「一帯一路」イニシアチブ10周年〜国際シンポジウムで語られたその歩みと成果〜
李家祺=文
10月13日、「一帯一路」イニシアチブ10周年国際シンポジウムが東京で開催された。中華人民共和国駐日本大使館、中央広播電視総台アジア太平洋総局、中国外文局アジア太平洋広報センター、一帯一路日本研究センターの共催で行われたこの催しでは、中国、日本、カンボジア、ラオス、タイなどアジア太平洋諸国の政府関係者、駐日本大使、各界の専門家や学者など百人近くの出席者が「一帯一路」イニシアチブの10年間にわたる歩みと成果を共に振り返り、今後の発展を展望し、質の高い「一帯一路」共同建設の推進に一致して努力するための優れた見解を提起した。
全方位の相互連結の促進
この10年間、「一帯一路」共同建設は各方面の共同努力で、中国の呼び掛けから国際的実践へと進み、理念が行動となり、ビジョンが現実へと変わり、今日の世界で範囲が最も広く、規模が最も大きな国際的協力のプラットフォームとなった。中国は今年9月末までに世界の150以上の国、30以上の国際機関と200以上に及ぶ「一帯一路」共同建設協力文書に署名し、3000件余りの協力プロジェクトを推し進め、1兆㌦近い投資をけん引した。
呉江浩駐日本中国大使は開幕セレモニーの席上、ここ10年間で「一帯一路」共同建設は共同建設国に確かな利益をもたらし、地域と世界の平和的発展を推し進める上でプラスのエネルギーを注ぎ込んできたと述べた。さらに呉大使は、最初の10年は序章にすぎないとし、責任ある発展途上の大国である中国は引き続き「一帯一路」共同建設を対外開放と対外協力の中心的計画、中国と世界が開放・ウインウインを実現する道のグランドデザインとし、「一帯一路」共同建設協力がより広範囲で、より多分野にわたり、より深化した質の高い発展を実現するよう後押ししていくと述べた。
また、呉大使は、中日は隣国同士かつ互いに協力パートナーで、緊密な経済関係にあり、地域と世界の発展に対して重要な影響力を持っていると指摘した。さらに呉大使は、日本はこれまでに2回、ハイレベル代表を中国に派遣し、「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに参加していること、双方が中日第三国市場協力について覚書に調印し、第1回協力フォーラムを開催し、50件余りの協力合意に達していることに言及し、日本企業は国際定期貨物列車「中欧班列」や河川・海洋国際複合一貫輸送を積極的に利用してビジネスチャンスを広げ、両国の企業と金融機関は第三国市場における協力案件でも協力を進め、有益な経験を積んできたと述べた。加えて、より多くの日本企業が積極的かつ実務的な姿勢で「一帯一路」イニシアチブを巡っていっそう踏み込んだ協力を行うことに歓迎の意を示し、中日両国が共に地域各国の期待に応え、「一帯一路」共同建設など地域協力の枠組みをプラットフォームとし、地域と世界の発展促進により大きく貢献することに期待していると述べた。
日本の福田康夫元首相は、「一帯一路」イニシアチブ提唱から10年間の成果は数多くの分野や観点で実証されており、これは習近平国家主席が提起した人類運命共同体理念の具体的実践であると語った。また、福田元首相は、現在全世界は複雑で激しい変化に見舞われ、気候変動など多くの切迫した問題に直面しているとし、人類運命共同体理念はこれらの問題の解決策を模索する上での思想的源泉をもたらしていると強調した。
二階俊博日中友好議員連盟会長はシンポジウムに寄せたビデオメッセージで、「一帯一路」イニシアチブはインフラなどのハード面とルールや基準といったソフト面の相互連結の促進や世界各国の民心疎通の推進上、非常に重要な意義を持っていると指摘した。また、二階会長は、日本はかつて古代シルクロードを通じて中国と世界の文化を学び、近代以降は中国も日本を通じて世界の先進的な技術を取り入れ、両国は互いに学び合いながら今日まで共に発展してきたと述べた。さらに二階会長は、今年は中日平和友好条約締結45周年に当たり、双方がこの条約の精神をしっかりと胸に刻み、自由で開放的な世界の構築を後押しする上で貢献を果たすことへの願いを示した。
