――南京大虐殺生存者と共に歩んだ弁護士の20年
今年の12月13日は第6回目の南京大虐殺犠牲者国家追悼日であり、南京出身の談臻弁護士にとっても感慨がひとしおの年だ。なぜなら、談さんが南京大虐殺の生存者である夏淑琴さんの名誉毀損訴訟の代理弁護士になってから、今年は20年目に当たるからだ。この案件は談さんの弁護士人生においてのみならず、国際社会にとっても非常に重要な意義を持っている。この裁判での勝訴は、初めて中日両国の司法が判決という法的手段を通じて南京大虐殺の史実を確認した案件であり、中国の法院(裁判所)が初めて日本の右翼を被告として審理した案件でもあるのだ。
江蘇法徳東恒弁護士事務所党委員会書記、南京市法律援助基金理事長の談臻さん(写真=本人提供)
20年に渡る被害者のための弁護活動を経て、今や還暦を過ぎる年となった談さんは、中国の司法界で広く尊敬を集める存在となっている。談さんは裁判について再度振り返り、「歴史的事実を尊重し、平和を呼びかけたい」との願いを語った。
「守りたいのは歴史の真相であり、憎しみではない」
日本の出版社・展転社は1998年、右翼学者の松村俊夫氏と東中野修道氏が書いた『「南京虐殺」への大疑問』と『「南京虐殺」の徹底検証』を出版した。著者らは本の中で夏さんなどの南京大虐殺生存者を「ニセ証言者」と中傷し、「わざと事実を捏造した」「証言は誰かによって、いつしか考え出されたもの」といった空論を展開した。
2018年12月10日、中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館にて、犠牲者の名前が刻まれた「嘆きの壁」で親族名を塗り直す夏淑琴さん(写真=新華社提供)
1937年12月13日の南京陥落後、夏さんの家族9人のうち7人が旧日本軍に殺害された。当時8歳だった夏さんは三カ所の刀傷を負ったが、4歳の妹と布団の下に身を隠し、幸いにも生き延びることができた。夏さん一家の悲惨な境遇は『ラーベ日記』と米国人牧師のジョン・マギー氏が撮影した映像フィルムにも記録されている。
2000年、中国侵略日本軍南京大虐殺遭難同胞記念館の紹介で、夏さんは江蘇法徳東恒弁護士事務所の談臻弁護士に法的サポートを正式に依頼した。談さんは夏さんの代理人となることを無報酬で引き受け、南京市玄武区法院で松村俊夫氏と東中野修道氏、展転社に対する名誉毀損訴訟を起こした。南京で行われた審理に被告人たちは出廷しなかったが、2005年4月に彼らは東京地方裁判所に対し、夏さんが中国の地方法院へ申し出た起訴事実は「存在しない」として訴訟を起こした。
2006年6月、談臻さん(右から3番目)をはじめとする中日両国の弁護団と同行し、東京地方裁判所へ応訴に行く夏淑琴さん(右から4番目)(写真=新華社提供)
2006年6月、応訴のために日本を訪れた夏さんは、談さんをはじめとする中日両国の弁護団と共に東京地方裁判所へ赴いた。さらに開廷前に反訴を起こしたのだ。2007年11月2日、中日両国の弁護士が力を合わせたことによって夏さんは1審で勝訴し、東京地方裁判所は被告らに対して原告である夏さんへ400万円の賠償を命じる判決を下した。2008年5月21日、東京高等裁判所は1審判決を支持し、さらに2009年2月5日、最高裁判所は被告らの上告を棄却し、夏さん勝訴の判決が確定した。
南京大虐殺生存者である夏さんの東京での勝訴は、夏さん自身と東中野氏などとの個人間の訴訟であるだけでなく、「歴史を認めるか、それとも否定するか」という二つの歴史観の対決でもあった。決して簡単ではなかったこの勝訴の背景には、中日両国の弁護士のたゆまぬ努力、特に長年夏さんをそばで支え続けた談弁護士の力がある。
弁護士として、談さんは法的見地からこの案件を理性的に分析し、被告人らによる夏さんへの名誉毀損の事実を裏付ける完璧な証拠を探し出す必要があった。「夏さんの幼少期は非常に悲惨なものでした。老後は穏やかで愉快に過ごせて当然なのに、日本の右翼学者たちの著書は、夏さんを再び傷つけました。我々が守りたいのは歴史の真相で、憎しみではありません。真相には国境もなければ、政治性もないのです」と、談さんは語った。
日本人弁護士たちの献身的な協力
この案件を通じて、談さんは日本社会をより理解するようになった。談さんから見ると、「日本は多元的な法治社会」であり、猛威を振るう右翼勢力もいるが、歴史を直視し、あらゆる困難をいとわず真相を守る人もたくさんいる。
夏さんの名誉毀損裁判において、「中国への日本侵略戦争における中国被害者の賠償要求の日本の弁護団」の尾山宏団長、渡辺春己氏、南典男氏など11名の日本人弁護士は無報酬で夏さんの東京における訴訟の代理人を務めた。彼らは裁判に際して、どのような細かい点でも真剣に処理し、審理が行われる中、あらゆる方面でぬかりがなかった。これらは全て談さんの心に残り、この協力もまた中日弁護士のお互いの理解と友情を深めた。
歴史を鑑として未来に目を向ける
数回渡日するなか、日本人弁護士の応援のほか、夏さんは日本銘心会の松岡環会長など、中日友好に貢献する多くの日本人と知り合うこともできた。日本の民間友好団体も夏さんを様々なイベントに招き、その中で中国を侵略した日本軍兵士の子孫が夏さんの前で頭を下げたり、土下座をしたりして謝罪したことすらあった。
2018年8月11日、「南京大虐殺の歴史真相と記憶」をテーマとした交流会で、中国を侵略した日本軍兵士だった父親の代わりに、夏さんほか南京大虐殺の生存者に謝り、中日平和友好の重要な意義を呼びかける福井県鯖江市市議会の山本敏雄議員(右から1番目)(写真=南京日報提供)
現在、存命の南京大虐殺生存者は78人に過ぎない。談さんは「12・13国家追悼日」を人類の記憶文化というレベルに高め、フォーラムを開き、国際交流を定期的に行い、より多くの人に参加してもらうべきだとしている。「中日間には悠久の民間友好の基礎があるため、『歴史を鑑として未来に目を向ける』ということは中日両国の人々の共通認識になると信じています」と談さんは語った。 (記者・金知暁 /北京週報 )
「北京週報日本語版」2019年12月13日
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