知らなかった壁、知ろうとした勇気
2025-11-17 16:29:00
平郡夢月
「なんで日本人なのに、そんなにフレンドリーなの?」
オーストラリア留学中、中国人の友達にそう言われたとき、私は少し驚いた。
留学先の学校で、私は4人の中国人留学生と出会った。年齢も近く、初めは一緒にランチをしたり、課題を助け合ったりして、自然と仲良くなった。日本語やアニメに興味があるという子もいて、私はすっかりうれしくなっていた。
けれど、ある日、一人の子が言った。「正直、小さい頃から、日本にはあまりいい印象がなかった。学校や家族からも、歴史のことを聞かされてきたから。」その言葉に、私は返す言葉が見つからなかった。
日本と中国の関係には、過去の戦争や領土問題など、歴史的に複雑な背景があることは知っていた。でも、それが今を生きる同世代の人との間にも、見えない壁を作っているのだと実感したのは、そのときが初めてだった。
私はその日、自分の無知を恥じた。そして、話し合いから逃げてはいけないと思った。過去のことを知らなかったでは済ませられない。けれど同時に、今の関係をどう築くかは、私たち一人ひとりの行動にかかっていると感じた。
その後、私は勇気を出して、彼女たちともっと話すようにした。日本のこと、中国のこと、お互いの文化、歴史、家族、好きな音楽、将来の夢など気づけばたくさんのことを語り合っていた。ときには意見が食い違ったり、複雑な気持ちになったりもした。しかし、そのたびに、知ろうとすることが、私たちの間の壁を少しずつ低くしていったように思う。
数ヶ月後、私たちはすっかり友達になっていた。最後の授業の日、一人が私に言った。「あなたと出会って、日本人に対するイメージが変わった。たぶん、私も偏見を持っていたと思う。」その言葉を聞いたとき、私は心からうれしかった。そして、自分の小さな一歩が、誰かとの間の壁を低くするきっかけになれたのかもしれないと思えた。
今、私は中国語を少しずつ勉強している。言葉は相手を知るための橋だと感じるからだ。発音は難しく、漢字も日本とは少し違って戸惑うこともある。でも、中国人の友人や他の友達との思い出が、私に前に進む力をくれる。
日中関係は、政治家や外交官だけがつくるものではない。私たち若い世代が、偏見や無関心を乗り越え、対話を重ねていくことで築かれる未来もあるはずだ。文化の違いを乗り越え、互いを理解しようとする小さな勇気が、何よりも大切なのだと私は信じている。
私にとって中国は、知るべき国から知りたい国へと変わった。そしてこれからも私は、壁を恐れず、橋をかけていける人でありたいと思う。日本を出て、違う文化の中で暮らすことで、私は自分らしくいることと相手と違うことのバランスを考えるようになった。たとえ考え方が違っても、相手を否定せず、まずは受け止めること。その上で、自分の思いも伝えること。それが本当の意味で対話なのだと、私は実感した。自分と異なる価値観に出会うたびに、人とのつながりはわかり合えない前提から始まるのかもしれない、と思うようになった。だからこそ、あきらめずに話し合い続ける姿勢こそが、未来をつくる力になるのだと信じている。
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