杜占元中国外文局局長はビデオメッセージの中で、いにしえの時代より、ユーラシア大陸を貫くシルクロードと太平洋やインド洋などの沿海諸国を結ぶ海のシルクロードは東西の貿易往来、文化交流の重要なルートであり、輝かしい歴史の章をつづってきただけでなく、アジアの数多くの国々が共有する集合的記憶と歴史的財産をつくり上げてきたと述べた。また、杜局長は、日本の奈良の東大寺正倉院には隋・唐代の中国、中東、中央アジアなどから伝来した多くの宝物が今なお収蔵されており、「一帯一路」を通じた各国の友好交流の証しとなっているとした。さらに、日本の竹下登元首相がかつて、「今なお私ども日本人はシルクロード、敦煌、そして長安という言葉を聞くにつけ心の高まりを覚えます」と語ったことに触れ、それと同様に、古代シルクロードは東南アジア、南アジア、中央アジア、西アジアなど、いずれの地域にも貴重な歴史的痕跡を残していると指摘した。
さらに杜局長は、実践が証明しているように、「一帯一路」イニシアチブは共同建設国とその国民に発展と実益をもたらし、異なる文明間の交流と学び合い、民心の疎通を力強く後押ししていると語った。加えて、中国と日本を含む各国のメディアやシンクタンク、文化機構は「一帯一路」の歴史、現実と未来を正しく認識・理解し、真実かつ全面的・客観的な視点から平和的発展、協力・ウインウイン、文明の学び合いにまつわる「一帯一路」の物語をしっかりと伝え、対話を通じて信頼醸成と疑念の払拭を進め、交流によって民心の疎通を促し、「一帯一路」の人的・文化的基盤をより突き固める必要があると強調した。
李毅中国中央広播電視総台アジア太平洋局長は、「一帯一路」共同建設には各国メディアの積極的な参加が欠かせず、このたび開かれた「一帯一路」イニシアチブ10周年国際シンポジウムが中国と日本を含むアジア太平洋諸国の文化面でのコミュニケーションと学び合いを促進し、ハイレベルな交流のプラットフォームを打ち立てることを願っていると述べた。
佐藤康博日本経済団体連合会副会長は、中日の企業間にはすでに多くの「一帯一路」イニシアチブの枠組み内での第三国市場協力の事例が存在し、今後双方の企業はそれぞれの強みを十分に発揮し、国際ルールにのっとったインフラ建設プロジェクトの実施に力を注ぎ、各国・各地域の問題解決や持続可能な発展および経済成長を成し遂げるために力をささげるべきだと指摘した。
共同発展と繁栄の道を
「一帯一路」イニシアチブによって、アジア太平洋諸国には新たな発展の構想がもたらされ、アジア太平洋運命共同体構築の機運が高まった。シンポジウムでは、ラオスやカンボジア、パキスタン、タイなどアジア太平洋地域の国々の在日本公館長や専門家・学者がこの10年間、それぞれの国が中国と「一帯一路」イニシアチブの枠組みの下で進めてきた多分野にわたる協力と成果について語った。
アンラワン駐日本ラオス大使は次のように述べた。「一帯一路」イニシアチブによって数多くの事業がラオスで実施され、病院や経済特区、高速道路、高速鉄道など、目に見える実際の経済的成果が上がった。2021年、中国・ラオス鉄道が開通し、ラオスと周辺各国との貿易や人的交流などが活発になった。次の10年も、「一帯一路」は引き続き共同建設国の社会と産業の現代化に寄与するだろう。
トゥイ・リー駐日本カンボジア大使は、カンボジアと中国が「一帯一路」イニシアチブの枠組みの下、インフラ整備や経済、投資、金融、人的・文化的交流などの分野で行ったさまざまな協力は、カンボジアの持続可能な経済成長と社会発展を後押しする上で重要な役割を果たしていると語った。
