和魂漢才
2025-11-17 16:26:00
樹神宇徳
「科学技術立国」と聞いてあなたはどのような国を思い浮かべるだろうか? 日本、イギリス、アメリカを思い浮かべる人々は多いだろうが、そこに「中国」を挙げる人は少ないだろう。しかし2024年の「注目度の高い論文」として引用された回数が上位10%に入る論文数を見てみると2位のアメリカの約2倍差で圧倒的1位を獲得している。かくいう私も大学でコンピュータ科学を学ぶまでは全く中国が科学技術立国であるという認識はなかった。しかし大学で専門分野を学ぶにつれて、AIなどの先端分野における中国の大きな存在感に衝撃を受けた。最新のAIや新たなデータ分析手法に関する論文の著者の大半が中国の大学や中国の研究者だったのだ。
その「知識」を「実感」に変えたのが、昨年の中国科学技術大のFuSEP Summer Research Programへの参加だった。私は蘇州高等研究院で結晶のエネルギーを推定するAIの開発を中国の博士学生と二人三脚で行った。私は研究を共に進める中で「人工神経網絡 (ニューラルネットワーク)」や「注意力機制(アテンション機構)」のような、日本人がカタカナ語でしか理解できていない先端技術の用語を自国の言葉として咀嚼する姿に圧倒された。かつて日本は「和魂洋才」を掲げ、「原子(atom)」や「半導体(semiconductor)」などの西洋の概念を自国の言葉として新たな「言葉」を作り咀嚼していた。その新たな言葉達は「和製漢語」として中国に逆輸入され中国の発展に大きく寄与していた。しかし、いつからか日本は新たな知識を自国の言葉として咀嚼することを放棄し、他国発のカタカナ語を受動的に消費するだけになってはいないだろうか。故に私は、かつて日本が生み出した新語が大陸へ渡り近代中国の礎を築いたように、今度は中国で磨かれた最先端の知と語彙を日本語で咀嚼し、新たな概念を自国語として消化すべきであると考える。
こうした知的交流に加えて、私はFuSEP期間中に日本の文化的影響力を肌で感じる出来事も経験した。ある日、研究室の休憩中に「好きなアニメは何か?」と尋ねられた私は、『葬送のフリーレン』と答えた。すると、その場にいた友人全員がすぐに作品名を理解し、ストーリーについても語れるほど精通していた。中国語のタイトルは『葬送的芙莉蓮』といい、日本と中国で同じ作品が時を同じくして共有され、感動が国境を超えて広がっていることに強い感銘を受けた。この体験から、私は日本の文化がアニメやゲームといったソフトパワーを通じて世界中に大きな影響を与えていることを再認識し、日本の文化が言語や国境を越えて受容されていることに驚くとともに誇らしく感じた。文化とは、単なる情報ではなく、人と人との共感を生む「感情の言語」でもある。アニメを通じて自然に会話が生まれ、価値観を共有することができたのは、日本文化が単なる輸出物ではなく、国際社会の一部として根付いていることの証左だろう。
「和魂漢才」という語は平安期に生まれ、唐文化を取り入れつつ日本の精神を守ろうとした知識人の標語であった。その後、江戸期には国学と朱子学を対話させ、明治には「和魂洋才」へ転化し近代化を加速させた。私はこれまで長く続いてきた日中の知的な交流の流れの中に、自分なりの形でつなげていきたいと思っている。アニメを通じて日本の精神や価値観を発信し、日本文化が国境を越えて人々の共感を生む力を再確認した一方で、中国の歴史ある文化や社会の考え方を学ぶことの重要性にも気づかされた。特にAI分野における「人工神経網絡」や「注意力機制」など、中国語で語られる先端科学の語彙には、単なる訳語を超えた知的枠組みが宿っている。私はそれらを日本語で真摯に咀嚼し、新たな知として取り入れたい。日本文化を積極的に発信しつつ、中国の文化的背景と最先端の知を学び取ること。その双方向の姿勢こそが、日中双方の未来を切り拓く鍵であり、私はその旗印として「和魂漢才」を今一度掲げたい。
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