大学生になると、このキャンプにスタッフとして参加し、日本語と中国語の通訳やグループ討論の司会を務めた。そこでも中国語を通じて中国の学生やスタッフと信頼関係を築くことが出来た。
現在、私は大学院博士課程に在籍し、外国語教育の研究をしている。研究室にいる多くの中国人留学生とも相互に刺激を受けながら、専門性を高めている。その傍で、中学校と大学で英語を教えている。授業の中で学生たちが他の言語や文化にも関心を持つきっかけを提供し、とりわけ中国語や中国文化への理解を促すことには特に注力している。そうすることで、日本の学生たちの視野を広げ、国際社会で活躍するための力を養うはずだと確信している。将来、私は大学教員を目指しており、多言語・多文化教育の推進に貢献したいと考えている。そして、私自身が感じた「国際言語としての中国語」の可能性と魅力を、次世代の若者たちに伝えていきたい。
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