祖父の七回忌に捧ぐ手紙
2025-11-17 16:22:00
稲垣茜
おじいちゃん。七回忌を迎えるこの日に、あなたへ手紙を書きます。
破天荒で自由人。中国を愛し、漢方の研究と中国語に没頭していた姿を、正直少し風変わりだなあと思っていた。
あなたが亡くなったのは、私が社会人1年目の夏だったね。遺品を整理していると、古びた箱から大量のノートが出てきた。それはあなたが生涯かけて綴った中国での旅行記。上海の喧騒、農村の静けさ、山奥で少数民族の娘と口喧嘩した話――私の知らない中国がそこにはあった。
当時の私は全く中国に興味がなかった。でもノートを開いたとき、胸がざわついた。何かに導かれるように、翌月私は中国に旅に出た。
向かったのは、旅行記に何度も登場した上海。華やかな高層ビル群に圧倒されたのはもちろん、衝撃を受けたのが中国人の温かさ。帰国前日、地下鉄で空港近くのホテルへ向かっていた時、突然電車が止まった。途方に暮れる私に一人のおばさんが声をかけ、電話で誰かを呼んでくれた。改札を出ると屈強なおじさんが待っており、黒い車に乗せられる。猛スピードで街を抜ける中「私の人生ここで終わりかも」と覚悟したが、彼は本当にホテルまで送り届けてくれた。深夜のチェックインを見届け、車窓から笑顔で手を振るおじさんの姿を忘れない。――あれが、私が中国に恋した瞬間だった。
中国での衝撃を忘れられず、ふとおじいちゃんの机に「NHKラジオ中国語」の本が山積みになっていたのを思い出して、私も買って細々と中国語の勉強を始めた。
そんな折、私は一人の男性と出会った。彼は中国安徽省の農村出身で、周囲の反対を押し切って日本語を学び、日本で働く夢を叶えた努力家だ。私はそんな彼と結婚した。
そして義両親と初めての対面の日。夫が日本と関わるのを反対されていたのを知っていたし、新型コロナの影響で義両親に会わないまま入籍してしまったこともあり、上海から安徽省の田舎へ向かう新幹線の中で「嫌われていたらどうしよう」と震えが止まらなかった。駅に降り立つと、花束を持った義父が輝くような笑顔で迎えてくれて、不安が一気に吹き飛んだ。義両親はよく食べる私をすごく可愛がって、次から次へと料理を出してくれる。赤ん坊のように世話を焼かれるのが恥ずかしくもあり、でも嬉しい。
中国で結婚式を挙げたとき、「敬酒」の儀式の際に義母が大きな声で宣言してくれた。「茜のことが大好き。自分の娘のように大切にする!」その言葉を聞いて泣いてしまった。
ある年の旧正月。農村で慣れない料理を食べすぎて体調を崩した私のために、義母は消化に良い料理を必死に作り、何度も部屋を覗いては差し出してくれた。義父は心配そうに、一日中私の部屋の前に腰かけていた。
そこにあるのは真っ直ぐで惜しみない愛情だ。「娘のように大切にする」という義母の言葉は、社交辞令なんかじゃない。私が日本人であることも関係ない。
おじいちゃん。きっとあなたも、中国のこんなところが好きだったんだよね。
「誤解や偏見にとらわれず、中国の魅力を日本の人々に伝えたい」そう思うようになった私は、趣味で動画制作を始めた。今ではそれが本業になって、中国の文化を伝える活動に打ち込んでいる。
ふと、私の名「茜」は中国でも親しまれていると知った。あなたが与えてくれたこの名が不思議な縁となり、私を導いてくれている。
今、私はおじいちゃんが描いた旅の続きを、自分の足で歩いている。あのノートの続きを、今度は私が書き進めていくよ。
| チャイナネット | 北京週報 | 中国画報 | 人民網日本語版 | 新華網日本語版 | 中国国際放送局 |
| 駐日本中国大使館 | 日中友好協会 | 東方書店 | 全国翻訳専門資格レベル試験ネット | ||
| CCTV大富 | Searchina | 大連中日文化交流協会 | 中国湖南 | 中国山東網 | 故宮博物院 |
| 東方ネット | 沪江日語 | 中日之窓 | 博看网 | 日本通 |
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号 TEL: (010)6831-3990 FAX: (010)6831-3850
京ICP備14043293号-1