中日は実務協力を進めよう

2020-02-21 12:21:15

 

中国社会科学院日本研究所所長  楊伯江=文

「中日関係は新たな歴史のスタート地点に立っている」――。6月のG20大阪サミット期間中、中日両国の首脳会談で、習近平国家主席はこう語った。会談で両首脳は、新たな時代における中日関係について、10項目の共通認識に達した。また習主席は、来年春の日本への公式訪問の招請を受けた。正常な軌道に戻った中日関係は、どうすれば穏やかに遠くまで進み、持続的な発展を実現できるだろうか。

 

関係改善の根本的な原動力

このところ中日関係が改善された根本的な原動力は、一言でいえば、「利益による駆動、政策による先導」だ。その背後にある最も本質的な理由は、両国それぞれの経済・社会が発展する中で、協力し合う必要性が絶えず生じ続けていることだ、と筆者は考えている。

米国のトランプ大統領による衝撃を、最近の中日関係改善の最大の要因とする分析もあるようだが、筆者はそうでないと考える。実際、トランプ氏が大統領に就任する少なくとも2年前から、中日の間には、すでに正常な軌道に戻ろうとする動きが始まっていた。2016年にトランプ氏が大統領にならなかったとしても、中日関係の改善がいずれ実現されることでは歴史の必然だ。

もう一つ重要な背景がある。それは、地域と国際的な活動において、中国と日本の役割が高まっていることだ。中国が提起した「一帯一路」は、パワーバランスの調整や地域の枠組みの再構築において、重要な役割を果たし、中国という要素は、あたかも「独立変数」のようになった。

一方、日本は経済成長は鈍化しているものの、総合戦略的な活躍度は向上しており、「駒」から「指し手」になろうと努力している。それは、日本主導の新しい環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や、世界最大規模の自由貿易区協定、日欧経済連携協定(EPA)の発効からもうかがい知れる。

 では、今回の中日関係の改善と協力深化はどこまで進めるだろうか。中日が関係を改善し協力を深めることは、双方にとっても重要で大きな可能性を持つと見るべきだ。しかし、このようなビジョンの実現には、これまで以上に大切に扱い、両国政府が戦略と政策の両面で条件をつくりあげなければならない。

 

中日関係 発展の潜在力

 中日関係が前へと発展する大きな潜在力は、産業の大きな相互補完性にある。早くも1960年代、日本の有名な国際政治学者の高坂正堯氏は、中国は日本の本当のライバルではない、と言った。日本でよく知られている経営コンサルタントの大前研一氏も、21世紀の日本が取るべき国家戦略として、中国をクライアントとすべきで、中国だけでも「日本が一生食べていけるくらいだ」と主張していた。中国としても同じことだ。日本の省エネ技術や環境対策技術、地域協力の経験、貿易摩擦に対応した経験など、その全てに学び参考とする価値がある。

 中日関係の改善と協力の道をどこまで遠く進めるかは、意見の相違の管理・コントロールや敏感な問題の処理を適切にできるかどうかにかかっている。現在、両国間の一部の重大な問題は、根本から解決されたというわけではない。われわれは「ダチョウ症候群」(目の前の危機を直視せずにやり過ごす意味)になってはならず、現実と向き合わなければならない。明らかなことに、これらの問題で、短期的に双方とも納得できる解決策を見いだすことは難しい。こうした現実に鑑みて、われわれがまず考えるべきは、問題を適切に管理することで、部分的な対立の激化や衝突への発展を防ぐことだ。問題の適切な管理は、将来の問題解決への条件を作り出すためだ。

また、戦略的な対話を強化し、協調の範囲を拡大する必要もある。自由貿易、地域協力などの分野で中日には利益の共通点が存在するが、差異や隔たりがないわけではない。前述のように、日本の戦略面の自主性が向上しているが、この向上の方向が中国と完全に一致しているとは限らない。例えば、世界貿易機関(WTO)の改革など、一連の重要な制度改革について、日本の考え方は欧米や中国と完全に一致しているわけではない。このほか電子商取引やネット情報などの問題については、日本の立場は中国ではなく、欧米により近いだろう。これらの不一致について、中日双方はありのままを正確に把握する必要がある。

 

安定発展へ三つの行動方針

中日関係の長期にわたる安定的な発展と持続可能な発展を実現するために、われわれはどうすべきか。筆者の基本的な考え方をまとめると、現状を改善しながら新しい行動を的確に進めることだ。現状の改善については、前述したように中日双方は誠実に現実に向き合い、相違を適切に管理・コントロールし、将来、問題が適切に解決される方向に推し進めなければならない。

新しい行動をいかに的確に進めるかについては、次の三つの面から考えられる。第1に、時代の流れと文明的な視点から中日関係を位置付けし考えること。百年に一度の大変革とも言えるこの時代背景と二国間関係の問題とを結び付け、世界における中日関係と今の時代における中日関係を考察する。

第2に、学び合い、研究を深めること。例えば、日本はいかにしてジニ係数(所得などにより格差や不平等差を示す指数)を比較的低い水準に維持しているのか。過ぎ去った平成の時代において、日本の社会思潮と政治思潮にどんな変化が起きたかの問題についてなど。

第3に、実務協力を推進すること。どんなに素晴らしい位置付けやビジョンでも、実際の中身による支えがなければならない。中日関係はなおさらのことだ。実務協力の強化は緊張感を持たなければならない。例えば、中日は第三国市場での協力で、どうすれば両国の企業文化の相違を克服し、プロジェクトを着実に推進できるか。これは非常に大事なことだ。

いかにして世界の大勢を正確に把握し、時代の流れに従い、世界の平和と発展、安定を擁護するか――これは中日両国に共通する課題だ。そのために中日双方は知恵を出し合い、時代が与えた試練を乗り越えなければならない。

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