「『一帯一路』イニシアチブや中国・パキスタン経済回廊に対する疑念の声をよく耳にするが、よく考えてみていただきたい。十数億人に恩恵をもたらす事業がどうして害を及ぼすなどということがあるだろうか」と話すのは、ラザー・バシール・ターラル駐日本パキスタン大使だ。同大使は、中国・パキスタン経済回廊は経済協力事業で、両国の相互連結性の向上と広く恩恵をもたらす富の創出を目的とするものであり、安全保障の視点から歪曲を加えるのは間違っていると指摘した。
タイ・中国「一帯一路」研究センターのウィルン・ピチャイウォンパクディー主任は次のように述べた。中国・ラオス・タイの鉄道の相互連結がもたらした経済・貿易の発展、生活の利便性向上、人々の幸福感と獲得感の高まりは東南アジア諸国連盟(ASEAN)諸国にとって目に見えて実感できる中国式現代化だ。「一帯一路」共同建設によって、資金や技術の自由な移動が促進され、発展途上国は貧困から脱却し、本格的にグロバールガバナンスシステムの構築に参加できるようになった。
今回のシンポジウムでは「シンクタンク視点」と「アジア太平洋対話」「メディアフォーラム」の三つの分科会も開催された。この10年間、「一帯一路」共同建設は関係各国に確かな利益をもたらしただけでなく、経済のグローバル化の健全な発展の推進と世界における発展上の課題解決、グローバルガバナンスシステムの整備で積極的な貢献を果たし、全人類による現代化の共同実現に向けた新たな道を切り開いたことがパネリストたちによって示された。
また、このたびのシンポジウムでは、「一帯一路」アジア太平洋メディアシンクタンク連盟協力覚書の調印式が行われた。同連盟は中国外文局アジア太平洋広報センター、中央広播電視総台アジア太平洋総局、一帯一路日本研究センター、タイ・中国「一帯一路」研究センターの共同提唱によるもので、メディアリソースに関する協力、文化交流、シンクタンク構築などの分野でそれぞれの強みを有機的に融合させ、アジア太平洋地域における「一帯一路」建設をいっそう推し進め、同地域の戦略的な協力と発展を後押しすることを目指している。
近年、一部の国は「一帯一路」イニシアチブに「債務のわな」「債務外交」というレッテルを貼り、それを口実に非難してきた。これに対し、呉江浩駐日本中国大使は次のように指摘した。例えばスリランカの場合、中国の貸し出した融資がスリランカの対外債務全体に占める割合はわずか10%ほどにすぎず、金利も中国を非難する一部の国より大幅に低い。最近も中国輸出入銀行が公的債権者として、スリランカ側と債務処理について初歩的合意に達し、実際の行動でスリランカの困難克服を支援している。実は、スリランカのみならず、「一帯一路」に参加したことが原因で、債務危機に陥った国は一つもない。
一帯一路日本研究センターの進藤榮一代表は次のように語った。いわゆる「債務のわな」はもともと、米国のある小さな研究機関のレポートが提起した言葉で、具体性と信頼性に欠ける論証だった。その後、米国をはじめとする一部の国は「一帯一路」イニシアチブに対抗する戦略的な必要上、このレッテルが大衆の視野に入るように働きかけた。今回創立された「一帯一路」アジア太平洋メディアシンクタンク連盟は、まさしく「一帯一路」イニシアチブを巡る真実や歪曲を検証することで、人々の同イニシアチブへの認識を深めることを目的の一つとしている。
「一帯一路」共同建設にひと言
今回のシンポジウムはシンクタンク視点、アジア太平洋対話、メディアフォーラムという三つの分科会を設け、中日およびアジア太平洋地域の各界の専門家・学者、メディア関係者は、「『一帯一路」の国際貢献、未来の展望、第三国市場における中日協力」「インフラの相互接続、融資上の課題、人的交流の促進」「私が見る『一帯一路』」といったテーマを巡って意見交換を行った。以下、パネリストによる発言を一部抜粋して紹介する。
今井尚哉
