想像力の先にあるやさしい世界

2025-11-17 16:40:00

小川智也

 

自分のすぐ隣にいる人の多様性を、本当に受けとめることができるのか。想像力を働かせることができるのか。他人の立場で物事を考えるのは、決して簡単ではない。少しの想像力では補いきれないほど、その人の背景や気持ちは複雑だ。多くの人が、自分のやさしさを過信している。けれども、本当に誰かの立場に立って思いやることが、どれほど難しいことか。

「わかった気になる」のではなく、「わかろうとすること」から始めてほしい。それが、すぐそばの誰かであっても、海の向こうの中国の人であっても。

――誰かにだけやさしい世界など、ありえない。日本人にも、中国人にも、すべての人にとって、やさしい世界であってほしい。

そう願う私は、20257月、1年間の北京大学への留学を終えた。留学前、中国渡航も留学経験もなかった私。中国語学習歴はわずか1年半。最初は言葉が通じず、友人や先生、ルームメイトに支えられる日々だった。けれども1か月が過ぎるころには、中国の人々の温かさに心を動かされ、日本語学科の授業に積極的に参加し、多くの交流を重ねるようになった。

さらに、国際交流基金が主催する「中国ふれあいの場事業」に参加し、オンライン交流を経て桂林で現地の大学生と4日間を共に過ごした。北京という大都市の学生だけでなく、地方の学生とも心を通わせた経験は、「中国をわかった気になる」のではなく、「わかろうとすること」の大切さを私に深く刻み込んだ。

やがて、「日中学生の相互理解の場を創出する」という理念に惹かれ、帰国後も活動を続けられると考え、「日中学生交流団体freebird関西支部」の役員となった。毎週の会議を重ねるうちに、オフラインの交流こそが真の相互理解につながると確信し、北京大学で日中交流イベントを実現したいと強く願うようになった。

そして今年2月、日本語学科の中国人教授との信頼関係をきっかけに、「北京大学日本語学科」と「freebird関西支部」の協賛イベント企画を提案。教授からは快諾と協賛金の支援をいただけた。参加者募集、クイズ作成、カルタの手配。準備を一つずつ積み重ね、2025418日、日本の伝統的な遊びをテーマに総勢50人が集う日中交流イベントを北京大学で開催することができた。この活動報告は現在、北京大学日本語学科の公式WeChatアカウントに「在游中探索与成」というタイトルで掲載されている。

多くの企画は、自由な発想から生まれる。しかし実現の段階になると「できない理由」が見つかり、諦めてしまうことも多い。それでも「日中相互理解の場をつくりたい」という強い意志があれば必ず形にできる。今回の活動も、私自身の揺るがぬ想いがあったからこそ実現できたのだ。

「日本と中国、すべての人が多様性のままに認め合い、大切にされる社会。それが、私の目指すゴールである。」
私は今年3月、北京の日本大使館で開かれた「日中友好成人式」で新成人代表として鏡開きを行い、その後のスピーチで、この言葉を述べた。

しかし帰国後、家族や友人から最初にかけられたのは「中国は安全だったか?」という不信感に基づく質問ばかりだった。そのたびに私は答える。
「中国は、困難に直面した時、必ず手を差し伸べ、助けてくれる人情あふれる場所です。やさしい心を持った人々が懸命に生き、助け合いながら暮らしています」と。

確かにメディアは、日中双方に不信や誤解を植えつける。しかし私は中国での経験を通じて、それらに左右されない確かな視点を得た。

漠然としていた将来像も、中国留学を経てはっきりと形になった。日本と中国をつなぎ、異文化理解を促進する架け橋となる日本語教師として歩んでいくこと。そして私の行動が少しでも人々の意識を変え、隣国への想像力を十分に働かせられる「やさしい世界」につながること。

――それこそが、私が日中交流にかける揺るぎない想いである。

 

 

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