薛剣 中国駐大阪総領事——障害打破しチャネル構築 関係改善にSNSを活用
于文=聞き手
百年に一度とも言われる感染症まん延と変貌する世界情勢が絡み合う中、中日関係も深刻な影響を受け、国民感情の変化が心配される。中日国交正常化50周年を迎えるに当たり、コミュニケーションの壁を打ち破り、直接的なチャネルを構築し、両国関係を発展させるための方策を、先日新たに中国駐大阪総領事館に着任した薛剣総領事に聞いた。
――新型コロナウイルスの流行が続く特殊な時期に中国駐大阪総領事に就任され、何か特別な思いなどはありますか。
薛剣 着任以降、管轄内の地方自治体や民間の友好団体、経済界などさまざまな方にお会いしましたが、皆さん一様に中国との関係を重視し、両国関係の好転を願い、二国間交流と協力の発展に積極的な姿勢であると感じました。
私の着任後に総領事館が行ったイベントのほとんどは、オンラインで開催されており、最近は、神戸の王子動物園にいるジャイアントパンダ「タンタン(旦旦)」の誕生日関連のイベントを行いました。今年26歳の「ご長寿パンダ」のタンタンは、すでに21年も神戸に住んでいるため、地元の人々にとても愛されています。そこでファンの皆さんに向け、当館の若い職員が心を込めてデザインしたTシャツやトートバッグなどタンタンのオリジナルグッズのオンライン抽選会を行ったところ、2000人以上の応募がありました。私たちの思いと創造性を通じて日本の方々へ癒やしと真心をお送りすることができるのは、感染症流行という時期には何よりうれしいことです。
しかし同時に、中日関係が直面する複雑な状況も切に感じています。一部の政治勢力はいわゆる「中国脅威論」をあおりたて、矛盾や相違点を誇張し、中国理解の誤導をしています。さらに、中国の内政に干渉さえしようとしています。これには実に心が痛みます。
――日本の人々の中国に対する理解と態度について言及されましたが、「北京―東京フォーラム」の開催前に毎年行われる世論調査によると、この数年間における両国民の相手国に対する好感度には大きな差が現れてきています。この原因についてはどう思われますか。
薛 これは非常に複雑なのですが、相手側に対する客観的現実の理解に問題があることが、主な要因だと思います。
近年、中国から多くの旅行者や留学生、ビジネスマンが来日しているのに対し、中国に行く日本人の数は大幅に減少しています。日本では中国の発展と変化を自ら見たり体験したりする機会がほとんどなく、日本のメディアで見る中国は多くの場合、実情とはかけ離れています。
この難題を解決するには、多方面において共に努力することが必要です。大切なのは、日本人の中国理解を妨げる情報の壁を打ち破り、中国情報の「直行便」を打ち立て、日本人がより直接かつ便利に中国と接することで、真実を伝えるシステムを作ることでしょう。年1回開催される「北京―東京フォーラム」は、近年において最大かつ最高レベルのパブリック・ ディプロマシーのプラットフォームであり、人々の注目を集めており、この20年近くの中日関係の変化と発展の過程において、非常に積極的な役割を果たしてきました。このプラットフォームが両国の対話交流を促進し、相互理解と信頼を高めるためにさらに活用されることに期待します。
また、中国を理解するにはまず中国の執政政党である中国共産党を理解しなければなりません。最近中国で出版された重要文献の『中国共産党の歴史的使命と行動の価値』を日本の皆さんに特に推薦します。この文献は現在の中国と中国共産党を理解するための必読書で、読めば中国共産党が人民に誠心誠意奉仕し、理想の実現に向け不断の努力をし、強力な指導力と執政力を持ち、常に旺盛な生命力と活力を持ち、人類の平和と発展に貢献する政党であるということが理解できるでしょう。日本の皆さんが聞いたことがないであろう事実も多く書かれていますので、熟読すれば、中国共産党を正しく理解することができ、中国の人々がなぜ共産党のリーダーシップを固く信頼しているかが分かり、中国の成功の秘訣を見いだすことができるでしょう。
