RCEP発効1周年顕著な経済メリット

2023-03-03 14:35:00

沈暁寧=文


広西チワン族自治区南寧市で昨年9月、第19回中国_ASEAN博覧会が開かれた。会場でも目を引いたASEANとRCEPのブランド展示エリア(新華社) 

域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効し、今年の1月1日で1周年になった。この1年、国際情勢が激動し世界経済が引き続き低迷する大きな背景の下、RCEPはメカニズムの恩恵を十分に生み出した。また、アジア各国間の経済連携を効果的に深め、アジア地域の貿易と投資の自信を高め、地域内部の産業チェーンとサプライチェーンの強靭性をさらに強化し、地域的な統一市場の構築と世界的な繁栄と発展の実現に新たな原動力を注入した。将来に向け、RCEP加盟国は潜在力を十分に発揮し、それぞれの長所を出し補完し合い、地域のバリューチェーンの深い融合を推進し、地域と世界の経済貿易の成長にさらに大きな貢献をするだろう。 


協力進め発展のチャンス共有 

RCEPは昨年1月1日、ブルネイ、カンボジア、ラオス、シンガポール、タイ、ベトナム、中国、日本、ニュージーランド、オーストラリアの10カ国で発効した。その後、韓国とマレーシア、ビルマがそれぞれ加盟した。今年1月、RCEPはインドネシアに対して発効し、15の署名国の中で発効国は14に達した。RCEPの発効以来、加盟国は多くの分野で何度も合同会議を開き、協定の実施推進を協議した。また、RCEP産業協力委員会を組織し、各国の貿易投資産業協力を推進した。 

注目すべきは、RCEPが初めて中日および日韓の間で自由貿易関係を築いたことだ。商務部(省)によると、昨年1~6月、中日日韓二国間の輸出入貿易額は、それぞれ20兆3000億円と5兆5000億円となり、前年同期比でそれぞれ106%、255%増加した。昨年1~11月の韓国と日本の実質の対中投資は、前年同期比で1221%、266%増えた。中日韓は機械自動車オプトエレクトニクス設備などの製造分野で協力を展開し、3国はニューテクノロジー、新エネルギーなどハイエンド製造業の分野でバリューチェーン協力の基礎を築いた。 

「RCEPの発効から1年、加盟国には巨大な経済効果とよりレベルの高い社会福祉をもたらした」。中国社会科学院世界経済政治研究所国際投資研究室の高凌雲主任はこう語り、次のように指摘した――▽貿易分野では、RCEP加盟国はさまざまな関税の減免措置を相次いで実施し、相互間の貿易規模の増大を促した▽投資分野では、協定は投資の促進保護円滑化自由化などの議題を導入し、全ての加盟国がネガティブリスト方式の採用を約束し、投資の魅力を高め、知的財産権の保護を強化した▽産業チェーンサプライチェーンの分野で、RCEPは従来の産業チェーンサプライチェーンの地域ネットワークを拡大しただけでなく、さらに産業チェーンサプライチェーンの安定性を増強した▽社会福祉の分野では、同等の支出であればRCEP加盟国はより自己のニーズに見合った消費財を手に入れることができ、加盟国の人々の福祉レベルを大幅に向上させた。 

昨年から北京などの都市の大型スーパーでは、東南アジアのフルーツや日韓の化粧品、オーストラリアの健康食品、ニュージーランドの牛乳などの輸入商品が種類を問わず増えると同時に価格も安くなり、人々の購買の選択肢を豊かにした。 

RCEPのルールでは、90%以上の製品が加盟国の貿易で関税ゼロを実現している。このうち最も恩恵を受けているのは食品農産物日用消費財と自動車などの高税率分野だ。 

企業は、RCEPの関税減免措置を受けようとする場合、原産地証明書を申請しなければならない。青島にあるRCEP山東企業サービスセンターでは、青島のある家庭用品会社の劉暢運営マネージャーが、ちょうど原産地証明書の手続きを行っていた。同社では年間輸出額が10億元を超え、その製品の90%がRCEP加盟国へ輸出される。RCEPの実施以降、同社が生産するキルティングパッドなど日本向けの主な輸出製品は、その関税率が38%から33%に下がった。一部のカーペットの関税率は79%から65%に下がり、今年は関税だけで企業にとって260万元の節約となった。将来、関税はさらに段階的にゼロまで下がる。 

