丸川知雄氏:2018年政府活動報告を読んで

2020-02-21 12:24:59

東京大学社会科学研究所教授 丸川知雄

 日本の新聞は今回の報告のなかで、これまでの政府活動報告に入っていた「資源配分で市場に決定的な役割を果たさせる」(使市场在资源配置中起决定性作用)という文言が入っていないことに注目し、経済改革への動きが鈍るのではないかと心配している。私は中国政府の市場経済化への決心が揺らいでいないことを望むが、ただ、政府のレポートのなかでの表現を多少変更することが実際の市場経済化の流れにどれほど影響を与えるのかは疑問である。中国共産党・政府が政策を表現する文言をどのように変えても、中国の市場経済化はゆっくりと、しかし着実に前進していくであろう。

 今回の政府活動報告のなかにも実は市場経済化を加速させる具体策が多く含まれていることに私は着目している。例えば「“放管服”改革」。企業の設立に関わる手続きをなるべく簡素にして、短時間で事業が始められるように規制を改革しようとしている。また、企業に対する税などの負担を軽減する方策が示されている。イノベーションを促進するために、ベンチャー企業の創業を奨励する方策も示されている。こうした具体策が着実に実行されれば民営企業がますます発展し、国有企業の株式会社への転換ともあいまって経済に占める民間部門の比重が高まって行くであろう。

 報告では「中国は揺らぐことなく経済のグローバリゼーションを推進し、自由貿易を擁護する」としている。これは非常に重要なことである。保護主義に転換しつつあるアメリカは、一方的な関税引き上げを実施しようとしているが、それに対して中国は報復したりせず、貿易戦争を起こさないようにしてほしい。私が世界の144の国・地域について調べたところ、うち101の国・地域では中国との貿易額の方がアメリカとの貿易額よりも多く、そのなかには日本も含まれている。中国が「中国第一」を標榜したりせず、市場の開放をいっそう進めていくことを世界が望んでいる。

 

人民中国インターネット版 201838 

 

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