江西省北東部、上饒市に位置する県は、安徽省、浙江省と省境を接する静かな山水に抱かれており、「最も美しい郷村」と称賛される。中国古典絵画のような美しい風景で広く知られ、春には一面の菜の花畑が黄金のじゅうたんを敷き詰め、秋には紅葉した山々と農家の「」が織りなすカラフルな色彩が人々を魅了する。だが、婺源の真の魅力は、写真に収められる風景の向こうにある。ここはかつて、深遠な歴史を持つ「古徽州」文化圏の重要な一部であった。山々に囲まれ耕地が少ない環境が、天下に名をはせた商人集団「徽商」を生み出した。彼らが故郷へ持ち帰った富によって、精緻な徽派建築の邸宅が築かれ、今も白壁と黒瓦の民家が渓谷や川辺に建ち、百年を超えて受け継がれてきた暮らしのリズムを守り続けている。