中国現代国際関係研究院グローバル化研究センターの劉軍紅主任は、原産地累積規則をはじめとするRCEPの一連の措置は地域内の生産コストを大きく下げ、貿易の効率を高め、地域内の産業チェーンサプライチェーンの協力を強化していると話す。 


約束を重んじ貢献する中国 

「RCEPは、世界で人口が最も多く、経済貿易の規模が最大の自由貿易協定だけでなく、包括的現代的で、質が高く互恵的な自由貿易協定である」と前出の高凌雲主任は考えている。RCEPの発効は加盟国共同の努力の結果であり、先進性と包摂性を反映している。 

中国は一貫してRCEPの重要な参加者であり、積極的な推進者であった。この1年、中国はRCEP協定の質の高い実施に力を注ぎ、各制度の着実な施行を推進してきた。このため中国の商務部など6機関は、共同で「RCEP協定の質の高い実施に関する指導意見」を発表し、協定中のサービス貿易の開放約束と投資のネガティブリストの約束をしっかりと実行し、企業がより政策の恩恵を利用できるよう推し進めている。昨年7~8月、RCEP産業協力委員会と中国の10以上の全国的なビジネス団体は、それぞれ「戦略的協力覚書」に調印し、中国とRCEPのその他の加盟国の関連業界における新たな発展を共同で推し進めることを取り決めた。 

「過去1年、中国は信用を重んじ約束を実行し、RCEPに多くの貢献をした」と高凌雲主任は指摘する。その一つ目は、RCEPが発効した初日に中国は関税減免条項の全面的な履行を始めたこと。二つ目は、多国間協力プラットフォームを利用し、他の加盟国が協定の中の優遇政策と円滑化のルールを熟知し、中国市場による発展の機会を共有することに協力したこと。三つ目は、加盟国の中で発展段階が比較的遅れた国に対し、発展能力の向上を助け、より多くの技術と資金を支援したこと。四つ目は、制度的な開放の推進を通してRCEPの質の向上とアップグレードを絶えず推進したこと、だという。 

広州白雲国際空港には、新鮮なフルーツを積んだ貨物機が次々に着陸――。同空港の税関が昨年、監督管理したドリアンやネクタリン、チェリー、マンゴスチンなどRCEP加盟国からのフルーツの輸入額は、4億4000万元を超え、前年比で122倍増加した。 

商務部によると、昨年1~11月の中国とRCEP加盟国との貿易総額は11兆8000億元で、前年同期比で79%増え、中国の貿易額全体の307%を占めた。 

RCEPは、アジア太平洋地域で合意された最も範囲が広く、最も加盟国が多い多国間電子商取引(EC)規則をカバーしており、また現在中国が参加する最高水準のEC協定でもある。広州恵購サプライチェーン社通関業務部の曽懿部長は、「RCEP実施による通関税収など一連の円滑化の措置は、越境ECの輸出効率を大幅に引き上げ、企業のコストもさらに下がった。昨年来、わが社の越境EC輸出量は月平均3000を超え、これは以前には想像もできなかった」と話す。越境ECのデータによると、昨年の「ダブル11」(1111日)のネットショッピング祭りでは、中国の大手ECプラットフォーム天猫(Tモール)国際におけるRCEP加盟国の売上額は明らかな増加傾向を見せ、中でも豪韓からの輸入商品が上位を占めた。 