――コミュニケーションの壁を破って日本の人々と直接つながるために、領事館も人民中国もSNSの力に注目していますが、どのような形でSNSを利用していけばいいと思いますか。
薛 人民中国は10年前からツイッターのアカウントを開設していますよね。生き生きとして面白く、中国の一般庶民の日常を映し出すツイートを、私もいつもリツイートしています。より良い生活への憧れは国を問いません。中国人の生活に対する愛情や分かち合いは徐々に日本のネットユーザーの共感を引き起こし、互いの気持ちを近づけています。例えば、人民中国の花饃(飾りマントウ)のツイートではウサギの形をしたマントウがとてもかわいく、多くのネットユーザーがいいねやリツイートをしていました。この反応を見て日本の人々は中国の点心が好きなのだということを知り、「粉もの」関連の交流を行えば反響が期待できると考えました。そこで当館は陝西省の無形文化遺産の花饃と香川のうどんの文化交流イベントを行いました。当館の公式ツイッターと人民中国のツイッターの連動により、より多くのかわいい花饃を見せることができ、日本の人々のイベント参加の窓口を広げられたと思っています。
王毅国務委員はかつて、情報化とスマート化の新時代を背景に、メディアの大切な役割と特別な責任について言及しました。もちろん人民中国を含む全てのメディアが、この責任の実践者となります。そのためには未来を見据え、両国民の「行き詰まり」を打開し、本来あるべき姿に戻す方策を考える必要があると思います。中国の実情を「分かりやすく善意に満ちた」言葉で充分に表現するとともに、客観的かつ理性的に相手国に接するためには、より友好的な態度で違いを超え、最大公約数を求め、両国民がより互いを知って理解する手助けをし、中日関係の改善と発展のためのプラスエネルギーをより集める必要があります。
――東京2020オリンピックが終わり、来年は北京で冬季五輪の聖火がともると同時に、中日国交正常化50周年という重要な節目も迎えます。駐大阪総領事として、これをきっかけにどのような形で業務を展開し、中日関係を前進させるべきだと思いますか。
薛 今年のオリンピックのスローガンには、「ともに」、つまりより固く団結しようという言葉が加わりました。「団結」と「分断」は相反する言葉ですから、これは百年に一度の変動期と世紀のパンデミックにさらされた困難の中、スポーツを介して全世界・全人類に団結を守り、分断に断固反対しようという呼び掛けであったと思います。
オリンピック開催を相互に支援することは、中日両国の指導者が得た重要なコンセンサスです。北京冬季オリンピック・パラリンピックの準備が順調に進む今、中国は質素かつ安全で素晴らしいオリンピックの実現に全力を上げており、感染症流行という暗雲の下、世界により多くの励ましと感動を与えるでしょう。日本の選手の方々にも万全のコンディションで試合に臨んでいただくことに期待しています。
新たに中国駐大阪総領事として赴任し、私は二つの重責を両肩に負っていると思います。一つは管轄内の華僑華人の皆さんを支えることで、祖国からの関心と愛をその都度もたらすという責任であり、もう一つは最大限の努力をもって中日友好交流と相互に有益な協力を推進するという責任です。新型コロナウイルスの流行が依然続く中で、対外的な交流は大きな制限を受けています。私たちは多様なオンラインイベントを行ったりツイッターなどのニューメディアプラットフォームを活用したりすることで、中日間の交流と協力の懸け橋として取り組んでいます。
来年は中日国交正常化50周年です。この50年来、中日関係は浮き沈みを繰り返しながらも前進し続けることで、両国と両国民に実益をもたらしたのみならず、地域と世界の平和と安定、繁栄の促進に寄与しました。この重要な時期に、大阪総領事館は管轄区域の各界と共に国交正常化当時の初心に立ち返り、長期的かつ大局的な視点を持って、中日関係発展のための正しい方向性を見つけ、共に努力していきたいと思っています。
最後に、『人民中国』を通じ読者の皆さんと管轄区域の各界の皆さんに敬意を表するとともに、皆さんとの交流を歓迎し、共に両国関係の改善と発展の促進に不断の努力をしていきたいと思います。