「一帯一路」質の高い発展へ 「8項目の行動」が鍵 歴史上の真価問われる

2023-10-19 14:27:00

文=名古屋外国語大学名誉教授・東海日中関係学会会長 川村範行

 

習近平国家主席が第3回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで行った基調演説で、注目すべきは、将来に向けて質の高い「一帯一路」共同建設のための「8項目の行動」を宣言した点である。「一帯一路」は過去10年の規模拡大から質の向上へと軌道修正される。 

 

8項目の行動」の中で特筆すべきは、中国と欧州を結ぶ国際直通貨物列車「中欧班列」の高水準の発展の加速、カスピ海を超える国際運輸回廊に参与することなどを第一に挙げた点である。「一帯一路」推進のため「中欧班列」を主軸に、「海」「空」を含めた立体的な輸送の強化に重点を置く方針が表われている。 

 

過去10年間で「中欧班列」は累計7万7000便運行し、欧州25ヶ国217都市と通じてユーラシア大陸の相互接続水準を顕著に高めた。筆者は今年8月下旬、「東海日中関係学会訪中団」団長として河南省鄭州市の「鄭州中欧班列集結調度中心」を視察した。2022年末迄の累計7020便、物流コスト節約は航空便の50%、時間節約は船便の50%以上という実績を知り得た。日本の大手流通企業である日本通運、日新の2社が「鄭州欧州班列」を活用しており、日中関係への寄与も期待できる。 

 

8つの行動」では、3500億人民元の融資窓口の設立や、シルクロード基金への800億元増資のほか、小口融資支援プロジェクト1000件、中国による職業教育訓練などを挙げている。過去10年に被融資国の一部が「債務の罠」に陥ったことや、現地の雇用拡大に繋がらないケースもあったことなどが外国メディアなどから指摘されたが、こうした課題を克服する方策を示したと言える。「8つの行動」の達成が、質の高い「一帯一路」共同建設の鍵を握る。 

 

中国は過去10年間で150カ国、30国際機関との間で「一帯一路」協力協定を結び、ユーラシアから東南アジア、中近東、アフリカ、中南米に至るまで広域経済協力の枠組みを強化した。世界で最も広範囲で最大規模の国際協力プラットホームを造り上げたと言える。 

 

世界が新たな動乱変革期に入り、人類が未曽有の課題に直面しているとき、「一帯一路」共同建設は中国外交の展開と密接に関連し、重要な役割を担う。習主席は基調演説で「イデオロギー的対立やブロック政治的対立もせず、デカップリングやサプライチェーンの分断にも反対する」と明言している。これからの10年で「一帯一路」が世界の平和・繁栄に貢献する“21世紀最大のプロジェクト”として歴史に刻まれるか、その真価が問われる。

 

人民中国インターネット版 

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