商務部はこのほど、以下のように発表した。中国はRCEPの枠組みの下、今後さらに多くの貿易パートナーと自由貿易協定を締結し、世界に向けてハイスタンダードな自由貿易区ネットワークを拡大していく。また、物品貿易とサービス貿易、投資市場の開放レベルをさらに高める。さらにデジタル経済や環境保護などの新たなルール議題の交渉に積極的に参加し、規則規制管理基準などの制度型開放を安定的に拡大し、新たな発展の枠組みの構築により貢献し、質の高い発展を推進する。 

これに対し国連貿易開発会議(UNCTAD)のグリンスパン事務局長は以下のように表明した。全世界では開放レベルが絶えず下がり、貿易コストは絶えず上昇し、サプライチェーンにボトルネック状態が現われている中、RCEPは世界経済の発展に貢献している。世界の開放協力を促進し多国間貿易システムを守る面で、中国はますます重要な役割を果たしている。 


RCEPの恩恵を全世界へ 

1月2日、インドネシアに対するRCEP協定が発効し、RCEPの大家族にまたメンバーが加わった。 

RCEP協定に基づき、中国とインドネシアは相互にRCEP協定の税率を実施する。このため、インドネシアは中国–ASEAN(東南アジア諸国連合)自由貿易協定の上に、新たに中国産の一部の自動車部品オートバイテレビアパレルや靴プラスチック製品など700以上の関税コード商品にゼロ関税の扱いを与える。このうち、一部の自動車部品やオートバイ、一部のアパレル類製品は、1月2日当日からゼロ関税が実施された。その他の製品は、過渡期内において順次ゼロ関税に下げられる。中国も中国–ASEAN自由貿易協定の上に、インドネシア産のパイナップルジュースや缶詰、ココナッツジュース、コショウ、軽油、紙製品、一部の化学工業製品、自動車部品などの関税を引き下げ、一段と市場を開放する。 

現在、インドネシアは中国にとってASEANにおける第3の貿易相手国で、中国はインドネシア最大の輸出市場であり第1の輸入元でもある。RCEP協定の後押しにより、中国–インドネシアの経済貿易関係は間違いなくさらに緊密化するだろう。また中国–インドネシアの経済貿易協力の喜ばしい傾向は、RCEP加盟国間にも互恵ウインウインの未来図を映し出している。 

デニー在上海インドネシア総領事が言うように、RCEPは単に関税を減免するだけでなく、貿易サービス基準投資電子商取引人の移動衛生植物検疫措置技術協力の面で確実性と開放性を高めている。RCEPはステークホルダー、特に企業に対し、より大きなモチベーションと決意をもたらすだろう。 

シンガポールの国立大学リークアンユー公共政策学院の顧清揚副教授は、世界経済の数々の困難を背景に、RCEPは新興市場に力強い成長エネルギーを注入していると言う。アジア開発銀行の最新レポートは、東南アジア地域の昨年の経済成長見通しを51%から55%に上方修正した。これは、RCEPのASEAN諸国の経済に対するけん引予想をある程度反映している。 

高凌雲主任によると、RCEPの前向きな役割は多くの面に現れているという。第一に、RCEPは自由貿易と多国間主義、地域経済の一体化に自信を注入した。第二に、RCEPは実質的なメリットを生み出し、地域経済と世界経済に安定性と確実性をもたらし、一国主義と保護貿易主義が世界経済に与えるショックを軽減した。第三に、RCEPは発展段階の異なる国をカバーし、加盟国は大きな発展の可能性を持っており、長所で互いを補完し合うことができる。第四に、RCEPは原産地累積規則など多くの革新的な制度を模索しており、発展段階の異なる国の協力、世界的な経済貿易協力の展開に新たな手本を提供することができる。第五に、一連の紛争に関するRCEPの解決策は、グローバルガバナンスシステムにとって重要な参考となり得る。 

まさに発効1年目に見せた、自由貿易協定の空白を埋め、地域貿易を促進し、地域のサプライチェーンを強化するというRCEPの重要性に基づき、オーストラリア国立大学東アジア経済研究所のピータードライスデール所長は、RCEPはアジアの貿易のメリットを全世界にもたらすだろうと楽観的な見方を示した。 

 

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