中米貿易摩擦が続く中の中国と世界

2020-02-21 12:23:51

王朝陽=文

アメリカは現地時間の76日早朝、中国に対して中国の818品目、金額にして340億ドル規模の製品に25%の関税を上乗せすると発表した。対抗措置として、中国は現地時間の76日正午12時から、アメリカの545品目、340億ドル規模の製品に25%の関税を上乗せして報復した。これを受けて、10日、アメリカがさらに2000億ドル規模の中国製品に10%の関税を上乗せするリストを発表し、手続きに入り、2ヵ月後実施することを明らかにした。これに対し、中国外交部の華春瑩報道官は11日の定例記者会見で、「必要な対抗措置を取り、中国の正当で合法的な権益を守る」と回答した。

中国とアメリカの貿易摩擦が激しくなっている中、世界市場に不安が広がっている。貿易摩擦に対する中国の立場と世界が取るべき措置を巡って、中国国際経済交流センターの副理事長であり、元商務部副部長の魏建国氏は本誌のインタビューに応じた。

中国は貿易摩擦による世界への影響を望んではいない

歴史上、貿易保護主義は悲惨な結果を招いたことがある。1930年、アメリカのハーバートフーヴァー大統領は関税を引き上げる「スムートホーリー法」に調印した。これを皮切りに、各国は相次いで関税を引き上げ、世界経済の回復を20年遅らせ、同法は第二次世界大戦の引き金の一つとなった。

世界恐慌の中、列に並んで食料配給を待つ人々

 

過去の経験を振り返り、魏建国氏は、「現在世界経済は改善の兆しが見え始めたが、世界の二大経済大国である中国とアメリカの貿易摩擦は、経済回復のペースを遅らせ、世界貿易保護主義もこれを機に台頭するかもしれない。

中国は、世界経済が大きな損失を被ることを望んでいない。そのため、アメリカが貿易摩擦を引き起こすまで、中国は抑制的な立場を取っていた。最後の最後までトランプ政権が態度を改め、引き返すことを望んでいたが、実際に貿易摩擦が起こってしまった。しかし中国もそれを恐れてはいない。私たちは自由貿易を堅持しているが、アメリカ政府は単独主義で走り、世界の貿易ルールを壊しているからだ」と述べた。

中国は自由貿易のガーディアン

魏建国氏によると、今回の中米貿易摩擦を通して、中国は多国主義、世界貿易の自由化、投資の利便化を堅持する提唱者とガーディアンであり、アメリカは自由貿易の先導者から貿易保護主義者へと後退していることが、世界の人々の目に明らかになった。

 

第一回中国国際輸入博覧会は上海市青浦区に位置する国家会展中心で開催される予定

 

多国間貿易と経済グローバル化の維持に取り組んでいる中国は、自身の発展成果を世界と分かち合っている。その最も典型的な例として、今年11月に開催される予定の第一回中国国際輸入博覧会が挙げられる。本展覧会は中国の建国以来、最大規模を有し、面積は広州の中国輸出入商品交易会をはるかに超える。

魏建国氏は「現在既に160余りの国が展覧会に申し込んでいる。ブースの数が足りず、多くの海外の友人から展示の面積をもっと増やせないかという要望を受けた。東南アジアやアフリカの一部の国は、今回のチャンスを借りて、果物やコーヒー豆などの農産物の対中輸出を増やし、先進国も高級品の中国における市場をさらに拡大させたい考えだ。また、中東地域のエネルギー大国は中国に向けて液化天然ガスを輸出すると提案した。これは中国の輸入博覧会が、自分たちの方法で、自らの発展成果を世界とより多く分かち合いたいことを裏付けた」と明らかにした。

 

今年5月に開催された中日韓三カ国首脳会議で、三カ国は地域の一体化のプロセスを推し進め、

中日韓FTARCEPの交渉を推進することについて言及した

 

輸入貿易をさらに拡大し、中国市場の開放を通じて中国の対外開放レベルを高める以外に、中米の貿易摩擦が全世界に広く影響しないよう、中国は地域協力を引き続き強化し、地域自由貿易協定の交渉を推し進める。

今注目を浴びている中日韓自由貿易協定(FTA)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉の進捗について、魏建国氏は「中日韓FTAの交渉は前向きに進められている。順調にいけば、年内にも合意に達する可能性がある。RCEPの関係国も今年末、或いは来年初めに、大筋合意に至るかもしれない」と明らかにした。

自由貿易を守る国々が協力し合うべき

交渉の進捗が加速していることは、関係国のトランプ政権のますます激しくなっている単独主義、孤立主義、貿易保護策への懸念をある程度反映している。61日から、アメリカは欧州連合(EUカナダメキシコに対して鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%10%の関税を課すと発表した。これを受けて、アメリカの同盟国は不快感を示した。710日に発表された日本の最新の世論調査によると、80%以上の人がアメリカの保護主義的な通商政策が日本経済に影響を与えると答えた。

魏建国氏によると、日本はアメリカの貿易保護主義に対して、二つの懸念点があるという。一つは自動車産業だ。アメリカが20%から25%の追加関税を課すという通常の措置を取れば、日本の自動車産業は巨大な損失を被り、170万人近くが職を失うことになる。この追加関税の政策が3年以上続くと、日本の自動車産業は立ち行かなくなる。二つ目は農産物だ。アメリカは日本の農産物市場の開放拡大に力を入れており、米などを対象とする農業保護策がアメリカに動かされたら、日本の農業にとって深刻な打撃となる。

 

20171111日中国の習近平国家主席はベトナムのダナンで日本の安倍首相と会談。

両首脳は「一帯一路」の枠組み内における協力の早期実現を推進することで一致

 

一方、魏建国氏は「日本は既に、アメリカが自身の利益を守るため、同盟国関係を見捨てる現実を認識した可能性があり、トランプ政権の貿易政策に対して、事前の準備に取り組み始めた。具体的な行動としては、一つ目に、『一帯一路』イニシアチブに対する姿勢は以前のためらいや様子見から、前向きな姿勢に変わっている。二つ目は、今年第1四半期において、中日の貿易投資が明らかに増加した。両国の輸出入貿易額は757億ドルに達し、同期比10.1%増加した。中国で新設された日系企業は153社で、同期比43%増加した。企業の投資分野も以前の日用品や機械製品から新エネルギー、新材料などのハイテク産業や養老、介護などのサービス業へと変わっている。上述のデータや変化から、日本が中国の発展を見込んで、中国と協力したいという意向が見受けられる」と指摘した。

トランプ政権が引き起こした貿易摩擦は、かえって自由貿易を支持する国々が協力を強化するきっかけとなった。魏建国氏は「中国は影響を受ける各国と手を携えるべきだ。共通の目標は中国が他の国々と協力する基盤と前提になる」と提案した。

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