内閣官房参与、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
ユーラシア大陸がヒトとモノのより速い移動を促すより良い相互連結を必要としている中、「一帯一路」イニシアチブは時宜を得てこの目標を達成できる。日本と中国はすでに「一帯一路」の枠組みの下での第三国市場協力について合意した。隣国同士として、友好的な付き合いと手を携えた発展はわれわれが共に求めるべきものだ。
斉藤晃 伊藤忠商事執行役員、東アジア総代表
グリーンエネルギーや金融・ハイテクなどの分野で、中国には数多くのイノベーション型企業がある。「一帯一路」イニシアチブの推進に伴い、これらの企業は次々と海外進出し、現地の発展に貢献している。伊藤忠は「一帯一路」を通じて、第三国市場でより多くの中国企業と協力することを望んでいる。
ウィルン・ピチャイウォンパクディー
タイ・中国「一帯一路」研究センター主任
タイ政府が打ち出したバイオ経済、循環型経済、グリーン経済の発展モデルは「一帯一路」イニシアチブの趣旨と極めて一致している。中国の自動車メーカーである長城汽車や比亜迪はタイ市場に進出し、新エネルギー車の技術によってタイの大気汚染問題の解決を後押ししており、これはまさに協力・ウインウインを示すものだ。
ボーアダム・センカムコートラヴォン
ラオス国立大学アジア研究センター主任
「一帯一路」イニシアチブの枠組みの下で建設された中国・ラオス鉄道は、ラオスの旅客輸送・物流・観光業の発展を確実に促した。その上、中国・ラオス・タイ鉄道は相互連結を実現し、ASEANを結ぶゴールデンルートとなっている。
郭洋春
立教大学前総長
「一帯一路」イニシアチブについて、日本では中国だけが利益を得ているという報道が少なくないが、私の考えでは、全ての共同建設国・地域および現地の人々に確実な利益をもたらすことこそが、「一帯一路」イニシアチブの趣旨だ。ここ10年、同イニシアチブはずっとこの趣旨を徹底してきた。
井川紀道
元世界銀行グループMIGA長官
「一帯一路」イニシアチブが提唱されてからここ10年、中国の政府関係者と研究者は深い印象を残してくれた。「一帯一路」について彼らと意見を交わすとき、耳当たりのいい話ばかりではなく、改善すべき課題を率直に指摘してほしいと常々言ってくれた。
木村知義
元NHKアナウンサー
中国は時々刻々と変化している。「昨日」の中国を見ながら「今日」の中国について述べてはいけないが、一部のメディアはあろうことか「おととい」の中国を見ながら「明日」の中国を語っており、そのことで多くの間違いや誤解が生じた。
富坂聰
拓殖大学海外事情研究所教授
商業主義や視聴率、売上を重視する日本のメディアは、往々にして視聴者や読者を引き付けやすいネガティブなキーワードを取り上げる傾向にある。しかし、実際のところ人々は「一帯一路」の基本状況や各種データについて何も知らない。例えば、カタールワールドカップが日本で注目されていたが、そのスタジアムが中国企業が建設したものだと知っている人はごくわずかだ。
廖麗
中国中央広播電視総台アジア太平洋総局副局長
ここ10年、「一帯一路」イニシアチブにより、共同建設国のインフラと人々の生活に非常に大きな変化が生じた。同時に、「一帯一路」共同建設を通じて、「中国の知恵」と「中国の案」が現地の実情と結び付き、絶えず充実化・改善され、中国の技術のイノベーションを促進し、今後の中国の発展に多くの貴重な経験をもたらした。
于文
中国外文局アジア太平洋広報センター副主任
インターネット時代に飛び交う大量の情報は真偽の見極めが難しく、人々に不安を感じさせている。また、言語の壁も、これらの情報を正しく理解するのをいっそう難しくしている。よって、メディアは一般の人々が理解しやすい言葉で、ありのままで生き生きとし、発展とウインウインの「一帯一路」について報じるよう努めるべきだ。